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「水槽 - POLYHEDRON」をラッパーが採点してみたwww #1
初めまして、「至極」という名義で日本語ラップを制作しているものです。
至極のチャンネル→ https://www.youtube.com/@shigoku-rapper
前回、歌い手「轍。」のチャンネルで熱異常の歌ってみたを投稿した際、歌詞の考察メモみたいな殴り書きの文を投稿してからはや9ヵ月が経ってしまいました。
もうおしまいですね、時の流れは矢を置き去りにするリボルバー38口径の如く私を仕留めに来ています。
それはそれとして、折角文章を投稿できる場があるのに使わないのは勿体ないので、私が好きな日本語ラップについて、徒然なるままに認めていこうと思います。
私が日本語ラップをどういう風に捉えているかは #0 で語ります。
それじゃあ、やっていきましょうか。
【水槽 - POLYHEDRONの押韻批評】
全体を通して「日本語の発音を保ちつつ韻を踏む」という日本語ラップの大前提を守っていてとても印象が良い。
昨今の、語感が似ていれば全て韻であるとする「なんちゃって駄洒落ラッパー勢」とは一線を画す姿勢がここに表れている。
当楽曲はメロディパート、ラップパート、ポエトリーパートの3つで構成されているように思えるため、今回はラップパート (0:30~0:45、1:42~1:55の2箇所) のみを講評対象とします。
・「返したいLINE/話し足りない」
→「a(e)iaiai(n)/a(a)iaiai」
「え/な」以外踏めてて中々良き、ラップパートの歌い出しとして「私はちゃんと韻を尊重していますよ」という姿勢が見られて良いですね。
・「ほぼ死体蹴り/想いは目減り」
→「ooia(i)ei/ooia(e)ei」
「い/目」以外踏めてる。韻の密度が直前の一文と同じなところも良いですね。それによって押韻によるグルーブが出ています。
押韻密度がループミュージックのループの構成に影響することを分かっている素晴らしいパート。
・「消えてく前に
こびりついた理性
どこかで決まったりできないから」
ここは「えに/で決」「た理/たり/ない」でしか踏めてないが、「蹴り/減り」の韻を引き継いでいるので繋ぎは綺麗。
ただ、前半の押韻密度を考えると急に韻踏めなくなったみたいに感じられるので詰めが甘いともとれる。
ただし、「た理/性」「で決/まったり」と不自然な箇所で区切って韻を強調しつつ、ドラムのグルーブと対応させメロディとして成立させてくるアプローチは素晴らしい。
未だ見ぬ押韻方法を開拓し、干からびるボーカロイド曲を再開発しようとする意志が感じられて嬉しいです。
・「から死ねずに余白のかさ増し」
「話し(足りない)/から死/さ増し」と全体の雰囲気を損なわない押韻を施しつつ歌パートに移行するため力の抜けたフレーズを採用することで全体の構成が分かりやすく美しくなっている。
・「過去で戦うのやめとく
ブルームーンの効果音
予感してる」
1番のラップパートと比べ急に押韻をしなくなっている。何か意図はあるのだろうが、直前はポエトリーパートかつ、2番でラップパートがくることは予想できるので、ポエトリーパートからグラデーションのようにラップパートに移行しなくても、もっとパンチの効いた入りをしてもよかったのではないかと思う。
「直前との繋がりをあまり意識しなくても良いのでは?」と感じた。
もっと韻を詰めて良かったんじゃないだろうか、1番の入り「返したいLINE/話し足りない」くらいの韻の密度は欲しい。
それはそれとして、このパートは「あ/う」の母音をテーマにした言葉が数多く選ばれている。それは「戦うの」の「う」を強調したり、「う/く/ブルームーン」及び以降の押韻から推察出来る。
ただそれにしても押韻が出来て無さ過ぎるのでラップパートとしては違和感が大きい。ポエトリーパートともとれるどっちつかずなラップだ。
加えて、ここはリリックの意味が分からない、しかしこれはつまり暗号が隠されている箇所ということなので、押韻よりもキーワードを残すことを選んだのだと思う。
曲全体からして雰囲気を演出する言葉選びが目立つので、「ブルームーンの効果音」という具体的な何かを表すワードには、ミスでない限り何かが隠されているんだろうが、私には読み解けなかった。
※押韻箇所「効果/予感」「う/く/ブルームーン/る」(語尾でしか踏んでないのを韻とするのは不適切な気もするけども。)
・「ある種はぐらかす
まとまらず剥奪する探し回る罰」
「auu auaau aoaau auau uu aaiaau au」からも分かる通り、「あ/う」を多用することで韻踏んでるっぽさを出してる。この手法は韻踏んでないのに聴き心地が良いので上手く使えていれば効果的なのだが、このパートはかなり上手く使えていると思える。高評価。
加えて、「ある/はぐ/かす/らず/剥/奪/わる/罰/(数々)」は「あう」の順で言葉を組み立てている。
さらにこの押韻箇所は全て母音「あ」にアクセントがあり、「a↑u↓」というイントネーションが繰り返されるためグルーブが生まれている。高評価。
・「目の前で壊れた数々」
日本語のリズムが崩れている上に押韻も出来てないものの、このワードをパンチラインとして強調している点、後ろのドラムと音の位置と対応させて盛り上げドロップに繋げている点を考えるとこれは一つの正解であると言える。
韻を踏まないことでフレーズを強調しつつ、ドロップを強調するためのフレーズとしてはかなり良いのではないか。
【総括】
そもそも、ともすれば支離滅裂とも取れる言葉選びが多い楽曲なので、押韻密度をもっと上げれるようにも思えるが、ラップ技術を用いたJ-RAPの歌詞としてはかなりクオリティが高いように思える。
メロディパートおよびサビの歌詞で、語尾を同じ品詞2文字とかで踏んでくるのは逆に鼻につくが、まぁラップパートが誠実なので許されますねこれはうん。
ていうか冒頭の入り、ブレイクコアmixとかで良く聞く奴過ぎて大好きです。
ボーカルが人間なのにコーラスに機械音声入れてたり、そういう姿勢が押韻にも見れてとても良かったです。
あとラップパートのフロウにBonberoの面影が色濃く見えましたね。EAR CANDYでBonberoを客演に迎えていますから、彼にラップを習っているのでしょうか、完全に推測ですが。
それはそれとして、Bonberoという第一線のラッパーに影響を受け、ラップ技術を体得しようと頑張っているんだなというのが伝わってくる誠実なラップパートはやはり印象がいいですね。これからもどんどん上手くなって、やがて水槽スタイルを体得して欲しいです。がんばれ~~~🔥
厳格な採点基準があるわけではないですが、
「水槽 - POLYHEDRON」
の日本語ラップ至極ポイントは70点とさせていただきます。
満点は100点です。
いやぁ、良いラップだった……(沁)。
素晴らしい作品を創り上げた水槽に1リスナーとして感謝する旨をここに残し、今回は終わりとさせていただきます。
それでは、ここまでお付き合いいただき有難うございました。
今回の講評は以前メモ帳に殴り書きしたものにちょっと手を加えただけなので読みにくい箇所等々あると思いますが、次回からはnote用に書き下ろすつもりなので、楽しみにしていただければと思います。
それじゃ、この記事が面白かったら感想なり共有なり異議なりフォローなりなんなりかんなりしてください。
それじゃあ、また今度。