村上春樹さん原作の映画を連続で4つ観た感想

村上春樹さん原作の映画を立て続けに4本みてみた。僕はそれぞれを原作(小説)で2~3回は読んでいると思う。
とはいえ、まとめて書くこともそんなにないかもしれない。総じて原作を超えることはできなかったと思う。話の筋が細かくは違っているところがあるし(短篇ならまだしも長篇を2時間なりに落とし込むのは難しそう…)、キャスティングのイメージと原作と違うこともしばしば。しかしながら、この巨頭(というか巨匠というか、ご本人は好まないかもしれない)に挑むべく、超えるべく、またおそらくは村上春樹ファン(村上主義者だとか)からの批判を恐れることなく、制作された熱量のようなものを僕は感じることとなった。
それはあるいは見終えて2日なり1週間なりが経過してふつふつと生まれてくる感情でもある。

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01風の歌を聴け

【風の歌を聴け】
これは1981年の作品のようなので、まだまだ村上春樹さんが無名の頃。ある意味では衝撃的な映画。
予告編はコチラ
https://youtu.be/w5KO6Hg5hbA
この連呼される「風の歌を聴け!」は本編では存在しないのでご安心いただきたい。といいつつ、この連呼こそが頭に残っているともいえる。
鼠やジェイズ・バーのマスターに違和感をいだきつつ、なんていうんだろう、鼠は原作では確か小説を書いているけれど映画の中では映画を創っている。土をただひたすら掘りまくる映画が、映画の中で(映画の中の映画とか言い方がややこしくてすみません)出てくるシーンなど印象的で、村上春樹的と感じた。
場末ではないはずの神戸が、やはり1981年制作ということで場末感が出ており、やっぱりこの時代に作ったからこうなるよなぁ、というのが始終あり、そこに好感を持つことができた。女性キャストもみなさんなかなかいい味を出していらっしゃいます。ビーチ・ボーイズの挿入歌もよかった。
1981年というと原作者は1973年のピンボールや羊をめぐる冒険に続いていると思うけれど(記憶だけで書いているのでいろいろまちがっていたらすみません)この映画をどう感じたのだろう。そもそも「風の歌を聴け」自体にあまり良い印象を持っていないというから(僕はとても好きな作品です)この映画ならどうなのだろう。この1981年という場末感はおそらくこのあとの映画ノルウェイの森の感想でも僕は書くことになるような気がする。
思ったより長くなった…。

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01トニー滝谷

【トニー滝谷】
これはもう、うん、トニー滝谷演じるイッセー尾形さんがめちゃくちゃよかった。イッセー尾形さんのファンになったので最近はYouTubeで一人芝居とか観ている。
予告編はコチラ
https://youtu.be/Yj3_7teTMHE
宮沢りえさんもなかなかハマっている。始終モノトーンを感じさせるようなシックなタッチ、西島秀俊さんの静かな語りも良い(西島さんは村上春樹映画に頻出ですね)。坂本龍一さんの音楽もよかった。ところでイッセー尾形さんと村上春樹さんは顔かなり似ている部類。声も太くて低くて似ているかもしれない。それもよかったのかも。ところでイッセー尾形さんは柴田元幸さんのモンキーにもシェイクスピア特集とか書かれている。余談が多くなりました。
僕もかつて、トニー滝谷の妻ほどではもちろんないけど、僕なりに趣味のいろいろに多額をかけた。だから服を買うのが止まらなくなるような気持ちもわからないわけではない。僕もまた、すべてを手放した。ある夜、こんなに涙がでるのかというぐらい泣いたことがあった。もちつづけることが悲しいのは、なんとなくわかる。でも、うしなっていくことも、悲しい。
エンディングは原作とちょっと異なったシーンが挿入されている。これはこれでけっこう良かったです。原作の終わりはたしか、けっこうあっけなかったと記憶している。それも良し。
この4作の中ではこれがベストだったと思う。春樹さんもけっこう満足されたのではないでしょうか。

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03ハナレイベイ

【ハナレイ・ベイ】
予告編はコチラ
https://youtu.be/ioaIY8-9ukA
これも大好きな話。2018年なので3年前。ジャニーズ系?が出てるかな。トニー滝谷に引き続き「遺品整理」にどうも意識がいってしまった。のこされた孤独な人の物語です。
息子をハワイでなくしたサチ(吉田羊)はあまりにも背負いすぎていてなんだかこちらまで息苦しくなる。ドラッグで死んだ夫のウォークマンは最後まで出てくる。サチは最後の方で、部屋で荒れ狂う。爆発してしまう…。
にしても吉田羊さんは英語もピアノもお上手でたいへん素敵でした。役もぴったり。ハワイの海の景色もほんとによかった…。あまりがつがつせずゆったり進んでいく展開がよかった。
今年の8月に「ドライブ・マイ・カー」が映画公開されるけれど、つまり3年ぶりの村上春樹映画ということです。願わくはこれは映画館に観に行きたい。

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04ノルウェイの森

【ノルウェイの森】
予告編はコチラ
https://youtu.be/-T7fo0afTzE
原作(小説)は3回ぐらい読んだと思う。大好きな話。映画は…出ている人たちのイメージが違うけど(全体的に整いすぎている。若い時の研ナオコさんとか出すべき…ちょっと言いすぎかな)直子役はけっこう良かった。主人公の(名前はあったかな)松山ケンイチさんもがんばっていらっしゃいました。
もっと空虚な感じがほしい。でも主人公に感情移入することは多かった。2010年の映画だけど、雨の降るシーンも多くて、場末感(ボキャブラリー少なくてすみません…)もしっかり伝わってきてよかった。風の歌を聴けの映画が1981年なので、あのちょっとシュールな、うーん今の人には伝わりづらいようなニュアンスをもっと込めてほしかった。原作はそこまでシュールではなかったかな。しかし村上春樹さん、よくこんな話が書けるなぁ。天才だと改めて感じました。(おそらくご本人は映画のできにあまり満足してないんじゃないかな…。制作交渉に4年を費やしたらしい)
でも!本が苦手で映画なら…という方で楽しんでいただけるようなら村上春樹ファンとしては嬉しいかぎりです。まぁでもここんところ観た村上春樹原作映画はあとからじわじわくるし、これもそうなのでしょうね、総じて僕は、原作も映画も好きだ。
糸井重里さんや細野晴臣さんやYMOの高橋幸宏さんが出てたのも楽しかった。緑役は水原希子さんほど整ってないと思う。永沢役の玉山鉄二はまぁオーケーやな。
というふうに書いているうちにオーケー・オーケー、オーケー・オールド・スポートとなって、また数日すると「けっこう良かったやん」となる。
世界中でこの作品が愛されているのは、僕としても救いであります。「どうしようもないこと」のオンパレードそしてそれはそのままに。多くの人は潜在的に病んでいるのかもしれません。愛をもって悲しみをこえ、学び、またやってくる悲しみにその学びでは太刀打ちができない。そしてまた愛。
やや余談になるけれど、そのうちC・B・Dブライアンの「偉大なるデスリフ」を読むけれど、ローマあたりでこれを訳し終えたあとにノルウェイの森を書かれているんですね。1986年あたりかな。「遠い太鼓」と3点セットで読むと臨場感がでそう。僕はそういう楽しみ方をするタイプです。

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4本の映画を観て思ったけれど、僕は今の閉塞的な世界、いやとりわけ日本にうんざりしはじめているんだろうと感じました。やはり小説や映画は、いつもどこかに連れて行ってくれる、そして夢みることの大切さや豊かさ、夢は持ち続けていいと語りかけてくれるように感じました。

…またもや一気に書いてしまいまして読みづらかったらごめんなさい。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

(映画の画像はすべて https://www.amazon.co.jp より拝借いたしました)

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