見出し画像

【マーケ】クリエイター視点から見る、伝えるために大切なこと:顧客の検索行動を決める、動画広告の活かし方


伝えたい便益と共感を重ねる表現

「何を伝えるか」を明確にする

企業が伝えたい便益や独自性(つまり「何を」伝えるか)をクリエイティブに落とし込むことは非常に重要です。

クリエイティブディレクターの北尾さんが言うように、まずは企業側が自社の便益を正確に伝えられることが先決であり、それがない段階では動画広告を制作するべきではないと述べています。

企業は、すべての伝えたいことを出し切った上で、それをシンプルなメッセージにまとめる作業はクリエイターの役割となります。

クリエイティブでジャンプさせる方法

北尾さんが強調するのは、「誰に」「何を」伝えるかを固めることです。

タレント起用や色彩選定といった表現手段に先に着目するのではなく、伝えるべき「何を」に注力しなければなりません。

クリエイティブの段階では、15秒や30秒という制約の中で伝えるメッセージは1つか2つに絞られるべきです。シンプルで効果的な表現を設計することが鍵です。

30秒CMでは、メインとサブの2つのメッセージを扱うことが可能ですが、それらは対等ではなく、メインメッセージに支えられる形でサブメッセージが配置されるのが理想です。

共感を引き出す表現

視聴者の感情を動かすために、北尾さんが最も強調するのは「共感」です。

視聴者が「その気持ち、私もわかる」「自分もそう感じる」と共感できる感情を動かすことが、購買行動に結びつく効果的な手段です。

ただし、表面的な感情を単に動かすだけでは効果が薄く、伝えたい便益と共感ポイントをうまく重ね合わせた表現が求められます。

クリエイティブでは、視聴者が思わず見たくなり、見終えた後に「得した」と感じるような仕掛けが重要です。

人間の本性・本音・深層心理を探る重要性

人間の本音を理解する

北尾さんは、表面的な発言や回答だけではなく、その裏にある本音や深層心理を常に考えていると述べています。顧客インタビューでも、表面的な答えを鵜呑みにせず、その背後にある本音を探る姿勢が重要です。

例として、ゲームのテレビCMでは、ただゲームの新しい機能や楽しさを見せるだけではなく、失敗するシーンを見せて友人が「俺に代われよ」と共感できる感情を引き出すことで、購買動機を強くするクリエイティブを作成しています。これは、顧客の深層心理を理解し、共感を得ることで購買行動に結びつける成功例です。

クリエイティブジャンプの成功事例

北尾さんが手掛けた「ビズリーチ」のテレビCMでは、当初は「ダイレクトリクルーティング」の新しさを伝えることが目的でしたが、その価値が十分に理解されませんでした。

そこで、実際のユーザーにインタビューを行い、彼らが「良い人が採れる」と繰り返し答えることに注目。さらに掘り下げて「採ったその日からすぐに働ける人」という具体的な便益を導き出し、それを「即戦力採用」という言葉で表現しました。

この裏側の本音を探り当てるアプローチが、クリエイティブジャンプの成功を導き、視聴者に深く共感されるコンセプトに結びついたのです。

潜在層を動かす重要性

マーケティングにおいては、潜在層の深層心理を動かすことが大切です。

テレビCMやマスマーケティングでは、顕在層向けのメッセージだけではなく、潜在的なニーズや「それをいわれたら確かに買う」という感覚を発見することが重要です。これが検索数の増加や購買行動の促進につながります。

例えば、社会の風潮や流れに合わせた共感ポイントを加えることで、より多くの人に訴求できるクリエイティブが作成できると北尾さんは指摘しています。

成果を上げるためのクリエイティブ設計

特に、スタートアップや新しいサービスを展開する際には、まずは小さなヒットを狙うべきであり、その後、放送本数やメディアの選定を増幅させることで成功を引き寄せる戦略が重要です。

また、潜在層をターゲットにしたクリエイティブ設計では、「それを言われたら買う」と視聴者が思うようなメッセージを探り当てることが、成功の鍵となります。

動画広告の役割:すべてを伝えず「気にさせる」

北尾さんが指摘しているのは、動画広告の役割は「すべてを伝えることではなく、気にさせること」であるということです。

15秒や30秒のテレビCMや動画広告では、商品のすべてを説明することは不可能ですし、むしろすべてを伝えてしまうと視聴者が調べる余地がなくなり、検索やさらなる行動に結びつかなくなります。

例えば、「この商品があれば自分の生活が変わるかも」という期待感を持たせ、視聴者に「どんな使い勝手なんだろう?」と興味を抱かせることが重要です。

事例:電話代行サービス「fondesk」のテレビCM

北尾さんが最近手掛けた電話代行サービス「fondesk」のテレビCMでは、「会社に電話が鳴りすぎて困っている。それを解決します。月額1万円から」というメッセージまでしか伝えていません。

詳細なサービス内容は説明せず、視聴者に「これは自分の会社に役立つかもしれない」と思わせ、検索や問い合わせにつなげる設計です。このように、視聴者に興味を持たせることが重要です。

絞ることの難しさと大切さ

田部さんが述べているように、15秒や30秒の動画広告では、伝えたいことを絞るほどに分かりにくくなる恐れがあります。

北尾さんは、テレビCMの役割は「30分の説明を聞きたくなる手前まで伝える」ことに徹するべきだと考えています。

これにより、視聴者は「もっと知りたい」「調べたい」と思い、検索や問い合わせに結びつくのです。

クリエイティブの「余白」を大事にする

北尾さんは、クリエイターに渡す資料や情報には「余白」が必要だと指摘しています。モデルやフォーマットに当てはめた情報は、クリエイティブに必要な発想の幅を狭めてしまうことがあります。

資料には生の素材や余白を含め、行間や表情に隠れた部分が大切だと述べています。

クリエイティブを作る際に、一番伝えたいことに尖りを持たせることで、視聴者に刺さる表現が可能になります。

信頼関係とクリエイターの選定

プロジェクトを進める上で、クリエイターとの信頼関係が最も重要です。

北尾さんは、単にコンペ形式でクリエイターを選ぶのではなく、人として波長が合うかどうかを重視し、信頼できるクリエイターと進めることを推奨しています。

お茶やお酒を飲みながら人間性や相性を確認することで、プロジェクトの成功に大きな影響を与えると述べています。


いいなと思ったら応援しよう!