理想の学校づくりに、生徒会がどう関わるか
生徒会が本来目指すべきものは何か
各学校へこのように聞くと、「学校生活をよくすること」「学校を生徒にとってより良いものにすること」という風に答えられることが多い。
しかし、そう答える学校では、学校生活をよくするために「何をすべきか」ということを検討する機会や手段がないように思える。
スポット
そこで、今回は、千葉県立成田国際高等学校で生徒会長を務める大保海翔さんに話を聞いた。
大保さんは、日本中高生協議会の副代表や生徒会大会の実行委員など、数々の生徒会団体において活躍してきたことでよく知られている。
当記事では、学校の未来を考える大保さんの生徒会活動を深堀していく。
(ヘッダーの写真は活動を行う大保海翔さん。)
生徒全体で学校の未来を考える「生徒会企画」
学校の未来を考えるにあたって、校則は非常に重要な検討事項である。
そして昨今では、いわゆる「ブラック校則」が社会問題化している。
大保さんが生徒会長を務める成田国際高校もその例外ではなく、生徒からブラック校則ととらえられかねないルールが存在していた。
そこで、成田国際高等学校生徒会(以下、成国生徒会)が企画したのが「生徒会企画」である。
生徒会企画とは、総合探究の授業2時間を活用して行うもので、「成田国際高校をどうしていきたいか」について各クラスで検討するものである。
企画を始めて1年目は、「今の時代に合った学校とは」をテーマとして行った。
しかし、実際に企画を行ってみると運営上の課題が多く見つかった。
大規模な企画の経験が無かったことや準備時間の不足から、沢山の問題が残ったまま当日を迎えてしまったのだ。
その結果、1年目の生徒会企画は学校に対し文句を言うだけの場になってしまった。
「なぜ学校改革を進めるのか」
第2回生徒会企画を開催するにあたり、失敗の反省として、成国生徒会は11月から準備を始めることとした。(画像1参照)
そして、まず取り掛かったのは「生徒会企画のあるべき姿」の再定義であった。
第1回生徒会企画は開催しただけで終わってしまったが、第2回では開催した中身をどのように生かすかという視点から検討したのだ。
そうすると、一つ不明瞭な点が浮かび上がった。
それは、「なぜ学校改革を進めるのか」というものだ。
そこで、第2回生徒会企画の実施目的として、学校改革を進めるうえでの共通目標を作成する事とした。
また、企画準備自体も入念に行った。
「成国生徒宣言」の樹立 ~失敗から学ぶ~
企画準備では、まず、クラスにおける話し合いのファシリテーター用にマニュアルを作成し、黒板への記入例なども提示した。
また、第1回は5分間の校内放送で行った企画説明を、15分間のYouTube LIVEで丁寧に説明を行うなど、より良い意見が出るよう工夫を行った。
そうした入念な準備の結果、第2回生徒会企画ではたくさんの有益な意見が出されたのだ。(画像2参照)
そして、企画で出された意見は生徒会がまとめて「成国生徒宣言」という形にして、その年度の生徒総会において採択され、承認されることとなった。(画像3参照)
- Instagramの活用 -
ここまで、総合探究の授業を利用した学校改革に触れてきたが、改革の手段はそれだけではない。
大保さんは個人として、下記4つの方法でInstagramを活用して学校改革にあたった。
Instagram活用術 ①
1つ目は、「学校に関する情報の発信」である。
学校のホームページは見にくいという問題意識から、行事や特別日課の情報などの学校に関する情報についてInstagramを通じて発信した。
Instagram活用術 ②
2つ目は、「匿名質問箱の運営」である。
生徒の生の意見を聞きたいという目的で意見を集めるとともに、生徒から寄せられた400件以上の意見に対して真摯に返信した。
Instagram活用術 ③
3つ目は、「ストーリーズを活用したアンケートの実施」である。
生徒会は生徒全体の代表である以上、出来る限りたくさんの人の意見を聞いて生徒会としての方針を出すべきである、との考えからこのアンケートを始めた。集まった意見をもとに企画書等を提出し、実際の企画作りにつなげた。
Instagram活用術 ④
4つ目は、「校則関連の情報発信」である。
生徒が校則改正の現状を把握することができるようにしたいとの考えから、大保さん自身が校則に関して校長や生徒指導部長と対談した内容を発信した。
- Instagramを活用した結果 -
上記①~④を行った結果として、大保さんのInstagramアカウントはフォロワー1000人を突破、ストーリーは700ビューほどを獲得したという。
学校改革にもある程度影響を及ぼしたといえるのではないだろうか。
大保さんはなぜ生徒会活動に力を入れるのか
最後に、大保さんへ聞いてみた。
大保さんは、「学校を、民主主義を学ぶことができる場に変える」ことを目指して生徒会活動にあたっていたという。
また、将来は教員志望で、高等学校の生徒会顧問や中学校の数学教師になることを考えているようだ。
筆者は大保さんの今後に期待するとともに、生徒会ないしは日本の教育分野が益々発展することを願っている。
あとがき
【人物紹介】
大保 海翔(おおぼ かいと)
経歴(取材時現在)
・千葉県立成田国際高等学校第47代生徒会長
・第46回雄飛祭副実行委員長
・千葉県生徒会連盟 代表
経歴(過去)
・日本中高生協議会2,3代副代表
・成田国際高等学校第46代生徒会会計
・カタリバみんなのルールメイキング中高生メンバー2期生
・生徒会大会実行委員会実行委員
制作〈敬称略〉
取材対象:大保海翔
取材担当:阿部亮太(生徒会活動振興会 代表)
奥村アリー(生徒会活動振興会 副代表)
文責:田中芳宙(生徒会活動振興会 編集委員)
※ 当記事で使用されているすべての画像は、記事用として、大保さんよりご提供いただいたものです。