自分ならできる気がする!そんな自己効力感が道を切り開く
自己効力感とは
自己効力感(セルフエフィカシー)とは、目標を達成するための能力を自分が持っていると認識すること。「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える状態のことを言います。行動心理学の権威・バンデューラによって提唱されました。
自己効力感を高める4つのポイント
自己効力感を高めるには、4つのポイントがあります。まず、1つめは「成功体験」です。小さな成功体験を積み重ねることで、自信がつき、次のチャレンジに向けて自分ならできるという気持ちになれることは誰しも経験があると思います。
2つ目は、「お手本」を示すことによって、できるイメージを持つことです。先輩や上司がやってみせることで、それを観察してメンバーは自己効力感を形成します。人にはミラーニューロンという神経細胞があり、他人の言動を観察しているだけで自分が行動しているときと同じ脳の部位が刺激されることが知られています。この観察学習(モデリング)を提唱したのもバンデューラです。
3つ目は、「励まし」です。言語的説得によって、君ならできるとポジティブフィードバックを与えられることで、自己効力感は高まります。更に、当人にとって重要な人からの承認の場合、その効果はより高まります。有効な承認方法については<ポジティブフィードバック>にまとめています。
4つ目は、「雰囲気づくり」です。ポジティブな精神状態のときは自己効力感が高い傾向があり、逆にネガティブな精神状態のときは自己効力感が低くなる傾向があります。チームの雰囲気をポジティブに保つことで、関係の質を高め、自己効力感を高めましょう。
自己効力感と自己肯定感
「自分ならできる」という自己効力感、「自分には価値がある」という自己肯定感。似ているように感じますが、その違いを確認します。自己効力感は特定の領域に対する感覚で、自己効力感を得ている領域が、自分の人生観にとって重要度が高い場合、自己肯定感に繋がってきます。
例えば、料理はできないが、卵焼きは上手に作れる、という人がいたとして、卵焼きが上手なことがその人の人生にとって特に重要でなければ、自己肯定感は高まりません。
一方、例えば努力の継続の一環として筋トレをしている人が、その体格が目に見えて変わってきたとします。その成功体験が、自分は何事においても努力を継続することができるという自己効力感になり、そのことが人生において意味を持つ場合、自己肯定感に繋がっていきます。
仕事における自己効力感は、多くの人の人生において重要なことなので、自己肯定感に繋がりやすく、その意味で、仕事ができる!という自信は、自分が価値ある存在だと思えるようになることと直結してきます。
バカの山
ダニングクルーガー効果というものがあります。経験の浅い人は、正しい自己評価ができず、自分を過大評価してしまう傾向のことを言います。思い込みや先入観によって非合理的な判断をしてしまう認知バイアスのひとつで、誰もが陥る可能性があるものです。
ものごとを学習し始めた段階では、人は自分の力量を客観的に把握できず、過大評価をしがちです(バカの山)。その後、一定の学習が進むことにより、自分の実力はそれほどでもないということに気づきます(絶望の谷)。自分の実力を客観的に把握した上で、本当の学習が始まります(啓蒙の坂)。そして学習を継続することで、自信を身につけていくのです(継続の大地)。
成功も失敗も何事も経験で、それを積み上げていくことでしか成長はできません。そういう意味で、経験を積むための主体性を引き出すことはマネジメントの第一歩になります。「バカの山」、つまり経験が浅いときの勘違いは、ある種のボーナスタイムだと捉えることができます。自信過剰な状態であったとしても、積極的にチャレンジするモチベーションを持ち得ていることで、経験獲得のスタートダッシュを切ることができます。マネージャーとしては、自己効力感を高める支援をしつつ、大切なのは失敗しても致命傷にならないよう、しっかりフォローすることです。そうした環境でチャレンジを支援することで飛躍的に成長する機会を提供することができます。
発明王・エジソンが小学校を退学してしまう話は有名です。我が子を信じる母親は、エジソンの知的好奇心を応援し、家庭での学習によって成長を支援しました。子供のチャレンジを応援し、見守るような、そんな姿勢が自己効力感を高めるには必要です。例え失敗しても、大事に至らないようにフォローするからこそ、一見無謀なチャレンジにも向き合うことができる。そんな環境の中で、勘違いも含め「自分ならできる!」という思いを育み、自分は価値ある存在だと確信できるようになっていく。そうした育成支援をしていきたいですね。