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日本の男尊女卑についての考察㉝(古事記⑤出雲神話④国譲り完了)
いつも、読んでいただけて
とても感謝しております。
前回は武御雷神が
三度、大国主に国を譲るかと
迫る場面でした。
今回は、その続きと
豊葦原中津国が天照に
譲られるまでの経緯に沿った考察を
行っていこうと思います。
タケミカヅチはオオクニヌシに
詰め寄り再三に問いました。
「次子・建御名方殿は
ナカツクニをアマテラス様に
譲り渡すと申された。
オオクニヌシ殿に問う。
ナカツクニをアマテラス様に
悉くをお譲りせよ!
否か左か!」
オオクニヌシは溜息を吐いて
タケミカヅチに答えました。
「左様に心得ました。
我が二人が子が、譲り渡すと
申したならば、それに異は
ありませぬ。
ただし、天津神様と同等に
豪華な宮を建てて頂きたい。
我は、百足らず八十坰手
その宮に隠れて
出て来ぬようにする。
さすれば、全ての我が子
そして、全ての国津神は
誰一柱として、国譲りに
異を唱える者は現れますまい。」
そう聞くと、タケミカヅチは
「心得申した。
では、その様に致そう。」
と答え、柏手を打ち、
国譲りが纏まったと
高天原に伝えました。
多芸志の小浜(島根)に
豪華な宮殿を建て
天津神・秋津比古が孫、
櫛八玉姫が饗応の
役目を果たし、豪華な料理を
仕立てました。
(杵付大社・出雲大社の起源)
一方、高天原では、
タケミカヅチの柏手を合図に、
アマテラスが全ての
経緯を知りました。
アマテラスは胸を撫で下ろし
「ようやくナカツクニは、天津神の
そして、我が直族の統べる国と
相なった。
これで、我が長子・
天忍穂耳を
ナカツクニに遣わすことが出来る。」
と言いました。
アマテラスの前にオシホミミが呼ばれ
ナカツクニに遣わす旨を伝えると
オシホミミが母神アマテラスに
言いました。
「母神様、我には荷が重すぎます。
ナカツクニはすでにオオクニヌシより
代が変わっていたと言います。
その例に倣い、我よりも若く勇猛な
者を推挙いたします。」
と進言しました。
「オシホミミが推すのは誰ぞ?」
アマテラスは尋ねました。
オシホミミは静かに答えました。
「我が子であり、母神様の孫である
邇邇芸にございます。」
アマテラスは納得しました。
アマテラスは
•八尺瓊勾玉
•天叢雲剣
•八咫鏡
三種の神器をニニギに授け
「ヤタノカガミは我の写し身ぞ
伊勢(三重)の地に我として扱い、
我として崇め奉るように。」
とアマテラスはニニギに
伝えました。
幾人もの従者を引き連れニニギは
高千穂(宮崎・鹿児島)に
降臨しました。
【天孫降臨】
ここまでが、国譲りの経緯ですね。
出雲神話は古事記の中だけの
記載と申しましたが
国譲りに関しては日本書紀にも
記載があります。
では、早速
天津神がナカツクニに
派遣された頃から
順を追って考察していこうと
思います。
まず最初に高天原から派遣されたのは
アマテラスが長子
・オシホミミでしたが
彼はナカツクニの情報を知り
分析し、結局ナカツクニに向かう前に
諦めてしまいました。
おそらくは、古代出雲国の権力は
とても強大で、周知されていた事象
ということを伝えようとしてる
部分だと思われます。
つまり、古代天皇家のさらに先祖が
侵略する対象にした日本という国の
調査で出雲と言われる強大な国家が
ある。というのを初めて知った経緯を
神話に投影してるのではないかと
推察できます。
実際に国内の話なのか、
それとも海外からの侵略なのか、
どうかすらも古事記 上つ巻では
全て日本神話に
包括されていますから
そこから真実を推し量ることしか
出来ないのが現状で
つまり古事記は全てが寓話や
全くのフィクションというよりも
実際に起こったであろう事象と
寓話を織り交ぜている物語と
捉えるのがより自然ではないかと
思われます。
続いて、アメノホヒが
ナカツクニに派遣されます。
超のつく懐柔策だった。と
いう雰囲気で国譲りの交渉に
当たっていますね。
しかも、オオクニヌシに
逆に懐柔されて家来に
なってしまったアメノホヒ
ちなみに、アメノホヒは
かつての主、
オオクニヌシが国を譲った後も
出雲国を管理する立場として
子孫に至っては
出雲大社の祭祀を
司る神官として系譜を
現在も繋いでいると
伝わります。
このエピソードは
おそらく、寝返ったとされる
有力者がいたことを示唆している。
と捉える事ができます。
戦争に至るまでの交渉で
自国の外交官が
対象国の条件や状況に
自国を見限り対象国の片腕となった
という感じですかね?
そして三番目に派遣されたのは
ワカヒコでした。
こちらはとても有望で魅力のある
人選だと言えます。
最初は、オオクニヌシに
恭順を促そうと
ワカヒコは働きかけますが
こちらも、オオクニヌシの
懐柔策により、瓦解しました。
ここでは、流石!オオクニヌシ!
と言ったところでしょう。
八十神を退け、
地方豪族を平げ
国の礎を整備した。
苦労して築き上げた自負が
オオクニヌシにはあります。
天津神とはいえ
簡単に退くことはありません。
権謀術数に長けた様相を
呈しています。
さらにアメノホヒという
名ブレーンの力も多分に
影響していたと思われます。
ワカヒコは己が対象国の国主に
なれるよという。
とんでもなく甘い
ハニートラップに引っかかって
しまった。
という感じがしっくりきます。
八年後に
自国である高天原に露見し
暗殺されてしまった
ワカヒコですが・・・。
ワカヒコからすれば
天津神である自分が
対象国であるナカツクニの長に
なるんだからいいじゃん!
という発想でした。
なぜアマテラスはそれを
許さなかったのか?
ナカツクニは元々
アマテラスが弟
スサノオが統べる国でした。
スサノオは国津神の娘と
結婚し、国津神の代表
ではありましたが
出自は立派な天津神です。
しかも、二柱は
男神イザナギから生まれ出た。
三貴神ですから
どちらもイザナギの直流
ではあるんですが
しかしアマテラスは
全く納得していない様子です。
おそらくは、アマテラスは
高天原で大暴れして追放された
スサノオの子孫が治めている国
として捉えてたのでは
ないでしょうか?
つまり、気に入らない弟の子孫、
オオクニヌシが治めている国で
そのオオクニヌシの娘と結婚して
オオクニヌシの直系として
その国を統治しようと
している事自体を
”邪な意思を持ったワカヒコ”
と受け止めたはずです。
この部分、割とあっさり
流されましたが、
結構な重大事ですよ。
自国が派遣したはずの外相が
対象国の国主になろうと
してるんですから
後々の彼自身の展望は置いといても
とんでもない裏切り行為ですね。
この部分もおそらく
古代天皇家は同じようなことを
経験していたという事が
考えられます。
皇位継承者ではないが
割と近しい皇子が
反体制派の旗頭になって
天皇家に拮抗しようと目論んだ。
こういう部分の経験は
おそらく、古事記や日本書紀を
編纂していた当時から見ても
とても豊富であったと歴史から
見て取れますね。
それほど出雲国を侵略することは
困難を極めたという心情も
とても伝わります。
すでに侵略計画は
ここまで来るのに11年を要している。
その上、失敗の連続ですから
アマテラスも頭が痛くなった
事でしょう。
そして最後に武力で制圧する。
という最終手段に出ます。
タケミカヅチは女神イザナミが
最後に命懸けで産み落とした
炎の神ホノカグツチが
男神イザナギに首を刎ねられた時に
イザナギの剣についたカグツチの血が
岩に当たって生まれた神
とされています。
つまり、アマテラスやスサノオよりも
先に生まれている神ですが、
古事記や日本書紀において
とても扱いは荒く雑です。
おそらくは古事記において
日本で最初の祟り神である
イザナミを祖母とするから
ではないかな?と思っています。
生まれは祖神に近いが
天津神に与している最強の武神が
タケミカヅチということでしょうね。
天津神や高天原から見ても
「我が国最高の軍神ではあっても
生まれはナカツクニじゃんww。」
という感じでしょうか?
”自国の最高軍司令官の出自は
敵国生まれだった。”
とてもややこしいですが
近年も似たような人いますね。
U国生まれでR国のナンバー2
な人でしたか。。。
まあ、そんな立場が微妙な
タケミカヅチが私心を捨てて
軍人に徹し、オオクニヌシ陣営を
フルボッコにします。
オオクニヌシの条件によって
出雲大社の起源と
なりましたが、オオクニヌシは
隠れる宣言をして表舞台には
出れなくなりました。
この時を境に、
別名の隠世大神と
なりました。
とんでもない苦労をして
出雲国を平定した。という
経緯を神話に塗り込め
古事記 上つ巻の4割を占めている。
とても貴重なエピソードが
出雲神話だと言えますね。
このエピソードに男尊女卑という
価値観に関する記述は
あまり出てきませんが
古事記・中つ巻、下つ巻
のエピソードを語る上で
とても重要なエピソードなので
しっかりお話しさせて
いただきました。
次回は、時代はさらに下り
古事記⑥ニニギ降臨外伝①
というお話しをさせていただきます。
古事記 上つ巻の終わりが
ようやく見えてきましたね。
ここまで読んでいただけて
すごく励みになります。
次回もどうぞお楽しみに!