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【選評】第1回青春短歌甲子園

募集期間 2020年6月9日〜2020年7月15日
応募総数 68人193首

1位 一音乃遥

ぬばたまのスタインウェイを駆け抜ける指遣いして君に触れたり

スタインウェイは最上のグランドピアノ。
初句から結句まで一音の無駄もなく流れる、今大会の圧倒的な一首。
古語とカタカナ語を交えてなお、定型の美しさを認識させてくれたことは、青春短歌そのものの方向性に大きな指針を示してくれました。

2位 杏藤ミレイ

一日に数行送る吹き出しで繋いだ恋が昨日終わった

固有名詞を出さずにどのような状況なのかわかる。シンプルに見える歌ほど作者の技量は優れています。
誰にでもわかりやすい歌は「わたしにも作れるかも」と、参加のハードルを下げることにも貢献してくれます。現代の恋愛文化を切り取りつつも、インスタグラムのストーリーなど、読者を選びすぎるテーマではなかったのも高評価の理由です。

3位 西鎮

ひらかれたはつ夏の窓 きみの髪さらさら盗む五限目の風

「はつなつ」や「アオハル」は調理の難しい食材ですが、表記のチョイス(はつなつ・はつ夏・初夏)も含めて、アクセントとして生かすことに成功しています。
髪を盗まれた「きみ」がハゲてしまったわけでは、もちろんありません。「唇を盗まれる」と同じ用法で、物理的には減らなくても心理的には減るものを敏感に感じ取る思春期の感性を、見事に表現されています。

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6,444字

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