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共働き家庭。中学受験をする子どものサポートに悩んでいます『中学受験 親のお悩み相談室』(#25)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問 共働き家庭です。子どもの勉強をとなりで見てあげられない現状に「これでいいのか…?」と不安も…。会社を辞めるべきかまで、悩んでいます。

回答 自分のキャリアを犠牲にしてまでやることではありません。現状の中でどんな受験にするのか、受験軸を家族で話し合いましょう。

何のために受験するのかを、もう一度振り返って

中学受験を考える世帯でも、共働きの割合は増えています。共働きの世帯の中には、「中学受験は、親のサポートがかなり必要」という話を聞いて、「共働きで中学受験をさせることはできるのだろうか?」という不安を持ち、中学受験をきっかけに仕事を辞めるという人もいます。小1の壁ならぬ、中学受験の壁です。

しかし、本当に親が仕事を辞めてまでサポートしないと、中学受験はできないのでしょうか。ここでもう一度確認して欲しいのが、我が家の「受験軸」です。

受験軸とは、どんな受験にしたいか、何のために受験するのかという軸のこと。どんな受験にするかで親のサポート内容は変わっていくからです。

現在のお仕事の状況、家庭の状況、パートナーやお子さんの状況など、事実を書き出し、さらにご家族で話し合った内容をもとに、我が家の受験軸を決めてください。

そのときに、何を優先事項にするのかによって、ご自身の仕事との向き合い方を変える必要が出てくる場合もあると思います。

でもそれも、すべては家族全員がより良くなっていくためです。子どものために自分を犠牲にしても、誰も幸せになれません。

これは、共働きかどうかに関わらず持ってほしい視点ですが、今の状況中でできることをして、最高の結果を得られるように、プランニングをしていきましょう。

共働き家庭のための「中学受験成功」のポイント

ここからは共働きの家庭が抑えておきたいポイントを紹介します。

① 塾を活用するなら、できるだけ通学しやすく、柔軟で手厚いサポートがある塾を選ぶ
送迎ができない場合が多いと思うので、子どもが一人で通える塾、入退出のチェックがある塾が安心です。また、宿題チェックや自習室で勉強のサポートなど、学習サポート体制が手厚い塾を選ぶのがおすすめです。オンライン併用の塾も共働きの家庭向きです。

② こまめなコニュニケーションをとる
親の仕事としてスケジュールとタスク管理がありますが、共働き家庭の場合、これをコニュニケーションの機会にしましょう。ある家庭では、子どもが塾に行くときに見送れないので、作り置きのおかずを用意して、子どもが自分で詰めていくのですが、出る前に写真に撮ってLINEで送らせていました。

そのときの「いってらっしゃい」「いってきまーす」と言う何気ないやりとりがとても大事だったと言います。スラックを使ってタスク管理をしていたというお父さんもいますが、大切なのは、励ましのひと言。仕事の業務管理とは違います。思い通りにコントロールするのではなく、頑張っている子どもとの交流の機会と捉え、温かいメッセージを心がけましょう。

③ お金と時間の使い所を考える
・時短のために、家に業務用のコピー機を買い、いつでも大量にコピーがとれる環境にした
・6年生から家庭教師をつけて苦手分野を洗い出し、受験対策をした

このような対策をした家庭もあります。過酷な受験生活をできるだけ健全に乗り切るために、お金を有効活用したのですね。反対に「学校説明会は時間が取られるけれど、行きたい学校があるというのはモチベーションを上げる一番の方法なので、ここは仕事が忙しくても参加するようにしてよかったと思う」という人も。
「サポートと仕事との両立の仕方は、家庭や子どもによっても全く違ってくるので、どこまでやるか、自分で探りながら、納得の形を探すのがいいと思う」と言うのは、フルタイム勤務で、大手塾から麻布中学に進学したAさん。

共働きでもそうでなくても、最終的に大切なのは、どんな受験にしていくのか、我が家の軸を決めて取り組むことです。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。