塾によって成績に違いはでますか? 塾選びのコツを教えてください。『中学受験 親のお悩み相談室』(#10)
少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。
中学受験が成功するか否かは、塾選びにかかっている
中学受験は塾選びから始まると言ってもいいほど重要です。子どもに合った塾を選ぶことは親の大事な仕事で、学校選びと同じくらい大切なものだと言えます。なぜなら、ひと口に塾と言っても、その内容や考え方がさまざまだからです。
しかし、多くの場合そこまで調べず、塾のチラシを見て「合格実績が高いから」とか、「周りの子どもが通っているから」という理由で何となく選んでしまうのではないでしょうか?
それは、どこに向かうかもわからない船に乗ってしまうようなもの。しかも、一度乗ってしまったら、なかなか降りられないのが、受験の船です。
ですから、「とりあえず入れてみよう」とか、「早く入塾しないと席がなくなるから」と焦らず、なぜ中学受験をするのか、我が家はどんな受験を目指すのかをきちんと考え、それを実現するためのベストパートナーとなる塾を選んで欲しいです。
ただ、その前にやっておいて欲しいことがあります。それは、何のためにどんな受験をさせたいのか、子どもも一緒に家族で話すこと(その前にご夫婦で話をして、共通理解を深めておくことも大切です)。
そして、家庭の方針が決まったら、その方針に合わせたやり方を選ぶことです。例えば、子どもが行きたい学校がある場合、その学校に多くの合格者を出している塾を選ぶというのも一つの方法です。
成績のことを気にされていますが、塾との相性もあるので、合格実績だけで判断するのは危険です。なぜなら、合格に至るまでの指導方法は塾によって違うからです。
以下は塾の種類を分類したもの。それぞれの塾の違いを理解した上で、我が家にあった塾を考えてみてください。
塾の特徴がわからなければ、塾選びは失敗に終わる
大手塾、中小塾、それぞれに特徴があります。主だった特徴は、以下の通り。
1.大手塾の特徴
・中学受験のカリキュラムと教材・ノウハウが確立している
・母集団が大きいので、全体の中での位置を把握しやすいが、成績が振るわない場合、モチベーションが下がり「お客さん」になってしまう可能性がある。
・成績別クラス編成をしているので、その中で切磋琢磨できる子向き。競争するのが苦手だったり、上位クラスに入れない場合、それがプレシャーになる場合がある。
・個別相談に乗ってもらいにくい。
2.中小塾の特徴
・小規模で講師の入れ替わりも少ないので、目が届きやすく、融通がつけやすい。
・めんどうみが良い。その反面講師の個性が反映されるので、相性がある。
・少人数制のところが多いので、比較されずにすむが、受験生全体での位置がわかりにくい。
・塾が得意な学校が偏っている場合もあるので、合格実績がない学校を志望している場合には、その対策が可能か確認した方がいい。
3.個別指導塾の特徴
・時間の都合をつけやすいので、他の習い事と並行しやすい。
・料金は割高になる。
・1対1、または、2対1で 指導が受けられるので、分からないまま先に進むことはない。
・アルバイトの講師が多いので、どんな先生に当たるかわからない。
規模によってその特徴をまとめましたが、指導方針や雰囲気も塾によってさまざまです。
例えば、成績によってクラス替えや席替えを行う塾と、行なわない塾があります。クラス替えがある塾は大規模な塾が多く、大勢の中で競わせるのですが、こういう塾は競争するのが好きで、競い合うことでやる気が出る子ども向きです。
反対に上位クラスに入れない場合、自信がなくなるだけでなく、自己肯定感が下がってしまうことも考えられるので、お子さんの様子をよく見てケアをしてあげることが必要です。
大手塾の中には、5年生の終わり頃に転塾者がたくさん出るというケースもあります。これは、上位クラスに入れなかった子どもが十分なケアをしてもらえず、このままでは結果が出ないと中小塾に移ってくるのです。
プレッシャーに弱く、競争が嫌いなお子さんには、クラス替えを行なわない小規模な塾で、講師にじっくり見てもらいながら力をつけていく方が、伸びることが多いようです。
また、わからないことがあったときに、自分からどんどん質問できる子どもと、反対に声をかけてもらわないと自分の思っていることを伝えられない子どもがいます。
後者の場合、講師がひんぱんに変わる塾ですと、打ち解けるのに時間がかかりますし、大勢の中で埋もれてしまって、わからないところもそのままやり過ごしてしまうことになりかねませんので、専任の割合が高く、講師の目が行き届きやすい塾を選ぶといいでしょう。
どう生活したいかまで考えて、塾を選ぼう
カリキュラムの進め方も、予習主義と復習主義があります。どちらもメリット・デメリットはありますが、予習主義のほうがより自発的に学ぶ姿勢が必要ですから、好奇心が強い子ども向き。
家庭学習に関する考え方もさまざまで、塾で完結させるという方針で、家庭学習の課題がそれほどない塾と、かなりの宿題が出る塾があります。
優先したいお稽古ごとがあったり、マイペースに学習をしていきたい子どもは、個別指導の塾や通信教育を利用するのもいいでしょう。また、最近は上記のいずれにも当てはまらない探究型の学習を行なう塾もでき始めています。
首都圏では、思考力テストや英語テスト、プレゼン型入試など入試も多様化しており、そういう受験を目指す場合には、そういう塾で得意を伸ばすことが受験合格につながる、第3の道にもなっています。
いずれにしても、進学実績や皆が行くからという理由だけで決めるのはNG。
中学受験は親と子と塾のタッグがうまくいくかどうかも大事なポイントです。
また、最近は塾でのハラスメントも問題になっています。必ず塾に足を運んで、体制を確認し、お子さんにあった塾を選びましょう。