「言わなくてもいいや」こそ言うべき理由

『この程度のことなら言わなくてもいい』

そんなこの程度が原因で人間関係がおかしくなっていくのを何度も見る。


言わなかった側からしてみれば、言ったところで大した意味がないと感じるから、言わなかっただけ。むしろ無駄な時間を使うだけなんだから、いいことのようにすら思えてしまう。

だけど、言われなかった側の受け取り方は違う。

『その程度のことも言ってくれなかった』

信頼感への小さな亀裂。言ってくれなかったことへのわずかな不満。

その亀裂は、徐々に深く広がっていく。


これが、なかなか他人には言えない、洩らせない秘密のことだったとすれば話は違う。

『それは言えないよね』

相手が言い辛いことへの配慮が自然と生まれやすい。もちろん、そういったことこそ言ってもらいたい気持ちもあるだろうが、それはお互いの関係が深い場合に限るだろう。そこまででなければ、言えなかったことへの理解をしてもらえる。


しかし、『この程度』の場合は違う。

この程度のことも話してくれる。重大ではないからこそ軽視しがちだが、それは時として重大なことを話すこと以上に大切な意味合いを持つ。


人は、言ってくれたことへの信頼感よりも、言ってくれなかったことへの不信感のほうが芽生えやすい。そう僕は思う。

だから僕は『この程度』のことを話す。『言わなくてもいいこと』を話す。

「言わなくてもいいかな?」と自分が思ったことを、「言うべきこと」にランクアップさせる。

『この程度』なんだから、話してしまえばいいんだ。そのことで損は生まれない。

「そんなこといちいち言わなくてもいいよ」と言われるかもしれない。でも、譜面どおりに受け取らなくていい。自分が言われた側で考えてみれば、その言葉の裏でどんなふうに感じているかわかると思う。


『この程度』のことを話す。

それが僕の人間関係を保つ努力の一つ。



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