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何を頑張ったら認められる組織なのか?


満足と不満

 ハーズバーグの二要因理論というものがあります。これは、職場における「満足」と「不満」の要因が異なるという理論で、メンバーのモチベーションを高める方法を考える際に役立ちます。

 不満の要因は、職場環境、管理方法、人間関係、給与といった外因的なもので、これらに問題があれば、当然社内に不満が溜まっていきます。しかし、これらの不満を解消することが満足に繋がるかというと、そうではありません。満足は、承認、達成感、責任感、成長実感などの内因的要素によって生まれます。これらが十分に満たされることで、メンバーの満足度は高まり、モチベーション高く仕事に取り組むことができるようになります。

 では、満足を高めるために承認や達成感、成長実感を得られるようにするにはどうしたらいいでしょうか?
 それは組織において「何を頑張ったら認められるのか?」を明確にすることです。人事評価のグレード等の基準だけでなく、日常の生活の中で、どういう価値観を大切にしており、何を頑張れば賞賛される組織なのか?をはっきりさせ、浸透させていくのです。
 そうしたカルチャー浸透が十分な組織では、メンバーは自分の努力が正しく評価される安心感を持つことができます。このプロセスは、マネージャーが個別にポジティブフィードバックを行うことと似ていますが、組織全体に広げることで属人的な影響を超えて、持続的な効果を発揮することができます。


ロールモデル

 「頑張って認められている」状態。これをメンバーが実感する機会として、社内のMVP表彰などの場があります。社員全員の面前で賞賛される人は、組織のロールモデルとなり、後輩や周囲のメンバーにとって目指すべき存在となっていきます。そうして会社の評価基準が日常に浸透し、実践されていくことで、組織のカルチャーを形成していきます。

 こうした観点を踏まえると、MVVやカルチャーの言語化とともに、採用・表彰・役職起用といった人事施策がとても重要な要素であることがわかります。組織の価値観に合致する人材を採用し、表彰を通じてその価値観を体現した人の行動を強調します。さらに、役職起用されることで、組織がどういう人物を求めているかが明確になり、マネジメントを通して組織の行動規範が浸透していきます。これらの取り組みを統合することで、組織の一貫性と持続可能な成長を実現する強いカルチャーを築くことが可能となります。

 マネージャーは、この仕組みを理解し、推進する中心的な存在としての役割が求められます。具体的には、組織の価値観に基づいた人材の評価や育成を行い、カルチャーを軸にしたチームビルディングが重要です。この取り組みを徹底することで、変化の激しい時代においても、独自のあり方で柔軟に対応できる強い組織を作り上げることができます。


カルチャーフィット

 ロールモデルについて深掘ります。会社でMVPに選ばれるのはどのような人物でしょうか?きっと、スキルが高く大きな成果を出した人が選ばれていると思います。そこで、もし、その人が大きな成果をあげている一方で、やり方が会社のカルチャーにフィットしていない場合、本当にMVPに相応しいと言えるでしょうか?
 例えば、会社が「クライアントファースト」というバリューを掲げている中で、大きな受注を得たものの、クライアントのビジネスは全然うまくいっていないという場合、いわゆる焼畑営業のようなやり方で成果をあげている人はMVPに推薦されるべきでしょうか?

 この問題は採用の場面で、さらに難しい判断となってきます。スキルが高くカルチャーフィットしている人材は迷わず採用されるべきですが、スキルが高くてもカルチャーにフィットしない人材を採用するでしょうか?カルチャーにはフィットしているがスキルが高くない人材と、選ばないといけなくなった場合、どちらを優先すべきでしょうか?

 スキルが高い一方でカルチャーにフィットしない人材は、外部から見ると優秀に映るかもしれませんが、組織内では価値観や行動基準にそぐわないことで否定的な影響を与える可能性があり、周囲のメンバーのモチベーションを下げたり、組織の一体感を損なうリスクがあるので注意が必要です。

 一方で、スキルが低くてもカルチャーフィットしている人材は、組織の価値観や行動基準を共有できるため、育成の余地があり、周囲のサポートを受けながら成長する可能性があります。スキルはトレーニングや経験で向上させることができますが、価値観や行動基準を変えるのは本人の意識が伴わない限り難しいため、スキルとカルチャーフィットの、どちらかを優先する必要がある場合はカルチャーフィットを重視することをお薦めします。


 カルチャー浸透は、組織において何を頑張ったら認められるか?の基準を明確にします。それは、まさにメンバーが満足を得るための基準になるものです。だからこそ、日常に浸透させ、ロールモデルを生み出し、組織の価値観の基準として一貫性を持つことが重要です。メンバーはみな、努力し、結果を出し、認められ、成長したいと考えています。そうした気持ちに応えるために、自分たちなりの独自のカルチャーを大事にして、浸透させていく必要があるのです。


後輩 竜野が思うこと
 マネージャーは、メンバー以上に「この組織では何を頑張れば褒められるのか」をしっかりと考える必要があると思います。組織の評価基準が曖昧だと、組織の意図を過度に推測したり、マネージャー自身の価値観を優先してしまうことにつながりかねません。それが上手く組織に合致すればいいですが、評価が得られなければ、チームのモチベーションが低下したり、メンバーからの信頼を損ねてしまうかもしれません。その結果、メンバーが自分の努力が報われないと感じ、個々の成長やチーム全体の成果にも悪影響を及ぼしかねないと思います。

 だからこそ、マネージャーは時間をかけてでも、組織が本当に求めていることを理解する必要があると強く感じます。採用や表彰、役職登用といった人事制度だけでなく、上司や先輩、できれば経営層との対話を通じて、組織が大切にしている価値観への理解を深めていきたいと思います。

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