合気道×発達障害④

 「コミュニケーション能力を高める」

 コミュニケーション、これは、特に合気道らしい要素だと思います。合気道の目的は、単純に相手を倒すということではなく、心身を鍛錬することで自然との調和や世界平和につなげていくことにあります。

 発達障害の方は、コミュニケーションが苦手であることが多いです。人と目を合わせることが苦手、空気を読むことが苦手、相手の気持ちを推し量ることが苦手、自分の興味のあることばかりしゃべってしまって会話のキャッチボールがうまくできない・・・など。合気道では、これらに一つずつ、実践しながらアプローチしていきます。

 まず相手と向き合ったときには、そっぽを向かずキチンと気持ちを向けることが大切です。目を見るのが苦手な方も多いと思いますが、どちらかというと顔を凝視するのではなく、全体を何となく見るといった感じになります。稽古という場の中なので、実践しやすいかと思います。次に、相手との接触部分を通して相手の力の向きや強さを感じ取ります。相手がどうしたいのか、どちらへ導いたら不快な思いをせず動いてくれるのか、互いに技を掛け合って練習することで、相手の気持ちを推し量る訓練になります。それから、自分勝手に動かず、相手と一緒に動いていくこと。合気道では、自分の理想の動きを実践するだけでは技はうまくかかりません。抵抗を感じ、力比べになったときは大体自分勝手な動きをしていることが多いです。相手の力の向きを感じ、そちらへ導きつつ、最終的には自分はしっかり保ったまま相手を崩しています。これは対人コミュニケーションに置き換えた時にはかなり(発達障害の傾向の強い方には特に)高度な技術になるかと思います。

 これらを体で覚えていくことで、日常のコミュニケーションはかなり楽になると思います。稽古の中でできたということが自信にもつながります。発達障害のある方は、これまでの人生の中で失敗経験を多く積み重ねていて自信を無くし、それによって2次的な障害が生じていることもあるため、自分を肯定できることが必要だと思います。

 ここまで、3つのポイントから合気道と発達障害の相性が良いと思う理由を書いてきました。発達障害は、脳の使い方、体の使い方、バランス、感覚、あと推測ではありますが、内臓機能や神経系などにも生きづらさの原因があるのではないかと思います。そのどれもが複雑に絡み合っているので、何が一番の原因なのか特定することは難しいです。けれど、どこか一つをほぐしてやることで、徐々に全体に良い効果が広がっていくことも考えられます。合気道で心と体を整えることが、その一つになり得るのではないかと思っています。

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