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フィリピン留学記⑨イントラムロスとマニラ大聖堂

 週末にイントラムロスに行かないかと誘われた。聞き覚えのないカタカナの羅列には少々戸惑ったが、特に予定はないので行くことにした。

 電車とジプニーを乗り継ぎおろされた場所は、馬車が点在する古いヨーロッパの街並みのようだった。
 前を向くと早速それは視界に入ってきて、私は思わず息を吞んだ。
「マニラ大聖堂」である。
 策に囲まれた公園のような場所の後方にそびえたつ石造りの教会。様々な銅像や十字架が外部に展示され、向こうからここはカトリックだということ示唆しているようである。


 教会内に踏み入れるとカトリック特有の煌びやかさと神々しさが交わり、私の目を光で染めた。
 聖書内の物語を十字架に刻印したり、聖母マリアの銅像を展示したり、モザイクアートを窓に配置したり、教会は細部までこだわり尽くされていた。
 「マニラ大聖堂」は幾たびにわたる自然災害による破壊と再建を繰り返してきた。要塞としてマニラを長きにわたり守り続け、その文化や歴史の価値はこの上なく高いだろう。
是非その目で確かめてみてほしい。

 続いて「サンチャゴ要塞」へと向かった。
 ここはフィリピンの英雄、ホセ・リザールが死刑宣告された後に、囚われの身としていた場所だ。
 リザールは日本人には馴染みがない名前だが、彼の書いた小説は当時多くの人たちの心を動かし、植民地支配へ抗う原動力を与えていた。要塞内ではリザールが執筆した手紙や、最期の日を過ごした部屋まで展示されていた。
 歴史が好きな方は是非行くべきだろう。


 実際、私も彼の不条理に歯向かう生きざまには心打たれ、ますますフィリピンの歴史に興味を持てた。
 だが、同時に彼がなぜ「英雄」と呼ばれるているのかを疑問に感じた。祖国のためにその身をささげたと言われていたが、彼はささげたのだろうか。それとも後世に残された人々が英雄を必要とし、彼にその役目を負わせたのだろうか。真実は誰にも分らないが、想像はいくらでも膨らむ。
知れば知るほど謎は深まるし、新たな問題も見つかる
だから歴史は面白い。

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