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副甲状腺の解剖生理学(カルシウム代謝・副甲状腺機能亢進症)

ご覧いただきありがとうございます。
おがちゃん先生です!
今回は「副甲状腺」の特徴や働きを解説していきます。


1.副甲状腺はどんな臓器?

副甲状腺は、甲状腺の裏にある小さな米粒のような形をした臓器です。
上皮小体」とも呼ばれる。
基本的には左右、上下に1つずつ(計4つ)ありますが、なかには4つ以上存在する場合もあります。

ちなみに、甲状腺は気管の前方でのどぼとけの下あたりにあります。


2.副甲状腺の働き

副甲状腺は、パラソルモン(PTH・パラトルモン・副甲状腺ホルモンともいう)というホルモンを分泌しています。
パラソルモンは、血液中のカルシウム濃度を上昇させる役割があり、カルシウム代謝において重要な役割を担っています。

※以下カルシウム=Caと示す。

・カルシウムの役割も覚えておこう!

ここでCaの役割を確認しておきます。
体内にある全Ca量のうち、約99%は骨(と歯)に含まれます。
残りの1%は血液中や筋肉、神経細胞などにあります。

骨はCaを蓄える「貯蔵庫」のようなイメージです。
例えば、血液中のCa量が少なくなってしまうと、破骨細胞の「骨吸収」が促進し、骨からカルシウムを持ってきます。


3.パラソルモンの作用

パラソルモンは、大きく3つの作用により、血液中のCa濃度を上昇させます。

①骨吸収の亢進

パラソルモンは、破骨細胞の働きを活性化し、骨吸収を亢進します。
これにより骨からCaが遊離して、血液中のCa濃度が上昇します。

②腎臓にてカルシウムの再吸収を促進

パラソルモンが腎臓に作用し、Caの再吸収を促進、尿として排泄する量を減らします。
これによりCaが保持され、血液中のCa濃度が上昇します。

※リン(P)と重炭酸イオン(HCO3-)の排泄は促進する。

③ビタミンDの活性化によるカルシウムの吸収を促進

パラソルモンは、腎臓にて活性型ビタミンDの産生を促進します。
活性型ビタミンDは、腸でのCaの吸収を促進し、血液中のCa濃度が上昇します。

ビタミンDは、日光浴により皮膚で産生されることも有名ですが、肝臓や腎臓で活性化することで作用を発揮します。


4.副甲状腺機能亢進症

副甲状腺機能亢進症とは?原因は?

副甲状腺機能亢進症とは、名前の通り、副甲状腺の機能が亢進し、パラソルモンの分泌が増加した状態です。
原因としては、腺腫・過形成・癌があげられます。

※副甲状腺腺腫は、パラソルモンを過剰に分泌する良性腫瘍。

・副甲状腺機能亢進症の症状

高Ca血症低P血症となり、様々な不調に繋がります。

  • 全身症状…脱水、倦怠感

  • 消化器系の症状…嘔吐・悪心、食欲不振、胃潰瘍

  • 尿路系の症状…夜間頻尿、尿路結石など

  • 神経・筋症状…筋力低下、情緒不安定、うつ状態など

この他に、重症例では骨病変による関節痛・骨自発痛・病的骨折などが起こることがある。

副甲状腺機能亢進症は、尿路結石や筋力低下、悪心などの症状によってわかることもありますが、多くは無症状で、検査によって発見されることも多いです。


5.練習問題

副甲状腺機能亢進症で正しいのはどれか。

1. 骨量は増加する。
2. 血中リン値は上昇する。
3. 血中カルシウム値は低下する。
4. 尿中カルシウム排泄量は増加する。

この問題の答えは…

4番です!!

・解説

パラソルモンの分泌が増えると、骨吸収が促進するので、骨量は減少します。(→1番は×)

リンの排泄は促進するので血中リン値は減少する。(→2番は×)

血中カルシウム値は上昇し、高カルシウム血症となる。(→3番は×)

骨からカルシウムが溶け出し、血中のカルシウム値も上昇するし、カルシウムが尿中に排泄される量も増える(→4番が◯)


6.おまけ

カルシウム代謝に関係するホルモンとして、甲状腺から分泌される「カルシトニン」があります。
しかし、ヒトの場合、どこまで作用を発揮しているのかはあまりわかっていませんので、最後にさらっと解説します。

・カルシトニンの特徴と作用

カルシトニンは、骨吸収を抑制することで、血液中のCa濃度を低下させます。
いわゆる「骨をあまり壊さないようにする」ので、骨粗鬆症の治療薬として使用されることがあります。

最後に

ここまでご覧いただきありがとうございました!!
YouTubeやスレッズでも解剖生理学を発信していますので、ぜひ良かったらご覧ください^^


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