【要約】「検討しますの仮面」を外す鍵は、「助け舟」の出し方にあり:セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する
「検討しますの仮面」とは何か
営業現場で「検討します」と返答するお客様がいる。
これは一見前向きに聞こえるが、実際には必ずしもそうではない場合が多い。
たとえば、「イメージが違う」と感じてもそれを明言せず、「社内で検討します」と伝えるケースがある。
最終的に「他社に決めた」と断られることも少なくない。
営業担当者にとっては、早期に課題を共有してもらえれば提案を改善できる可能性があるため、こうした状況は非常に悩ましい。
「検討します」と言う理由
「検討します」と答える理由はさまざまである。
ネガティブな感情の隠蔽
「提案が期待と違う」と感じても、直接指摘するのを避ける。社内意見の確認
他の意見を聞くために「検討します」と答える。競合との比較
他社の提案も確認しなければ判断できない状況での返答。
情報不足による課題
「検討します」という回答の背景情報を聞き出せない場合、営業の対策が難しくなる。
たとえば以下の情報が欠如していると対応が限定される。
社内で誰に意見を求めるのか
どの競合と比較検討するのか
このような情報が得られない場合、次のアプローチを考える際に障害となる。
結果として、営業は「検討しますの仮面」を剥がすための対応策を模索することになる。
「検討します」の背後に潜む心理
お客様が「検討します」と言う背景には、意思決定の保留や営業活動の一時停止を図る心理がある。
この対応の裏側には、提案内容への不満やタイミングの問題が存在する。
お客様の本音と不満
調査によると、お客様が「検討します」とシャットアウトする理由には以下の要因がある。
提案への不満
お客様は提案に何らかの不満を抱えているが、その場で改善要望を伝えるのは「面倒くさい」と感じる。一旦保留し、後で必要であれば要望を出そうという心理が働く。
タイミングの問題
他社からの提案を待っている
社内や上司の意見をまだ確認していない
「ノーチャンス」は少ない
「検討します」と言われた場合でも、完全に見込みがないケースは少ない。
調査結果では、「どんなことがあっても話は聞かなかった」という回答は全体の13.7%。
つまり、7件中6件は再アプローチのチャンスが残っていたことを示している。
営業に求められる行動
お客様の不満を察知する努力
改善要望が出されなくても、提案内容を再検討し、不満を解消する余地を探る。タイミングを見計らった再アプローチ
他社提案後や社内検討後など、お客様が意思決定しやすい時期を見極める。価値の再提示
提案に追加の魅力を加え、お客様の心を動かす情報を提供する。
「検討します」と言われた際の対応が適切であれば、営業活動の成功率を高めるチャンスは十分に存在する。
「検討しますの仮面」を外すための助け舟
「検討します」と言われた際、そのまま待つのは営業にとって大きな損失である。
多くの営業が「待つ」という選択をするが、この行動を改めるだけで受注率が向上する可能性がある。
お客様に「検討しますの仮面」を外してもらうためには、うまく助け舟を出すことが重要である。
お客様の心理と「検討します」の背景
お客様が「検討します」と答える理由には以下の心理が働いている。
イエスへのハードル
承諾することは即決購入を意味し、後戻りできないためプレッシャーを感じる。ノーへの抵抗感
営業担当者を不快にさせる恐れがあるため、断るのをためらう。現実逃避としての保留
「検討します」という答えは、その場を乗り切るための一時的な逃げ道である。
これにより、お客様は回答を先延ばししつつも、いずれは決断しなければならない状況を理解している。
助け舟としてのスモールステップ
お客様の「検討しますの仮面」を外すには、リスクの少ない小さなアクションを提案することが効果的である。
具体的なスモールステップの例
質問に答えるだけの簡単なアクション。
小規模な試用や無料体験を提供。
簡易な情報共有や確認作業を提案。
これらの行動は、お客様に大きな決断を求めることなく、前進する機会を提供する。
1万人調査の結果から見た「助け舟」の重要性
「営業担当者の追加説明にOKを出すために必要だったもの」を調査した結果、次の3つが重要視された。
潜在的な不満の解消
お客様が抱える小さな不満を解決する。タイミングの適合
他社提案や社内検討後の適切なタイミングで再アプローチする。価値の根拠の提示
提案の価値を具体的な根拠とともに説明する。
具体的な方法や手順は次節で解説されるが、まずはお客様の負担を減らすための「助け舟」を意識することが重要である。
「検討しますの仮面」を外すための商談終盤の10ヶ条
「検討しますのでお待ちください」と言われた際、いきなり「気になる点はありませんか?」と尋ねるのはリスクがある。
そのため、順序立てた質問でお客様の思考を整理し、「検討しますの仮面」を外す助け舟を提供することが必要である。
商談終盤の10ヶ条の概要
今ここに時間を使っている理由
お客様が提案の場に参加した背景を確認し、意思決定の原点に立ち戻る。提案への感触
会社としての見解を問う前に、個人的な感触を尋ねることで答えやすい環境を作る。進め方の意向
個人的な考えを確認し、無理に次の段階へ進めず購買意欲を高める。BANTCH情報
意思決定に必要な「予算」「決裁者」「ニーズ」「スケジュール」「競合」「組織体制」を順次確認。社内における次のアクション
お客様の社内での検討プロセスや予定を確認し、具体的な次のステップを明確にする。検討上のネックや判断基準
提案の引っかかりや判断基準を洗い出し、解決策を提示する。ネクストステップ
お客様と営業の間で具体的な次のステップを合意する。当社へのリクエスト
手順を踏んだ上で、お客様からの具体的なリクエストや宿題を引き出す。こちらの熱意
クロージングの場で熱意を示し、提案の採用に向けた最後の後押しを行う。直後のコミュニケーション許可
社内検討後の短時間の電話商談アポイントを取り付ける。
効果的な順序で進める意義
この「10ヶ条」は、順番通りに進めることが重要である。
1~5でお客様の思考を整理し、6~10で具体的なアクションや次の段階へ進むための準備を整える。
例えば、いきなり「気になる点は?」と聞いてしまうと、お客様は何を答えるべきかわからず、「検討しますの仮面」をつけてしまいがちである。
順序立てて進めることで、お客様の不安を解消しやすくなる。
判断基準が曖昧なお客様へのアプローチ
お客様が「検討します」と答える背景には、判断基準や予算の未確定がある。
このような状況では、意思決定を進めるために営業側から「予算化の道筋」を示す必要がある。
判断基準が未確定の状況
1万人調査によると、約75%のお客様が「判断基準が決まっていない状態」で営業提案を受けた経験がある。
**32.8%**が「社内で予算が未確定で、見積もりをもらってから検討しようと考えた」。
**28.8%**が「上司や他部署から依頼され、見積もりを基に検討した」。
共通するのは、予算が未確定なまま検討を進めている点である。
予算未確定の背景
お客様が「予算化の道筋」を明確に描けていない理由として、以下の要因が挙げられる。
担当者の予測と実際のズレ
「このサービスなら300万円くらい」と担当者が想定していても、社内で正式な予算承認が得られていない場合がある。予算策定プロセスの不明確さ
社内での予算化の具体的な手順やスケジュールが定まっていない。
営業が取るべき行動
「検討しますの仮面」を外すためには、営業が予算化のプロセスをガイドする必要がある。
お客様にとって負担が少ないスモールステップを用意することで、意思決定を促進できる。
具体的なアプローチ例
予算化の道筋を提案
「この提案の予算化を進めるには、以下のステップを参考にできます」と具体的なプロセスを提示する。仮の予算枠を設定
「一般的なケースでは300万円程度が目安となりますが、この枠内で検討する形で進めてみませんか?」と方向性を示す。ステップを小さく刻む
社内での初期検討に必要な情報を整理して提供。
次の会議や上司への報告で活用できる資料を作成。
適切なガイドの効果
「予算化の道筋」を明確にガイドすることで、次のような効果が期待できる。
お客様の不安が軽減し、提案に対する前向きな態度が生まれる。
「検討しますの仮面」を外し、商談を進展させる可能性が高まる。
予算策定における「4階層コミュニケーション」を理解する
営業が予算化を支援するためには、企業内での予算策定プロセスを理解し、効果的に関与することが重要である。
特に、大規模な企業では「4階層コミュニケーション」が意思決定の基本プロセスとして機能している。
4階層の概要
経営レベル
経営陣が事業部門に「売上目標」を指示する。
例: 「この事業では〇億円の売上を達成してほしい」。事業レベル
事業部門が目標達成のための計画策定を部署レベルに依頼する。
例: 「具体的な施策や予算計画を立ててくれ」。部署レベル
部署内で具体的な購買や外部サービス利用が検討される。
例: 「このプロジェクトに必要なものをリストアップし、予算案を作成」。担当レベル
現場担当者が情報収集を行い、営業に見積もりを依頼する。
例: 「このサービスの見積もりを取得して、上司に報告しよう」。
営業が直面する現場の状況
現場担当者が営業に接触する段階では、次の特徴が見られる。
検討の初期段階
「とりあえず金額感を把握したい」という状態であり、正式な購入検討には至っていない。見積もりの役割
提供された見積もりは、予算計画の参考情報として利用されるにとどまる。
購買判断はまだ先の段階。
営業の目指すべきポジション
「もし仮に予算承認が下りたら、この会社から買いたい」というポジションを獲得することが営業の目標である。
具体的な行動
最適な購買先候補としての認知
自社の提案を「予算承認後に優先的に選ばれるもの」として組み込んでもらう。予算策定プロセスへの支援
必要に応じて見積もり資料や情報を提供し、担当者が上層部へ提案しやすい環境を整える。
4階層を活用したアプローチ
現場担当者へのサポート
担当者が上司や部署に説明するための資料や具体例を提供する。
例: 「このサービスがどのように目標達成に貢献するか」を数値化。部署レベルの予算策定を後押し
提案が予算計画に含まれるよう、競合との違いや具体的な利点を明示する。事業レベル・経営レベルへの波及
提案が事業目標にどう貢献するかを、担当者を通じて上層部へ伝える。
「価格の妥当性」を示すためのアプローチ
予算化の道筋をガイドする際、最大の難所は「価格の妥当性」をお客様に示すことである。
これをクリアするには、価格の根拠を論理的に説明し、担当者が社内で上層部を説得できる材料を提供する必要がある。
価格の妥当性を示す具体的手法
以下のアプローチで価格の妥当性を示す。
価値の数値化
得られる利益やコスト削減効果を数値で示し、費用対効果を説明する。
例: 「このサービスを導入することで年間△△万円のコスト削減が期待できます」。業界の相場観を提示
トレンドや動向を踏まえ、「業界標準の価格」として位置づける。
例: 「同規模の他社でも、同様の投資額が一般的です」。過去の社内実績を活用
過去の承認された予算事例と比較し、最も費用対効果の高い選択肢を提案する。
例: 「以前採用されたサービスと比べ、今回の提案は〇〇%効率的です」。決定権者を巻き込む
経営陣や上層部に直接働きかけ、価格の妥当性に納得してもらう。
例: 「経営目標達成にはこの規模の投資が不可欠です」。コスト削減の工夫を明示
「通常この価格になるが、削減努力により〇〇円に抑えた」と説明する。
例: 「この提案は、無駄を省いた結果の最適価格です」。長期的な投資回収のシミュレーション
投資の効果を長期的に見積もり、十分なリターンが得られることを示す。
例: 「3年間で投資額の〇倍の収益を見込めます」。
営業の役割と「味方」作り
価格を示すだけでなく、担当者が「これを何としても実現したい」と思える状況を作ることが重要である。
担当者を味方につける
担当者の「やりたい」という意志を強固にし、上層部への説得をサポートする。
例: 提案内容が担当者の評価や業績にどう寄与するかを強調する。商談終盤の10ヶ条の活用
「今ここに時間を使っている理由」から徐々に話を進め、個人的な納得感を高めつつ社内全体を巻き込む。
投資の根拠の精緻化
提案が社内で承認されるかどうかは、営業がどれだけ精密に投資の根拠を構築できるかにかかっている。
価格の妥当性を理論的に証明しつつ、担当者を支援する「助け舟」としての役割を果たすことが、成功の鍵となる。
「価格の妥当性」を明確に示し、社内で納得される提案を構築することで、予算が未確定のお客様からの「検討しますの仮面」を外し、商談を成功へ導くことが可能となる。
キーパーソンが不明確な商談の特徴と対策
商談において「誰がキーパーソンかはっきりしない」というケースは、特に関係者が多い状況で頻繁に発生する。
営業としては、商談の場にいるメンバーの役割や意思決定プロセスを見極めることが重要である。
キーパーソンが不明確になる理由
お客様1万人調査によると、60%以上がキーパーソンが不明確な商談を経験している。
主要な原因
検討プロセスが未整備
商談が設定された時点で、意思決定のフローがまだ整っていない(23.5%)。担当者と上司の役割の不明確さ
判断可能な担当者か、上司の承認が必要かが曖昧であるため、念のため上司が参加する(22.9%)。複数の決定権者の存在
実質的な決定権を持つレベルの人物が複数いる場合(複数人参加による影響)。意見収集目的の参加者
貴重な意見を求めて招待された参加者がいるため、役割が混在する。意思決定者の変更
社内の事情により、意思決定者が途中で変わるケースもある。
キーパーソンにたどり着くための方法
1. 商談前の準備
参加予定者の役職や社内での役割を事前に確認する。
可能であれば、意思決定プロセスについて先方に質問する。
2. 商談中のアプローチ
発言内容を分析
会話の中で意思決定に影響を与えそうな人物を特定する。
例: 頻繁に質問をする人物や具体的な条件を確認する参加者。役割の確認
「本日の皆様の役割や視点を伺えればと思います」と、自然に参加者の立場を把握する。質問でキーパーソンを浮き彫りにする
「この提案に関して、次に進めるためにはどなたの承認が必要ですか?」と直接聞く。
3. 商談後のフォロー
商談内容を整理し、キーパーソンに直接共有する資料やフォローアップメールを送る。
必要に応じて、後日キーパーソンと1対1での話し合いの機会を作る。
営業の心構え
キーパーソン不在を前提に準備
商談にキーパーソンがいない状況を想定し、複数人へのアプローチやフォロー計画を立てる。巻き込み型アプローチ
決定権者が曖昧な場合、参加者全員が納得できる形で情報を提供し、意思決定を促進する。
キーパーソンが不明確な商談でも、参加者の役割や意思決定プロセスを正確に把握し、柔軟に対応することで商談を前進させることができる
意思決定者にたどり着く前に「情報提供者」と「協力者」を活用する
法人営業において、意思決定者に直接アプローチするのは難しい場合が多い。
そこで、まず「情報提供者」や「協力者」を見つけ、彼らの力を借りて意思決定プロセスを進めることが重要である。
意思決定者の種類
実質的な意思決定者
実際に発注先を選定する大きな影響力を持つ人物。
この人物を押さえなければ、購買プロセスは進まない。形式的な意思決定者
手続き上の最終承認を行う人物。
実質的な判断は行わず、ハンコを押す役割にとどまることが多い。
情報提供者と協力者の役割
情報提供者
特徴
社内の課題や組織体制、検討状況について積極的に情報を教えてくれる。
忙しくない場合が多く、営業にとって有益な情報をもたらす存在。見つける方法
「社内の状況を教えてくれる行動」を観察。
初期のコンタクトで詳細な情報を提供してくれる人をチェック。
活用例
組織構造や意思決定フロー、キーパーソンの関心事を把握するための情報収集。
協力者
特徴
社内で実質的な意思決定者に提言を行い、検討プロセスの進行を助けてくれる。
実際に動いて営業をサポートする役割を担う。見つける方法
「当社の提案に強く賛同している」行動を観察。
情報提供者の紹介を活用。
活用例
提案を意思決定者に効果的に伝え、購買プロセスを加速させる。
意思決定者へのアプローチ手順
情報提供者を探す
カウンターパートや商談参加者から情報提供者を特定する。
具体的な質問で情報収集を進め、組織の全体像を把握する。
協力者を見つける
情報提供者から協力者の存在や候補を探る。
協力者に提案の価値を伝え、プロセス推進を依頼する。
意思決定者に接触
情報提供者や協力者を通じて、実質的な意思決定者への接触を試みる。
適切なタイミングとアプローチ方法を選択。
注意点と営業の心構え
情報提供者や協力者を軽視しない
忙しくない人を重要でないと決めつけず、積極的にコミュニケーションを取る。組織規模に応じた柔軟な対応
大規模な組織ほど、意思決定プロセスが複雑であることを理解する。関係性を長期的に構築
単発で終わらせず、継続的に信頼関係を築きながら進める。
情報提供者と協力者の力を借りて、組織内での位置づけを強化することで、意思決定者への道が開かれる。適切な段階を踏むことで、商談の成功確率を高めることができる。
「反対者」を巻き込むためのアプローチ
商談において「反対者」が現れる場合、彼らを無視したり強引に説得しようとするのは逆効果である。
反対者へのアプローチには段階を踏み、相手の立場や感情を尊重しながら進めることが重要である。
反対者の特徴と種類
反対者の行動パターン
提案を保留にする
内製化を主張する
競合他社を支持する
提案の前進を妨げる行動を取る
反対者の分類
対案を持たない場合
「なんとなく反対」という曖昧な立場を取る。対案を持つ場合
明確な代替案を主張し、それを支持する行動を取る。
対案を持たない反対者へのアプローチ
反対者の想いを受け止める
提案を議論する前に、相手の感情や意見を丁寧に聞く。例: 「当社の提案を置いておいて、●●様が大切にされていることを教えてください」。
感情を大切にする
反対の背景には「自分が尊重されていない」という感情が潜んでいることが多い。
相手の立場を尊重し、信頼を構築する。保留の原因を解消
反対の理由が具体化する前に、対話を通じて漠然とした不安や疑問を取り除く。
対案を持つ反対者へのアプローチ
対案をじっくり聞く
いきなり自社提案を主張せず、相手の考えを深く理解する。例: 「どのような理由でその案を推されているのか教えていただけますか?」
宿題をもらう
自社提案に対して相手の要望や改善点を尋ね、次のステップを設定する。例: 「●●様のお考えを踏まえて、当社提案をどのように改善すべきか教えてください」。
高速ラリーで信頼を築く
宿題への迅速な対応と密なコミュニケーションを行い、スピードと対応力を訴求する。
反対者へのアプローチの注意点
タイミングを見極める
早すぎるアプローチは準備不足を露呈し、遅すぎると提案が排除されるリスクがある。
適切なタイミングで関与する。
情報提供者や協力者を活用する
反対者を説得する前に、情報提供者や協力者から内情を把握し、後押ししてもらう体制を整える。感情的対立を避ける
正面から説得するのではなく、対話を通じて関係を構築する。
反対者を巻き込む意義
反対者を味方に変えることは、提案の成功確率を大幅に高める。
意思決定者や他の関係者とともに、反対者を含めた社内の合意形成を目指すことで、商談を有利に進めることができる。
決めきれない決裁者を支援する方法
決裁者は意思決定の権限を持つ人物だが、その場で即決できるとは限らない。
むしろ、判断基準が曖昧なまま悩むことも多く、営業が適切に支援することで意思決定を促進する必要がある。
決裁者の「検討しますの仮面」
お客様1万人調査によると、**「判断基準が決まりきっていない状態で営業提案を受けた経験」**について、次の結果が得られた。
決裁者: 41.7%が「3回以上ある」と回答。
購買担当者: 30.5%が同様の回答。
決裁者のほうが、購買担当者よりも判断基準が曖昧であるケースが多い。
このデータは、決裁者が必ずしも「決める人」ではないことを示している。
提案に「3つのサブメッセージ」を組み込む
決裁者は権限を持ちながらも、決めきれずに悩むことが多い。
提案を採用してもらうためには、メインメッセージに加えて「課題の把握」「解決策の希少性」「費用対効果」の3つのサブメッセージを緻密に準備し、決裁者を支援する必要がある。
サブメッセージ1: 課題の把握
お客様の課題を的確に捉え、深い理解を示すことで信頼を得る。
課題の粒感を明確にする
大まかな指摘ではなく、具体的な課題にフォーカスする。
例: 「新規顧客の獲得数は十分ですが、問い合わせから成約までが停滞しています」と具体化。
原因の構造を分析する
課題の背景や原因を示し、納得感を与える。
例: 「商談設定前に解決可能な課題が明確に伝わっていないため、商談率が低下していると考えます」。
各人の認識を把握する
決裁者だけでなく、関連する部署やメンバーの認識も考慮する。
例: 「営業部では広告施策が課題と捉えていますが、マーケティング部はリード育成に課題を感じています」。
サブメッセージ2: 解決策の希少性
他の提案では実現できない「独自の価値」を訴求する。
他社との違いを明確にする
他社では解決できない理由を示し、自社の優位性を強調する。
例: 「他社の提案では表面的なデータ分析に留まりますが、当社は行動データまで分析し、具体的な改善策を提供します」。
営業としての優秀さをアピール
スキルや熱意、対応力を通じて「アタリの営業」であることを示す。
例: 「ご質問には即座に回答できる準備を整え、短期間で具体的な施策を提示します」。
提案の必要性を強調する
「今この提案を採用する意味」を明確に伝える。
例: 「この施策を今月中に導入することで、来月の販売ピークに対応できます」。
サブメッセージ3: 費用対効果
コストを上回る具体的なメリットを提示し、納得感を高める。
効果を数値化する
売上向上やコスト削減などの数値を用いて説得力を増す。
例: 「この施策により、年間〇〇万円のコスト削減が可能です」。
多面的なメリットを示す
金銭的効果だけでなく、現場の負担軽減や会社の成長への寄与も伝える。
例: 「従来の業務負担を30%削減し、社員の生産性を向上させます」。
複数のシナリオを準備する
効果の見込みを複数提示し、選択肢を持たせる。
例: 「1年間で投資を回収できるシナリオと、3年で〇倍のリターンを得られるシナリオを比較できます」。
緻密な準備が決裁者を支援する
決裁者は権限を持ちながらも悩むことが多い存在である。
提案に3つのサブメッセージを込め、課題の理解を示し、提案の希少性を伝え、費用対効果を明確化することで、決裁者の意思決定をサポートすることができる。
準備を周到に行い、提案が「腹落ち」するよう支援することで、商談の成功確率が高まる。
大企業相手の商談では「合意のしやすさ」と「密な連絡」が鍵
大企業の商談では、意思決定プロセスが複雑になり、時間がかかることが多い。
そのため、関係者との密なコミュニケーションを通じて合意形成を進める必要がある。
大企業の意思決定の特徴
決裁者にたどり着くまでの時間が長い
中小企業に比べ、窓口担当者や中間管理職とのやり取りが増える。「検討します」の頻度が増加
社内合意が必要なため、決裁が遅れやすい。関係者が多岐にわたる
部署や役職ごとの役割が分散し、全体の合意形成に時間を要する。
密なコミュニケーションの必要性
調査結果
企業規模が大きくなるほど「ほぼ毎日のやり取り」が必要
1万人調査では、企業規模が大きいほど「商談」「電話・メール・チャット・SNSなどのやり取り」の頻度が増加している。週に2~3回以上の連絡が信頼構築の鍵
大企業の担当者は頻繁な連絡を通じて提案内容の理解を深める傾向がある。
関係者が増えたときに「背景を探る」アプローチ
大企業向けの営業では、関係者が多くなるにつれて、お客様からの質問や要望の背景を深く理解することが重要になる。
単に質問に答えるだけでなく、背景にある意図や状況を把握することで、効果的な提案が可能になる。
質問や要望の背景を探る方法
商談中の雑談を活用する
商談の終了間際や雑談の時間を使って、自然な形で情報収集を行う。
例: 「他の方から何かコメントはありましたか?」や、「社内ではどのような意見が出ていますか?」と尋ねる。
背景を探る質問を計画する
商談中には直接聞きにくい場合でも、適切なタイミングを選んで質問する。
例: 「このご要望はどちらの部門から挙がってきたものですか?」を軽い口調で尋ねる。
情報提供者や協力者を活用する
窓口の担当者に直接尋ねるのではなく、他の関係者から情報を得る。
例: 情報提供者に「この意見の背景を詳しく知っている方はいますか?」と聞く。
営業支援システムで情報を蓄積する
得られた情報を整理し、次回の商談や社内での共有に活用する。
例: 「担当者からの要望」と「その背景にある社内の状況」を記録しておく。
決裁者を理解するための「日常の情報収集」
決裁者の日常会話をつかむ
決裁者が現場にどのような指示やコメントをしているかを担当者から聞き出す。
例: 「最近、決裁者からどのようなアドバイスがありましたか?」と尋ねる。
決裁者が発信する資料やメールを確認する
提案の関連性にかかわらず、決裁者の価値観や判断基準を知る。
例: 「全体会議での発言内容」や「社内で共有されたメール」を参照する。
決裁者のストレスやイライラを把握する
繰り返し出てくる不満や未解決の課題を捉え、提案内容に反映する。
例: 「決裁者が何にストレスを感じているのか?」を会話や資料から探る。
情報収集の注意点
担当者のバイアスに注意する
担当者の意見が決裁者の意思と一致するとは限らないため、ファクトを重視する。
自然な形で情報を引き出す
相手に負担をかけないよう、雑談やリラックスした場面でヒアリングを行う。
継続的に情報を集める
一度に全ての情報を得ようとせず、日常的な営業活動の中で少しずつ情報を収集する。
大企業向け営業では「ソロバン」と「ロマン」の両立が鍵
大企業に対する提案では、費用対効果(ソロバン)の明確さに加え、企業のミッションやビジョン(ロマン)に共感する提案が求められる。
特に「ミッション、ビジョン、パーパスの実現」を重視する傾向が強まるため、営業としてはその両面を意識した準備が必要である。
企業規模別の費用対効果の感じ方
中小企業(1~300人)
売上アップやコストダウンが最重要視される。
全体像が見渡しやすく、定量的試算が響きやすい。
中堅企業(301~1000人)
定量的な成果を求めつつも、一部で経営理念への関心が見られる。
定量的試算と定性的な価値提案のバランスが重要。
大企業(1001人以上)
ミッション、ビジョン、パーパスへの共感が重要度を増す。
定量的試算が難しくなるため、長期的な価値や理念実現への貢献が評価される。
大企業向け提案で重視すべきポイント
ミッション、ビジョン、パーパスへの共感
提案内容を企業理念と結びつけ、実現可能性を示す。
例: 「御社の掲げる『持続可能な未来』の実現に向けて、当社の提案は次のような価値を提供します」。
IR資料や公開情報の活用
上場企業の場合、IR資料や経営計画書から企業の方向性や優先事項を把握する。
例: 「IR資料で強調されている『環境負荷低減』の目標に適したソリューションです」。
ロマンを補完する具体的な提案
理念に共感するだけでなく、具体的な施策で支援可能であることを示す。
例: 「御社の掲げる『従業員の働きがい向上』をサポートするため、具体的にこのような改善を提案します」。
ソロバンも忘れない
どの企業規模においても、「売上アップ」や「コストダウン」の明確な試算を用意する。
例: 「この施策により、年間で〇〇万円のコスト削減が可能です」。
中小企業向けと大企業向けの営業の違い
中小企業向け営業
スピード感と明確な費用対効果の提示が重視される。
決裁者に直接アクセスできることが多い。
大企業向け営業
関係者が多いため、合意形成に時間を要する。
ミッションやパーパスを共有し、理念実現のパートナーとして信頼を得る必要がある。
大企業向け営業の成功ポイント
準備段階での情報収集
提案内容を企業理念やビジョンに結びつけるため、徹底した情報収集を行う。定量的・定性的試算の両立
費用対効果の試算に加え、企業の未来に貢献する提案を練り込む。柔軟で長期的なアプローチ
短期的な成果だけでなく、長期的な関係構築を見据えた営業活動を展開する。
お客様を「論理」「感情」「政治」の3タイプで捉える
営業活動では、お客様を「論理タイプ」「感情タイプ」「政治タイプ」に分類し、それぞれの特性に応じたアプローチを行うことが重要である。
特に、日本企業では「政治タイプ」が過半数を占めるため、全体像を把握した上で適切な助け舟を提供する必要がある。
お客様の3つのタイプ
1. 論理タイプ(27.2%)
特徴
「理屈が通るか」「客観的にわかりやすいか」を重視。
筋の通った説明やデータに基づいた提案が響く。
ロジックで納得できないと、意思決定を避ける傾向がある。アプローチのポイント
具体的なデータやロジックを提示する
例: 「この施策により、〇〇%のコスト削減が可能です」。選択肢を比較し、最善の根拠を示す
例: 「A案とB案を比較したところ、コストパフォーマンスの面でB案が優れています」。納得感を高める説明を用意
例: グラフや事例を使って論理的に説明。
2. 感情タイプ(14.9%)
特徴
「好きか嫌いか」「ストレスを感じるかどうか」で判断。
提案内容が自分の価値観やこだわりに合っていれば前に進むが、不快感があると進めない。アプローチのポイント
感覚的に共感できる提案を行う
例: 「御社のイメージにぴったりのデザインを取り入れました」。ストレスのないやり取りを心がける
例: スムーズな対応や丁寧なフォローアップ。感情に訴えるストーリーを活用
例: 「この施策で、顧客に喜ばれる場面を想像してみてください」。
3. 政治タイプ(57.9%)
特徴
「自分の社内評価」「リスクの有無」を重視。
社内での評価が上がる提案には賛同するが、リスクが伴う場合は慎重になる。
日本企業では最も多いタイプ。アプローチのポイント
社内での評価向上につながる提案を示す
例: 「この施策は、御社のDX推進プロジェクトの成功例として他部署にも参考になるでしょう」。リスク回避策を明確にする
例: 「リスクAに対しては、このような対策を講じます」。関係者全員を巻き込む仕組みを提供
例: 提案内容を社内で共有しやすい資料や説明会の開催を提案。
日本企業での分布と考察
分布結果(お客様1万人調査)
政治タイプ:57.9%
論理タイプ:27.2%
感情タイプ:14.9%
分析
日本企業では「政治タイプ」が圧倒的に多い。
これは、社内での合意形成を重視する文化が影響していると考えられる。
「論理タイプ」や「感情タイプ」に比べ、「政治タイプ」へのアプローチは関係者全体を巻き込む仕組みが求められる。
「論理」「感情」「政治」それぞれのタイプの特性
営業活動において、お客様を「論理タイプ」「感情タイプ」「政治タイプ」に分類し、それぞれの特性に合わせたアプローチを行うことで、商談を円滑に進めることができる。以下は各タイプの特性と対応ポイントである。
1. 論理タイプ
特性
思考基準: 「理屈が通るか」「客観的に正しいか」。
特徴:
情報整理力が高く、筋の通った話を好む。
「結論は」「理由は3つ」といった論理的な話し方をする。
主張が明確で、感覚的な説明には納得しにくい。
注意点:
ロジック不足や曖昧な説明には否定的。
「時間の浪費」と感じられる行動を嫌う。
アプローチのポイント
具体的なロジックを用意
数字やデータを使って、客観的な根拠を提示。
例: 「この施策により、売上が20%向上すると見込まれます」。
簡潔で整理された説明
結論から話し、要点を明確に伝える。
例: 「結論として、このプランが最適です。その理由は3つあります」。
感覚的な表現を避ける
「なんとなく」や「感じとして」ではなく、具体性を重視。
例: 「具体的にこの点が御社の課題を解決します」。
2. 感情タイプ
特性
思考基準: 「好きかどうか」「気持ちが前向きになるか」。
特徴:
感覚的な表現を多用し、好き嫌いが表情に出やすい。
人間関係や本音のコミュニケーションを重視する。
注意点:
情報量が多すぎるとストレスを感じる。
感情や主観を否定されると、商談が停滞する。
「ルールなのでできません」と突っぱねると関係が悪化しやすい。
アプローチのポイント
感覚的に共感できる提案
ビジュアルやストーリーを使って提案内容を感覚的に伝える。
例: 「このプランなら、顧客が笑顔になるシーンが想像できますよね」。
情報量を最小限に絞る
複雑な資料や大量のデータを避ける。
例: 「簡単にまとめた資料をお送りします」。
本音のコミュニケーションを心がける
自分もオープンな態度で接し、信頼関係を築く。
例: 「率直なご意見を伺いたいのですが、この点はいかがでしょうか?」
3. 政治タイプ
特性
思考基準: 「リスクがないか」「自分の評価がどうなるか」。
特徴:
他人の意見や評価を気にする傾向が強い。
「社内の重要人物」「同業他社」「有名企業」を参考にする。
実績や前例を重視し、リスク回避を最優先する。
注意点:
はっきりとした意見を求めすぎると、はぐらかされやすい。
実績や根拠のない提案には否定的。
アプローチのポイント
他社の事例や実績を示す
具体的な成功事例や、他社の導入実績を共有する。
例: 「業界のリーダー企業でも、このソリューションを採用しています」。
リスク回避策を明確に提示
実施する場合のリスクと、その対策を具体的に説明。
例: 「このリスクに対して、こういった対策を講じますのでご安心ください」。
関係者全体が評価される仕組みを作る
提案が「社内での評価向上」に寄与することを強調。
例: 「このプロジェクトの成功は、御社全体のイメージアップにつながります」。
各タイプへの効果的な営業活動
論理タイプ: データとロジックで納得させる。
感情タイプ: 感覚的に共感し、心地よいコミュニケーションを重視。
政治タイプ: 実績と安全性を訴求し、リスクを軽減する。
お客様がどのタイプに属するかを見極め、特性に応じたアプローチを取ることで、商談をより円滑に進められる。特に日本企業では、政治タイプが多いことを意識しながら進めることが成功の鍵となる。
「3つのタイプ」の見極め方
営業活動では、お客様のタイプを「論理」「感情」「政治」のいずれかに見極めることが重要である。
相手の特性を理解することで、適切なアプローチを取ることができる。以下は、タイプを見極める際の方法である。
見極めの基本ポイント
自己主張の強さを見る
主張が強い: 「論理タイプ」または「感情タイプ」の可能性が高い。
主張が弱い: 周囲の意見に影響されやすく、「政治タイプ」の可能性が高い。
意思決定の基準を確認する
理屈で判断: 「論理タイプ」。
感覚で判断: 「感情タイプ」。
リスクや周囲の評価を気にする: 「政治タイプ」。
質問を活用した見極め方法
迷った場合は、次のような質問を通じて相手のタイプを探る。
1. 複数の選択肢を提示する
「こちらのプランは、この機能でこれだけ便利です。一方で、こちらのプランはこういった特徴があります」
反応を見る:
「数字やデータを参考に決める」→ 論理タイプ
「フィーリングや直感を重視する」→ 感情タイプ
2. 決定の理由を尋ねる
「なぜこのプランが良いと思われますか?」
答え方を見る:
「理屈や根拠を述べる」→ 論理タイプ
「直感や感覚で答える」→ 感情タイプ
「周囲の意見や評価を気にする」→ 政治タイプ
チョウチンアンコウのアプローチ
暗中模索のような状況では、「質問を重ねて探る」方法が有効。
例えば、以下のような流れで絞り込む。
理屈を試す
「この機能を使うと、効率が〇〇%向上します。数字で見るとこのプランが最適です」反応: 理屈に動かされるなら「論理タイプ」。
感覚を試す
「このプランだと、使いやすさが直感的でストレスが減ると感じます」反応: 感覚に動かされるなら「感情タイプ」。
リスク回避を試す
「このプランは他社でも導入実績があり、安全性が高い選択です」反応: リスクや周囲の評価を重視するなら「政治タイプ」。
見極めが難しい場合の対処法
タイプが曖昧な場合は柔軟に対応する
論理・感情・政治それぞれに響く要素を含めた提案を行う。
例: 「このプランはデータでも実績があり、直感的な使いやすさが魅力です。また、多くの企業で採用されています」。
一つのアプローチに固執しない
質問や説明を重ねながら、反応に応じて軌道修正する。
見極めの注意点
表面的な反応だけで決めつけない
初期の反応だけでは判断できないことが多い。質問を重ね、相手の本質に近づくことが重要。複数タイプの要素を持つ場合もある
一人の顧客が複数のタイプを持っている場合があるため、柔軟な対応を心がける。
論理タイプのお客様には、端的で簡潔なコミュニケーションを
「論理タイプ」のお客様は、時間への意識が高く、効率的な提案や話し方を求める傾向がある。
以下は、このタイプのお客様に対応する際のポイントである。
論理タイプの特性
意思決定基準: 理屈やロジックで判断する。
特徴:
自分の意見や主張がはっきりしている。
簡潔かつ論理的な提案を好む。
時間意識が非常に高い。
提案のブラッシュアップ回数を最小限に抑えたい。
調査結果に見る「論理タイプ」の傾向
提案スピード
「1営業日以内に提案が欲しい」と答えた割合が 11.4%(感情タイプの4.8%、政治タイプの6.7%より高い)。
提案までのスピードを重要視。
ブラッシュアップの回数
「修正なし、最初の提案1回で完結するのが望ましい」と答えた割合が 17.3%(感情タイプ8.1%、政治タイプ9.3%より高い)。
無駄な修正作業を避け、初回で完成度の高い提案を期待。
論理タイプへの対応ポイント
結論を先に伝える
話の冒頭で結論を簡潔に述べる。
例: 「この提案の結論は、御社のコスト削減効果が20%見込める点です」。
話の構造を明確にする
ポイントを「3つある」など、具体的な数字で示す。
例: 「主な利点は3つあります。1つ目は~、2つ目は~、3つ目は~です」。
論理のつながりを明示する
因果関係や理由を示しながら説明する。
例: 「なぜこのプランが最適かというと、①現状の課題を解決する仕組みがある、②費用対効果が高い、③他社導入事例が多いからです」。
無駄を排除する
回りくどい表現や過剰な情報を避ける。
簡潔で整理された資料や説明を提供。
時間の配慮を伝える
スピーディーな対応を心がけ、その努力を示す。
例: 「御社の課題をいち早く解決できるよう、提案を本日中にお送りします」。
論理タイプへの動かし方のコツ
定量データを用いる
数字やグラフなど、客観的な根拠を提示することで信頼を得る。
次のステップを明確に示す
提案後の流れを具体的に説明する。
例: 「この提案に同意いただければ、1週間以内に導入準備を進めます」。
事前準備を徹底する
初回提案で完成度を高め、修正の手間を省く。
例: 「御社のニーズに基づき、この提案は既に最終形に近い状態です」。
論理タイプへのNG対応
曖昧な説明や感覚的な話し方
「なんとなく良い感じです」という表現は避ける。
冗長な資料や話し方
無駄に時間を取ると、「時間の浪費」と判断される。
初回提案の質が低い
初回で完成度が低い提案を出すと、信頼を損ねる。
論理タイプのお客様に動いてもらうためのポイント
「論理タイプ」のお客様は、時間の効率や論理的な整合性を非常に重視するため、営業活動ではそれに応じた対応が求められる。
以下に、具体的なポイントを整理する。
1. 忙しさを考慮したコミュニケーション
時間の節約を意識する
予定時間内に必要な話が終われば、早めに打ち切る提案をする。
例: 「必要な内容はすべてお伝えしましたので、今日は少し早めに終了しましょう」。
冒頭で全体像を示す
ミーティングの最初に、「今日のポイント」を簡潔に伝える。
例: 「本日は3つのポイントについてお話しします」。
2. 過去の発言を確認・引用
お客様の発言に整合性を持たせる
過去の発言を引用し、「前回おっしゃったことを踏まえています」と示す。
例: 「前回の打ち合わせで、この点をご指摘いただきましたので、それを反映しています」。
矛盾や不整合を避ける
提案内容や話の流れに矛盾がないよう注意する。
3. 情報の簡潔さと補足情報の分離
重要なポイントを簡潔に伝える
まず要点だけを伝え、補足情報は別途資料として渡す。
例: 「詳細なデータは、参考資料として別ファイルでお送りします」。
情報量に配慮
過剰な情報提供は避けるが、必要なデータは網羅的に準備する。
4. 論理タイプの特徴を活かしたアプローチ
口ぐせから判断する
「要するに」「結論は」「なぜなら」など、論理性や因果関係を示す言葉が多い。
動くツボ
メリットの明確化:
損得や費用対効果を具体的に伝える。
例: 「このプランでは、年間コストが20%削減されます」。一貫性:
提案に論理的な整合性があると、動きやすい。
避けるべき行動
考えがまとまらないまま話す。
無駄な時間を取らせる。
中身のない形式的な話を押しつける。
数字や根拠が欠けた提案をする。
危険なフレーズ
「まだまとまっていないのですが」
「数字は弱いのですが」
「なんとなくの主観ですが」
「昔からこうなっているので」
感情タイプのお客様には、言語化をサポートする
「感情タイプ」のお客様は、感覚で判断する傾向が強いものの、自分の意見や課題を言葉で表現するのが苦手である。
営業担当者は、この特性を理解し、適切にサポートすることが求められる。
感情タイプの特性
感覚で判断する
理屈よりも「好きか嫌いか」「直感」に基づいて意思決定する。
理論的な説明より、感覚的なアプローチが響きやすい。
言語化が苦手
自分のニーズや課題をうまく言葉にできないことが多い。
はぐらかしたり、抽象的な表現で伝える傾向がある。
口数が少ない
「感情タイプ=よくしゃべる」というイメージは誤解。
実際には口数が少ないことが多い(商談で口数が少ない割合が42.2%と高い)。
感情タイプへの対応ポイント
1. 言語化をサポートする
お客様が抱えるニーズや課題を丁寧に引き出す。
例: 「具体的にどの部分がご不安ですか?」ではなく、「例えば、この部分が難しいと感じていらっしゃいますか?」と例示しながら質問する。
抽象的な話を具体化することで、課題を整理しやすくする。
2. 感覚に響く説明を行う
感覚に訴えかける言葉やビジュアルを活用する。
例: 「このデザインは、御社のブランドイメージにぴったりだと思います」など、感覚的な価値を強調する。
3. 共感を示す
感情タイプは、本音を出す相手には心を開きやすい。
例: 「そのお気持ち、よくわかります。多くの企業様も同じように悩まれています」と共感を示す。
4. 情報を簡潔にまとめる
口数が少ない分、情報量が多いと負担になる。
必要な情報を簡潔にまとめ、重要なポイントだけを伝える。
例: 「こちらが御社にとっての主な利点です」と最重要項目に絞って説明する。
感情タイプへのNG対応
複雑すぎる説明や資料
情報量が多いと理解が難しくなり、判断が進まない。
感覚や主観を否定する
「感覚的な話は抜きにして」といった発言は信頼を損なう。
押しつけがましい態度
強引な提案や説得は逆効果になる。
感情タイプを動かすコツ
視覚的なアプローチを重視する
カラーやデザイン、体験型のデモンストレーションを活用する。
感情的な価値を強調する
「これを導入すれば、御社の社員の満足度が高まります」のように、感情面のメリットを提示する。
共感的なコミュニケーションを心がける
話を否定せず、共感をベースにした対話で信頼関係を築く。
感情タイプのお客様に動いてもらうためのポイント
感情タイプのお客様は、感覚や好き嫌いで判断しやすい一方、言葉で自分の考えを伝えるのが苦手な傾向があります。
営業担当者は、この特性を踏まえた助け舟を出すことが求められます。
1. 言語化をサポートする
感覚的な考えを引き出す質問をする
感情タイプは、自分の課題や要望をうまく言葉にできないことが多い。例: 「具体的にはこういうことでしょうか?」と相手の考えを補完する質問を投げかける。
相手がもどかしそうなときには、「何となくで構いませんので」と感覚を引き出す。
2. 情報をシンプルに提示する
少量の情報に絞る
感情タイプは大量の情報や複雑な文章を負担に感じるため、資料や説明は必要最低限に。例: 提案書を1~2ページにまとめ、図やビジュアルを活用する。
詳細な情報は補足資料として別途渡す
感情タイプにとって、簡潔な情報提示は思考停止を防ぐ効果がある。
3. 共感と一体感を重視する
共感を示す
感情タイプは「わかってほしい」という思いが強い。相手の話に共感し、安心感を与える。例: 「そのお気持ち、よくわかります。私も同じ立場ならそう感じます」。
連帯感を作る
提案に相手の意見を取り入れ、双方向のディスカッションを行う。例: 「これを一緒に作り上げましたね」という関係性を構築する。
感情タイプへのNG対応
大量の情報を渡す
思考停止を招き、商談が前に進まなくなる。
本音を隠す
共感を重視する感情タイプには、営業の本音が見えないと信頼を損なう。
感覚を否定する
「データ的には正しいですから」など、感覚を軽視する言動は避ける。
感情タイプの特徴と見極め方
口ぐせ
「なんとなく」「僕は好き」「モヤッとする」
感覚的な言葉や、本音を求めるフレーズが多い。
特徴
感情の起伏が激しい。
大量の情報に圧倒されやすい。
営業に「共感」や「一体感」を求める。
動くツボ
営業が「本音」で話し、連帯感を感じられること。
情報量が適切で、相手に配慮した説明がされていること。
危険なフレーズ
「結論から言うと」
「データではこうなっています」
「お気持ちはいったん置いて」
政治タイプのお客様には、万全のリスク対策を
「政治タイプ」のお客様は、自身の評価や社内でのポジションを守るため、慎重に行動する傾向があります。
彼らにとって最優先なのはリスク回避であり、特に評価が下がる可能性には敏感です。
政治タイプの特徴
周囲の意見や動向を重視する
上司や他部署の考えを確認した上で意思決定を進める。リアクションが薄く、様子見の傾向が強い
自分の意見をはっきりとは示さず、相手の話を最後まで聞く姿勢を取る。減点主義的な行動
特に大企業では、失敗を避ける行動が顕著。動くツボ
安全性や信頼性、実績がある提案で動きやすい。
政治タイプに動いてもらうためのポイント
1. リスクがないことを示す
他社の導入実績や成功事例を提示。
例: 「同業他社での導入事例では、このサービスにより年間コストが10%削減されました」
具体的なシェアや業界順位など、信頼性を数値で訴求する。
例: 「このサービスは市場シェアNo.1を誇ります」
2. 過度に意見を求めすぎない
リアクションが薄いのは、「まず話を聞く」というスタンスのため。
「お考えを教えてください」と直接聞くより、「これについてご意見があればお伺いしたい」と柔らかく伝える。
3. 他者の意見を活用する
社内での賛同者や同意を得やすいよう、周囲の反応を引き出す。
例: 「このサービスについて、●●様は非常に前向きな評価をされています」
4. プレッシャーをかけすぎない
判断を急かすと「検討しますの仮面」をかぶられる可能性が高い。
例: 「次回のミーティングでさらに詳細をご説明できればと思います」と、段階的に話を進める。
政治タイプのお客様へのNG対応
リスクを感じさせる行動や発言
実績や安全性を示さない提案は避ける。
意見を直接求めすぎる
「最終的にどうされますか」と決断を迫るのは逆効果。
曖昧な説明や実績不足
信頼性を感じられない提案は受け入れられない。
政治タイプの見極め方と対応策
口ぐせ
「●●さんはどう思うか」
「まず社内で確認します」
「他の会社ではどうされていますか?」
特徴
意見や判断を後回しにする。
他社事例や周囲の動向を頻繁に聞く。
動くツボ
信頼性が明確な情報提供。
他者がすでに成功していることの証明。
危険なフレーズ
「とりあえず進めてみましょう」
「こうすれば失敗しませんから」
「すぐに結論をお願いします」
政治タイプのお客様への提案の進め方
1. 「他者の意見」を活用する
政治タイプのお客様は、自らの判断よりも他者の意見や世間の動向に頼る傾向があります。
そのため、次のようなアプローチが効果的です:
実績の提示
「このサービスは、他社でも多数採用されています」といった導入実績を明確に伝える。権威の引用
「業界トップ企業もこのような方法を採用しています」と権威性を活用する。第三者の成功例
「実際に導入された他社では、〇〇%の改善が見られました」と具体的な結果を共有する。
2. 「大きなリスクがない」ことを強調する
政治タイプのお客様は、失敗のリスクを嫌います。
次のようなポイントを押さえて、提案のハードルを下げましょう:
段階的な導入を提案
「まずは小規模なテスト導入から進めましょう」とリスクを最小化する提案をする。万全のフォロー体制をアピール
「万が一の際には、このようなサポートを提供します」と具体的な支援内容を示す。成功確率の高さを伝える
「過去〇〇件中、成功率は〇〇%です」と安心感を与える。
3. 「社内評価」につながることを示す
政治タイプのお客様は、自身の評価を気にしています。
提案を進めるうえで、「この提案が評価アップにどう貢献するか」を明確にしましょう:
社内での成果を強調
「この提案を成功させることで、御社の〇〇部署の評価が高まります」と訴求する。長期的なメリットを提示
「このプロジェクトは御社のビジョンに沿った取り組みであり、経営層からの評価が期待できます」と提案する。具体的な成功例を挙げる
「他社の同様の担当者がこの提案を採用した結果、社内で評価が上がった事例があります」と具体性を持たせる。
政治タイプのお客様への対応の留意点
適切なタイミングを見極める
政治タイプのお客様は、慎重な検討を好みます。焦らずに十分な準備と情報共有を行いながら、進めましょう。
信頼関係を構築する
長期的な信頼を重視するため、頻繁な連絡や情報提供を通じて、少しずつ信頼を積み上げることが重要です。
安心感を与える提案を心掛ける
「大きなリスクはない」「既存の成功事例がある」といった安心感を繰り返し伝えることで、動いてもらいやすくなります。
単純リマインドではなく「カスタマイズメール」を送る
単純に「ご検討状況はいかがですか?」と繰り返しリマインドするのではなく、お客様の状況に合わせたカスタマイズメールを送ることが重要です。お客様の心理や状況を踏まえたアプローチが、商談を再度活性化させるカギとなります。
1. お客様の心理を理解する
提案内容を忘れかけている:お客様は時間が経つほど、提案内容の詳細を忘れがちです。
返事をしないことに気まずさを感じている:しかし、「まだ返事をしていない」という心理的な負担は残っています。
忙しさを言い訳に後回しにする:他の優先事項に忙殺され、「後で考えよう」と保留が続きます。
2. 単純リマインドの問題点
「ご検討状況はいかがでしょうか?」という単純なリマインドは、次のようなリスクを伴います:
負担を感じさせる:お客様には「プレッシャー」として受け取られることがあります。
返信が面倒になる:提案内容を再び確認する手間がかかるため、返信を避けたくなります。
関係性にマイナスの影響:営業がしつこいと思われ、関係が悪化する恐れがあります。
お役立ちメールでの関係構築と案件復活
リマインドメールのリスクと課題
ストレートなリマインドメールが無視され、返信も電話対応も得られない状況に陥ることは、営業担当者にとって大きなリスクである。
時間が経過すればするほど、お客様の提案への関心が薄れ、リマインドが効果を失う可能性が高い。
お役立ちメールの活用
単純なリマインドでは反応が得られなくても、「役に立つ」と感じられる情報には反応が得られやすい。
件名の工夫
お客様の名前、商談の日付、会話でのキーワードを件名に盛り込み、注意を引く。
例:「●●様が9月28日におっしゃっていた『XXX』の件」。提案への回答を促す文脈作り
商談内容や提案のメリットを具体的に示し、回答を急ぐ理由を明確化する。
例:「9月28日のMTGで、●●様が“年内にクイックヒットの成果が欲しい”とおっしゃっていました…」。
関係が薄れた場合の別アプローチ
リマインドが長期間スルーされ、記憶が薄れている状況では、直接的なリマインドを諦め、以下の方法を取る。
別件での価値訴求
過去の提案を話題に出さず、関係のないお役立ち情報を提供する。
例:「業界トレンド」「最新の成功事例」「関連するデータレポート」。お客様のポジティブな反応を活用
役立つ情報への反応を得た場合、その流れで案件を復活させる。
例:「情報がお役に立てて何よりです。ところで…」。
お客様に喜ばれる情報とは
お客様の会社規模や属性に応じて、響く情報は異なる。
大企業の場合
「導入実績や実例」「データの入った調査レポート」が喜ばれる。試行と改善
お役立ちメールに返信がない場合は、件名や内容を変えて複数のパターンを試す。
リマインドに反応のないお客様への最終手段
連絡が途絶える理由
お客様がリマインドに応えない理由として、以下の3つが挙げられる。
社内状況の変化で忙しくなった
急激な業務の増加により、お客様自身で状況をコントロールできず、ストレスが高まっている。説明が面倒
社内状況の変化を社外の営業担当者に説明するには、エネルギーを要する。
社内事情の多くは外部に伝えられないため、説明そのものが憂鬱になる。優先順位の低下が伝えづらい
案件が進んでいた場合ほど、優先順位が下がったことを伝えるのは心苦しく、営業担当者への連絡が滞りがち。
プレッシャーの逆効果
お客様が返信をしない背景を考慮せずに、「早くお返事をください」とプレッシャーをかけることは逆効果になる。
お客様の心理的負担を軽減するメッセージを心がける必要がある。
効果的な対応ステップ
1. 理解を示すメール
お客様の状況を理解していることを以下のように伝える。
社内の急激な変化で忙しい状況になっていることを理解している。
状況の変化により、以前とは前提条件が変わっている可能性があることを認識している。
具体例:
「お忙しい中恐縮ですが、先日の状況から社内で急な変化があったと推察しております。現状のステータスに合わせて、私どもも柔軟に対応したいと考えています。」
2. 感情・論理・配慮を組み合わせる
お客様に負担をかけない形での対応を提案する。
感情: 「個人的に●●様とお仕事がしたいと思っています。」
論理: 「この提案は御社に大きなメリットがあると考えております。」
配慮: 「社内のご事情を考慮し、ご無理のない形でプランを練り直します。」
3. 上司のサポートを活用
それでも返信が来ない場合、上司に依頼し、以下の内容を盛り込んだメールを送信してもらう。
「先般より、当社の●●(担当者)がご負担をおかけしており、誠に恐縮です。」
「もし可能でしたら、現状のご都合をお聞かせいただければ幸いです。」
上司からのメールはお客様にプレッシャーを与えず、丁寧な対応と受け取られやすい。
助け舟の意図
このプロセスは、お客様に再度関係を築く機会を与えるものである。
丁寧な姿勢と柔軟な対応を通じて、返信や連絡が復活する可能性を高める最終手段である。
お客様が気持ちよく決断できるクロージング
決断を妨げる背景
お客様が「検討します」と返答する背景には、以下の要因がある。
判断基準が曖昧で決めづらい。
関係者が多く、調整が複雑。
購買の意思決定が大きな負担に感じられる。
特に初めての発注では、不安や懸念が強く、「急いで決めてください」と求めるのは酷である。
魅力的なクロージングの要素
1. レスポンスの重要性
お客様が最も魅力を感じるセリフは、「前回のお打ち合わせでおっしゃっていたご要望に対して、具体的な対応を用意しました」。
お客様1万人調査では、6割近くがこの回答を選択。
過去の要望に基づいた具体的な対応が、意思決定を後押しする。
2. 優先順位を押さえた提案
次いで支持を集めたのは、「御社が抱えられているお悩みについて、特に優先順位の高い課題を押さえたご提案です」。
お客様にとって、優先課題への対応は大きな魅力となる。
3. 導入後の負担軽減
3番目に支持されたのは、「導入後に発生するようなお客様のご負担やご面倒を、最大限減らせる提案です」。
実施後のサポートや負担軽減が、購買への安心感を提供する。
4. 強みと実績の訴求
4番目は、「当社には、他社にはない強みと豊富な実績があるので、御社内にも説明しやすい提案です」。
他社との差別化や実績の提示は、社内調整を助ける。
あまり響かなかった要素
熱意や値引き
5位の「選んでいただきたいという熱意」や「値引きしました」は、受注率に大きな影響を与えなかった。
営業の熱意は、日々の対応やレスポンスの質で伝わるべきである。
感情的な共感
6位の「御社のビジョンに心から共感しています」は、決定要因にはなりづらい。
感情面のアピールよりも、具体的なメリットや実績の提示が優先される。
クロージングでのレスポンスの威力
レスポンスの早さや質は、単なる商談の進行だけでなく、お客様が「検討しますの仮面」を外し、最終決定に踏み切る強力な助け舟となる。
お客様の要望に応える具体的な対応を示すことで、安心感と納得感を提供する。
「前回の要望に応えた具体策」を提示することが、成功するクロージングの鍵である。
お客様の発言を深掘りし、反論に対応する方法
お客様の抵抗と認知的不協和
お客様が提案に異論や反論を示す背景には、以下のような心理的構造がある。
認知的不協和
人は相反する認知を抱えると、自分の行動を正当化する方向に動く。
例:「買うことへの不安」と「検討を続けたい」という感情が競合する場合、後者を選び、行動を正当化する。説得されることへの抵抗
人は他者から説得されることを嫌い、自分の意志を守ろうとする。
営業の直接的な説得が「検討します」の仮面を強化することもある。
深掘りの重要性
反論や異論に直面した際、いきなり説得するのではなく、発言の背景を深掘りすることが重要である。
例:使いこなせるか不安という反論
お客様:「この商品を使いこなせるか不安です。」
誤ったアプローチ
営業:「大丈夫です。他のお客様でも成功しています!」
→ お客様に寄り添っていないと受け取られ、さらなる抵抗を生む。正しいアプローチ
営業:「具体的にどのような点で不安を感じられますか?」
→ 深掘りを通じてお客様の懸念を引き出し、寄り添う姿勢を示す。
深掘りの手順
背景を探る質問をする お客様の発言の意図を理解するため、丁寧にヒアリングする。
例:「現在のご状況では、どのような課題が一番気になられていますか?」お客様の視点に立つ お客様の懸念や状況を共感をもって受け止める。
例:「それは確かに気になるポイントですね。」情報を共有する 深掘りで得た情報に基づき、お客様の懸念を解消する具体策を提示する。
例:「以前、同じ不安を抱えていたお客様がいらっしゃいましたが、こちらのサポートで解決されました。」
お客様と共に作り上げる企画
高速ラリーのような素早く的確なやりとりを通じて、「お客様と二人三脚で進めている」という感覚を作る。
寄り添う姿勢
「お客様の立場に立って考えている」という印象を与える。決断をサポートする
発言を深掘りし、背景や目的を明らかにすることで、納得感のある提案につなげる。
異論・反論への深掘りとクロージングの準備
異論・反論への深掘り手順
お客様の異論や反論に対処する際、説得を急がず丁寧に深掘りすることが重要である。
1. ネガティブな要因を一度受け止める
お客様が不安や抵抗を示した場合、それを否定せずに受け入れる。
例:「使いこなせるかどうか不安ですか。具体的にどのような点が気になりますか?」
2. ポジティブな側面を深掘りする
ネガティブな話題に集中しすぎないよう、ポジティブな要素に話題を戻し、掘り下げる。
例:
営業:「機能面についてはどうお感じですか?」
お客様:「機能はすごくいいと思っています。」
営業:「“機能はすごくいい”とおっしゃいますと?」
3. 判断軸に寄り添う
お客様が魅力を感じるポイント(例:機能、コスト、サポート)に基づき、自社の優位性を提示する。
会話時間をポジティブなポイントに多く割くことで、お客様の判断軸を変える。
4. 懸念の解消に進む
ポジティブな要素を強化したうえで、改めてネガティブな要因を解消する。
例:「使い方に関しては、導入時にサポートプログラムをご用意しています。」
想定外を作らないクロージング準備
クロージング成功のためには、事前の準備が鍵となる。
起こってほしくないことを洗い出す
競合の提案状況
他社の進捗や強みを調査しておく。お客様の社内状況の変化
人事異動や予算変更などの可能性を想定する。反論・疑問のシミュレーション
自分の提案に対してお客様がどのような懸念を抱くかを予測する。
自信を持つための準備
対策を講じた提案内容と段取りを作成する。
→「これがおすすめです」と力強く提案できる状態を整える。
お客様視点での提案
提案の際、以下のポイントを意識することで、信頼を得られる。
発言の機会を与える
一方的なプレゼンではなく、対話形式で進める。お客様の本音を汲み取る
「検討します」という表面の言葉だけでなく、その裏にある本音(例:不安や迷い)を理解する。
助け舟としてのレスポンス
「検討しますの仮面」の裏には、「買いたい気持ち」が隠れている場合が多い。
強引に押し切るのではなく、丁寧にヒアリングを行い、お客様が安心して決断できる場を作る。
100%完璧な提案ではなく、お客様の視点で「共に考える営業」が選ばれる。
商談の最後に、力で押し切るのではなく、お客様の心に寄り添い、「気持ちよく買う」ための助け舟を提供することが、クロージング成功の秘訣である。
第7章まとめ:「検討しますの仮面」を外すためのアプローチ
「検討しますの仮面」の正体
お客様が「検討します」と言う背景には、以下のような本音が隠れている。
現実逃避
判断や営業とのやりとりが面倒で、とっさに保留の言葉を選んでいる。潜在的な不満
提案に対する疑問や不満があっても、その場では指摘せず、後になってから問題を提示する。
営業が陥りやすい落とし穴
「言われた通りに待つ」
お客様の「お待ちください」に従い、何もしないで諦めてしまう。
実際に可能性が完全にない案件は13.7%にすぎず、86.3%はアクション次第で進展の余地がある。単調なリマインド
「ご検討状況はいかがですか?」という形だけの連絡は効果が薄い。
「検討しますの仮面」を外すための戦略
お客様の「検討します」という言葉を突破するには、以下のアプローチが有効である。
商談終盤の10ヶ条
気になる点の確認
商談の最後に、「何か気になる点はありませんか?」と直接確認する。
予算化の道筋を明確化
価格の妥当性を示す
「なぜこの金額なのか」を具体的なロジックで説明する。
関係者の把握
キーパーソンの特定
決裁に関与する関係者全体の構造を押さえ、重要人物にアプローチする。大企業対策
多数の関係者がいる場合、合意を得やすい提案やサポートを準備する。
タイプ別アプローチ
論理・感情・政治の3タイプを理解
お客様の特性に合わせて適切なコミュニケーションを取る。
カスタマイズした連絡
単純リマインドを避ける
提案内容や商談で話題になった要点を反映したメールでフォローする。
クロージングの鍵
レスポンスの活用
商談での要望に対して素早く具体的な対応を示し、お客様が気持ちよく決断できる環境を作る。深掘りで反論を解消
お客様の発言を深く聞き、ネガティブな要因だけでなくポジティブな側面も掘り下げて会話を展開する。
「検討しますの仮面」を外すためには、丁寧な準備と寄り添う姿勢が必要である。単なる保留ではなく、前進の助け舟を出すことで、営業とお客様がともに納得できる結果を目指すことが重要である。