マクドナルドロマンス
ロフトで買い物を終えた20時45分。
家に食糧がないことを思い出す。
みつけたマックにふらふら入り、席につき、ポッケからスマホを取り出す。
サムライマックダブル肉厚ビーフ、ポテトL、アールグレイティーL氷なし
注文しようとし、あれ?と気づく。
【テーブルにスタッフがお届け】を選べない。
「んだよ、めんどくせえ」
一瞬、帰ろうかと思った。が、帰ったところで何もない。他に用意するのも、いまさら億劫だ。注文し、1階へ降りる。
ほどなくして出来たものを受け取り、席へ戻る。冷静に考えれば、なんてことはない。便利さに慣れ過ぎると、人として大切な何かを失う気がする。それはなんとなく、怖いことのような気がする。
連続したソファ伝いに届く振動。横にいる外国人の貧乏ゆすりが凄まじい。
視線をスマホに落とし、ふてぶてしい表情でハンバーガーを貪りながら、ゆさゆさゆさゆさビートを刻み続けている。BPM280といったところか。人間だったら心房細動を起こしている。ノイズをイヤホンでキャンセルすると、一層際立つバイブレーション。ねえ、お願い。やめてくんない?ジャンク食いすぎて脳がやられた?
そんなことを思いつつ、アールグレイを一口。ポテトをつまみ、ハンバーガーを頬張る。そしてまたアールグレイ。
ふう
美味しくない。
学生の頃、あんなに愛したハンバーガー。
いつの間にか、美味しいと感じなくなっていた。アールグレイが一番美味い。
なぜだろう?
肉がダメになった訳ではない。むしろ好物だ。週3〜4は焼肉に行く。けれど最近、定食屋でも居酒屋でも魚を選ぶことが増えてきた。それも事実だ。
ぜんぜん食が進まない。
深夜、意味もなく屯した大和田のマック。
部活の遠征前の朝マック。
喜んで食べてなかったか?
大人になって、味覚が変わったのか?
あの頃の高揚感は、もう感じられないのか?
手付かずになったハンバーガーをぼーっと眺めながら考え、ハッとする
「そういや夕方、麻婆豆腐 食ったんだった」
ご馳走さまです!