いやあ毎日暑いですね。今日なんか気温39度だそうですよ。いえ、わたくし別にあやしいものでは。 本日は貴方様にとっておきの品物をお持ちしたんです。それがこちら、移植専用冷蔵庫でして。 貴方様、臓器提供の順番を待つのに痺れを切らされて長いんでしょう? ええもちろん承知しておりますよ、臓器の売買は違法です。 ただ、冷蔵庫の売買ならどうでしょうか。貴方は温度調節付きの保存箱を買うだけ。 たまたまその箱の中に貴方様がお探しの臓器が入っていたとしたら。誰がそれを糾弾
「これ、つまらないものだけど、君に」 火星名物と書かれた箱を、僕は差し出した。 「あら、火星屋のお饅頭」 「君に会いに来るって言うのに、その、緊張しちゃってさ。お土産のことを忘れてて、さっき通りかかった店で買ってきたんだ。やっぱ異星産よりも、親しみのある火星の味が口に合うんじゃないかと思って」 「別に手土産だなんて気にしてもらわなくてよかったのに。私はあなたという人と一緒にいられるだけでいいの。でも、せっかくだから一緒にいただきましょう」 彼女は饅頭の箱を開けた
王様は困り果てていた。 彼は中年だがすらりと背筋が伸び、良質な筋肉に覆われていて、肌の血色も良い。 これもひとえに一時の誘惑に負けて贅を尽くすことなく、食事制限や運動など青年期からたゆまぬ努力を重ねてきたため、ではない。 実のところ世界は完全に進歩しきっていて、美味しくて健康に良い食品は開発され尽くしているのだ。 昔のように血のにじむようなダイエットなどをせずとも、ストレスフリーに理想的な身体プロポーションを保つことなど現代では造作もない。 ただし金さえ