【世界一わかりやすい】兵庫県庁公益通報問題について解説

兵庫県知事選挙が始まっていますが、誰もわかりやすく説明していないので解説します。

■事実関係の整理
今、調べている限り、事実関係は次の通りです。

■議論のポイント
議論のポイントは以下の5つです。
①3月の通報は公益通報か
②3月の解任に問題なかったのか
③4月4日の通報は公益通報か
④5月の懲戒処分に問題なかったのか
⑤恣意的な処分が行われていたと言えるのか。

■公益通報保護法は重要な問題ではない。
まず、この問題に触れるとき、誰しもが公益通報保護法に違反しているんではないか?という疑問を抱きます。
しかし、そこが一番重要ではないのです。
なぜ、公益通報保護法に違反したかどうかが問題になるかというと、
”恣意的な処分を行い通報者を排除しようとしたのではないか”
という疑いがあるからです。
人間だれしも失敗するので
”不注意で公益通報保護法に違反してしまった”
というケースもあります。
しかし、今回、一番重要な問題は”通報者を排除しようとしていたのか”です。
・公益通報保護法に違反する態様で行われていた
・通常よりも重い処分を科していた
など”通報者を排除するために恣意的な判断が行われていた”のであれば
それこそが問題の本質であり、糾弾すべきポイントになります。
しかし、百条委員会や現在の選挙活動においては公益通報者保護法違反があったかどうかのみにFocusしており正しくありません。

■3月12日の告発文について

・3月12日の告発文は公益通報ではありません。

理由は、公益通報保護法に定められた”通報先”に通報をしていないためです。

・兵庫県庁として調査しうるか

3月12日の告発文は名誉棄損に該当するおそれがあります。
それゆえ、社内調査として告発文を送付したものを特定し、懲戒処分を科すべきかどうか検討することは可能です。

・しかし、慎重に調査する必要があります。

なぜなら、名誉棄損は①公共の利害に関する事実であること、②専ら公益を図る目的であったこと、③事実が真実であることの証明があった場合には、違法性が排除されます。
それゆえ、調査するにあたっては違法性排除要件を満たす案件なのかどうか、つまり、告発文の内容が事実かどうかまで調べたうえで、処分の決定をしなければいけません。
この点について、立証責任の問題を持ってきて、名誉棄損罪の成立要件を満たせば処分できるという意見もあります。
しかし、立証責任はあくまでも刑事裁判における立証負担の分配を目的にしたものになります。懲戒処分を行う前提として当該行為が不適切(違法)であることが求められる以上、社内調査においては違法性阻却要件まで含めて調査が必要と考えます。

・PC押収の問題点
3月25日ころに行われた副知事の通報者に対するヒアリングによると、通報者は自身が作成した告発文であることを認めています。
つまり、それ以上、PCの中身を確認する必要はないのです。
それにもかかわらず、県庁側はPCを押収し、PCの中身を確認しています。
この行為については必要性を著しく欠くものであり、調査対象となっている以上の事実を捜索しようとする行為であって、通報者に不当なプレッシャーをかける行為と評価できます。

・3月27日の人事異動の問題点

次に3月27日、通報者は定年1週間前に”局長にふさわしくない行為”を理由として局長を解任されています。
この点、非常に問題の多い人事異動であると評価しています。

①名誉棄損に該当するかどうか十分に調査されていない。

具体的には、告発文について違法性阻却事由が存在しているかわからないため、人事異動を科すべき理由があるかどうかわからない状態になります。
それゆえ、この懲罰的人事異動を科すのであれば告発文の内容が事実かどうか調査を行う必要があります。
②局長にふさわしくない行為のレベルだったか
具体的な人事異動の理由が明確ではないため、仮定の話になりますが、処分としては重過ぎると言わざるを得ません。
まず、兵庫県は県庁職員による不適切行為について懲戒処分のレベルを定めています。
兵庫県懲戒処分指針(案)
解任は一般企業である降格に相当するものであり、免職と停職の間の処分です。横領や公金の窃盗など公的資金を侵害する行為は一発で免職ですが、県知事に対する名誉棄損については明確に定められておりません。
コンピューターの不適切使用に至っては戒告・または減給になります。
通報者が局長クラスであったとしても、懲戒処分指針に著しく反する決定であると言わざるを得ないのがこの懲罰的人事異動であろうと考えます。

4月の通報

こちらは公益通報になります。

5月の懲戒処分

5月になると、通報者は3か月の停職処分を受けることになります。重要な点は、通報者が既に局長の地位を剥奪されていることです。これが懲罰的な人事異動(実質的な懲戒処分)と見なされる場合、同一の理由で2度の処分を受けることになり、これは二重処分の禁止に違反し、不適切な処分と言えるでしょう。

加えて停職3か月という処分の重さです。
兵庫:前県民局長 停職3か月:地域ニュース : 読売新聞
停職3か月の理由として貸与されているPCを用いて14年間で200時間を費やし私的文書を作成したというものです。
つまり1年あたり約15時間、1か月あたり1時間強、1日あたり4~5分になります。
タバコ休憩よりも短いであろう違反行為に対して停職3か月という処分は重きに失するのではないでしょうか。

まとめ

以上を見る限り、この局長に対して恣意的と評価しうる判断が複数にわたって行われていると評価しています。
言い分があるかもしれませんが、告発文の一部において事実と認められているものもあります。
それにもかかわらず、告発文を”事実無根”と当事者が表現していること、処分自体が通常考えられるものより重いと考えられること、二重に処分されていると評価されていることなどを考慮すれば、やはり告発者に対して恣意的な判断が行われたと評価することが妥当ではないでしょうか。

人が死んでいるからどうであるとか、不倫していたからどうであるということは事実に対する評価に影響を与えるものではありません。
ただ、この問題の本質は公益通報者保護法に違反していたかどうかではなく、通報を受けたものが恣意的な判断をしていたのではないか、という点が一番の問題点であることを理解いただきたいと思っています。

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