人類の歴史は異説が切り開いてきたようなものだよ。
映画『ドラえもん のび太の月面探査記』 ドラえもんの「ことば」
先週は、地球と火星の接近をテーマに書きました。10月6日(火)、夜空を見上げて月を眺めたり、火星を探してみたりした人もいると思います。とてもキレイでしたね。
ちょうど宇宙や月に注目していたこともあって、以前録画していた映画『ドラえもん のび太の月面探査記』(2019)を、週末に息子と一緒に観ました。のび太が信じる”月のウサギ”をもとに創り上げた「ウサギ王国」。月の裏側に創造したその王国を舞台に繰り広げられる話で、今回は直木賞作家の辻村深月さんが脚本を担当した作品です。
月面探査機が捕らえた白い影が大ニュースに。のび太はそれを「月のウサギだ!」と主張するが、みんなから笑われてしまう...。そこでドラえもんの秘密道具<異説クラブメンバーズバッジ>を使って月の裏側にウサギ王国を作ることに。
そんなある日、不思議な少年・ルカが転校してきて、のび太たちと一緒にウサギ王国に行くことに。そこでのび太は偶然エスパルという不思議な力を持った子供と出会う。
すっかり仲良くなったドラえもんたちとエスパルの前に謎の宇宙船が現れる。エスパルはみんな捕らえられ、ドラえもんたちを助けるためにルカも捕まってしまう!
はたしてのび太たちはルカを助けることができるのか!?
(映画『ドラえもん のび太の月面探査記』公式サイトhttps://doraeiga.com/2019/ より引用)
さて、そんな映画の中で、ドラえもんが発した一言を紹介します。
人類の歴史は異説が切り開いてきたようなものだよ。(ドラえもん)
そもそも、今回の作品に登場する秘密道具<異説クラブメンバーズバッジ>とは、それをつけると世の中の常識である「定説」ではなく、異なる考え「異説」を信じるメンバーになり、その世界へ実際に行けるというものです。バッジを使って、のび太とドラえもんは『月の裏側には空気があり、生き物がいる!』という異説の世界を訪れることになります。
「常識」とか「当たり前」にとらわれがちな私たち(※特に大人)ですが、いつもいつも「常識」にとらわれていては新しいモノが生まれません。今回の映画でも、最初はのび太が教室で「月のウサギだ!」と叫んだ時、教室中のクラスメイトが大爆笑をしてバカにしていました…まさに、常識ではあり得ない「異説」ですよね。それでも、ドラえもんの秘密道具の力を借りて、のび太は自分の考える「異説」を信じて、本物として創造していくわけです。
【昨日までなかったものを生み出す】、なんていうと難しい話に聞こえるかも知れませんが、【行ったことのなかった道を歩く】とか【聴いたことのなかった曲を聴く】とか【食べたことがなかったものの味を知る】とか…実は案外、私たちは日々自分の歴史を書き換えているのだと思います。それはまさに、自分の中の「定説」という経験済みの体験談で生きてきたのを、新たな「異説」という価値観や世界観を知りながら視野を広げることだと言えます。
想像力は未来だ!
ところで、のび太の強みはなんでしょう?
そう、のび太の強みは豊かな「想像力」です。周りの人がバカにして信じないような考えを、のび太は純粋な想いを向けて信じて止まないのです。今回の映画に限らずドラえもんの作品では、のび太の想像力がもとになってドラえもんの助けを受けながら、想像の世界を作り上げていくという形になることが多いですよね。
想像力は未来だ!人への思いやりだ!
想像することを諦めた時に、破壊が生まれるんだ!(ドラえもん)
ドラえもんが必死で叫んだこのセリフの中で、「想像力は未来だ!人への思いやりだ!」という部分が、心にすごく引っかかりました。想像力は、自分自身の頭を柔軟に保って、考え方とか生き方をより良いものにしていくために、大らかな気持ちで周りから吸収したり成長したりできる源になりますよね。でも、それ以上に、「未来へつながる、人への思いやりなんだ!」という考え方に、ものすごくジーンと来てしまいました。のび太が持つ優しい想像力、それは確かに未来へつながるものだなぁと。
9月30日(水) 学年集会にて
私から皆さんにお話しした内容は、今回紹介したドラえもんの「ことば」につながってきます。不在だった人のためにも、学年主任としてこんな話をしましたよ、という備忘録です。
(1)この学校には色々な人がいます。中学時代までと比べて、遥かに多くのタイプの人がいて、出身も性格も考え方も行動も…今まで出会ったことのないような人も多くいると思います。もしかすると、その初めての出会いに「うわぁ…」とか「変な人ー!」と抵抗を感じてしまう人もいるかも知れませんが、是非ここで色々なタイプの人と出会って関わる経験を通して、【皆さんの視野を広げて欲しい】と願っています。
→ まさにこれは、最初の話ですよね。自分の歴史上、出会ったことのないタイプの人は「異説」で、知っている人は「定説」。皆さんのこれからの歴史も、ここで出会う多くの「異説」によって切り開かれていくはずですから。どうぞ、人との違いや出会いを楽しみながら、前向きに関わって視野を広げていきましょう。
(2)自分以外の人の気持ちを察して、考えるようにしましょう。例えば何かの話をされた時、ただ単に言葉通り受け止めるのではなくて、「この人は何を伝えたいから、こう言っているんだろう?」とか「それってつまり、どういうことだろう?」と、相手の「ことば」の奥にある気持ちを察する=つまり、【想像する】ということです。
→ 「想像力は未来だ!人への思いやりだ!」のセリフに、そのままつながりますね。相手の気持ち、自分以外の人の気持ちを想像することによって、より良い未来が創られていくという前向きなものです。自分の幸せも大事ですが、自分以外の人の幸せを考えられる人は、ステキな人だと思います。まさにのび太はいつの作品でも豊かな想像力をもって、動物や恐竜や異星人など、出会った【友達】や【仲間】の気持ちを考えてくれていますよね。
子ども向けのアニメ・漫画でありながらも、いつまでも人々を魅了していく作品『ドラえもん』。子どもも心を打たれ、大人も涙する。そんな万人に向けられた作品から大切な「ことば」を受け止めて、私たちは優しい世の中を作っていければ良いのだと思います。
ちなみに、2020年3月に公開予定だった新作映画「ドラえもん のび太の新恐竜」は、新型コロナウイルスの影響により延期されましたが、8月から上映されています。いつも以上に「観たい!」という強い気持ちと、「まだ自粛すべき?」という気持ちとの間で揺らいでいる我が家では、まだ観に行く決断ができずにいます。特に、主題歌がMr.Childrenの「Birthday」「君と重ねたモノローグ」の2曲だということもあって、CMを観る度に「観に行きたい!」とそそられていますが…もうちょっと様子を見てみようと思っています。Mr.Childrenの桜井和寿さんも、ドラえもんの影響をだいぶ受けて育って来られたと話しています。うーん、やっぱり観たい。