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【マーケ】マーケターは人間の煩悩とどう向き合うべきか:顧客の検索行動を決める、動画広告の活かし方


ターゲットという言葉の危うさ

「マーケティングは売上獲得につながらなければならない」と考えている。

売上はお客様からの「ありがとう」の総量であり、企業が存続するためにはお客様から感謝され続ける必要がある。

一方で、「たちの悪いマーケティング」についても触れた。
それは、顧客を「ターゲット」として捉え、あたかも餌食のように扱い、「刈り取り」や「囲い込み」といった言葉が使われる手法である。

逆に、「たちの良いマーケティング」とは、顧客の心を動かし、その結果として売上が上がるものであり、鹿毛が過去に成功した案件もすべてこのようなアプローチであった。

「ターゲット」という言葉を社内で禁止していると述べる。
この言葉はもともと軍事用語であり、外資系企業からのマーケティング手法の輸入時にそのまま使われたものであるという。


誰の中にも女子高生がいる

Appleのような企業が価値を提案し、その価値に基づいて顧客をセグメント化し、ターゲットを絞ると語る。
Appleの事例では、ターゲットという言葉を使いながらも、真理を捉えたマーケティングが行われていると感じるという。

「ウォークマン」を開発したソニーの大曽根幸三氏の話を紹介した。
大曽根氏は、ポータブルCDプレーヤーの開発時に、まずCDジャケット4枚分の厚さの木型を作成した。
この木型を手に取った瞬間、大曽根氏は「このサイズならみんなが喜んで使う」と判断し、データではなく自分の中にいる消費者の視点をもとに製品の大きさを決定した。

マーケティングが有効なのは「何か」を広めるための手段だが、その「何か」を形成する最初の一滴はマーケティングからは生まれないと指摘する。


あなたは「マーケター」か「マーケティングワーカー」か

さまざまな世代を理解するために、自分の中に対象と同じ心を見出すことが重要だと語る。

マーケターが女子高生向けの商品を担当する際、ステレオタイプに囚われるのではなく、自分の中にいる女子高生の感覚を探る必要がある。

例えば、映画『君の名は。』では、多くの成人男性が女子高生・三葉の恋愛に共感し、涙を流した。
これは、映画を観る者が主人公の心情に近づけるように、監督や演出家が細やかに作り込んでいるからである。

多くの人が「インサイトは世代や属性によって異なる」と考えてしまうため、調査やデータに依存することが多いと指摘するが、「人間の本質は変わらない」と考えている。

人間の根底にある感情や欲求は同じであり、マーケティングにおいてもまず「人」に焦点を当てるべきだという。

自分の中に対象を見出し、そこからコミュニケーションを始めることこそが、マーケティングの真髄であると語った。

心のパンツを脱げ。本人も見えていない95%の「煩悩」を見つめよ

以前築地本願寺の住職と話す機会があり、その中で住職が「人間は5%の顕在意識で動き、残りの95%は潜在意識、つまり『煩悩』である」と語ったことを紹介した。

この煩悩に対して価値を提供するのが企業や商品・サービスであると考える。

「インサイト」という広告業界の概念が、95%が潜在意識であるならばインタビューや調査で得られることは難しいのではないかと述べる。

多くのインタビュアーが「なぜ」と尋ねることで相手が理屈を探し始めるが、これでは表面的な5%しか見えていないと指摘。
マーケターは相手が見えていない95%の部分、すなわち「煩悩」を見つめなければならないと語る。

心のパンツを脱ぐ、つまり煩悩を直視することは辛いが、真のマーケターであるためには嫌なものも見なければならないと強調した。


クリエイティブで刺すためにはポジショニングを変えることも重要

マーケティングとクリエイティブを分業せずに行うスタイルについて合理的であると感じつつも、顧客に刺さらないクリエイティブが生まれる可能性について問う。

「優しくて収入が平均以上の男性」を望む女性に対し、ストレートに「優しくてお金持ち」と伝えるのではなく、間接的に表現するのがクリエイティブであると説明。

例えば、腕時計をした男性が女性にサラダを取り分けるシーンで、優しさと収入を示すことができると語った。

「ほけんの窓口」の事例では、ポジショニングを「契約する場所」から「保険の勉強ができる場所」に変えたことで、前年比130%の来店を促すことができた。
この成功は、ポジショニングの重要性を理解し、事業の方向性を転換した経営者の判断によるものであると述べた。


BtoCもBtoBも同じ。人間の欲求を正しく見つけて伝えること

競合の捉え方について尋ねた。
ビジネスの競合とコミュニケーションの競合は異なると語る。
例えば、シャンプーのビジネス競合は他の消費財メーカーだが、テレビCMにおける競合は大手自動車メーカーや飲料メーカーとなる。

場所がドラッグストアに移ると、競合は化粧品や食品メーカーに変わり、消費者がシャンプーの棚にたどり着いて初めて消費財メーカーが競合になる。

消費者の脳内で競合環境が常に変わるため、競合は一業種に限らないと述べた。

BtoCとBtoBではテレビCMの作り方に違いはあるものの、根本的には同じであり、意思決定をするのは人間であるため、両者とも人間理解からすべてが始まると語る。

BtoBにおいては、「出世欲」というビジネスパーソンの煩悩をターゲットにした訴求が有効であり、BtoCもBtoBも最終的には人間の欲求を正しく見つけ、それをどう伝えるかに尽きると述べた。


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