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【備忘録】人を活かす-成果を生み出す組織の条件: 成果を生み出す組織の条件: 実践!チームマネジメント研修② 人を育て、人を活かす 実践シリーズ

「みなさんの模造紙にすでに答えが書いてあるのですが、このゲームで体験していただいたことを、『成果を生み出す組織の条件』として言語化していきたいと思います。」

成果を生み出す組織の条件:口数が多い

講師は、成果を生み出す組織の条件について、これまで現場で学んできた経験を基に、基本的かつ最も重要な事項を3つにまとめた。

特別なことではないが、押さえていないと成果は出ない、必要不可欠な要素である。このモデルに基づいて作られたのが、先ほどの「カード・タイムトライアル」のゲームであった。

経営者への一言

講師は、経営者からよく「成果を生み出す組織の条件とは何か?」と一言で尋ねられることが多いと述べた。

偉くなると短気になり、長々とした説明を好まない経営者のために、講師は一言で答えられるようにしているという。

その一言が『口数が多い』である。

口数が多い組織の特徴

講師が指摘する「口数が多い」とは、特定の人が一方的に話すのではなく、組織の上から下まで全員が双方向でよくしゃべるということを意味する。

これこそが、成果を生み出す組織の条件であると強調した。

講師は、これまで経営者やベテランのマネージャーに「口数が多い」と答えて否定されたことはないと述べている。

「黙々と仕事をしながら高い成果を上げている組織」について反論されることもないとし、みなさんの会社でもそういう組織を想像するのは難しいだろう、と語った。

実際の成果を上げる組織

講師の言葉を受けて、オレも自分の会社を振り返ると、成果を上げている組織は確かに賑やかであり、上も下も自信に満ちた雰囲気であることに気づいた。

盛り上がっている組織が、成果を出しているのだと実感した。

表面的な穏やかさとコミュニケーションの実態

講師は、表面的に静かで穏やかな組織でも、実際には会話が活発に行われていることが多いと指摘した。
このため、「口数が多い」という説明は否定されることはないが、時には逆の反応をされることがあるという。

「当たり前」の反応とその後の質問

講師は、過去に「そんな当たり前のことを話すためにこのメンバーを集めて、ゲームまでやらせて、金を取るのか?」と露骨に言われたことがあったという。

そのように面と向かって言われることで、講義が進めやすくなるとも述べている。講師はその時、すぐに「当たり前ですよね」と相手に同調し、こう質問した。

「コミュニケーションが活発だと、なぜ成果が上がるのですか?」

この質問に対し、多くの人が答えに詰まることが多いという。
なぜなら、コミュニケーションが成果にどう結びつくのか、その因果関係を深く考えたことがないためである。

メカニズムの理解不足

多くの人は、コミュニケーションが活発な組織が成果を上げているという事例をたくさん知っているものの、そのメカニズムをきちんと分析できていないため、言語化できない。

この結果、単に会話を増やせばよいと考え、雑談タイムを設ける企業もあるが、それだけでは成果にはつながりにくい。
メカニズムを理解せずに行われた施策は形骸化し、長続きしないことが多い。

講師は、「口数の多さ」がなぜ組織の成果に結びつくのかを整理することが重要であり、それを理解することで、より有効な施策を打てると強調した。

成果を生むための三つのポイント

これから説明する三つのポイントを日々の業務に取り入れることで、関係者の動きが劇的に変わることが多いと講師は述べた。

ここで講師は、テクニックを話す前にその必要性や有効性を時間をかけて説明することが、成果につながる講義の鍵であると語った。この前置きがあることで、参加者はその後の内容に真剣に耳を傾けるようになる。

講師は、これから本題に入り、その「三つのポイント」について説明を始めた。

①コミュニケーションロス

コミュニケーションロスの影響

「なぜ、口数が多いと高い成果が出るのか?」という問いに対して、日向講師はまず「コミュニケーションロス」について説明している。

『コミュニケーションロス』とは、コミュニケーションが原因で生じるやり直しやミス、モレなどの総称である。

例として、1回目のゲームでアウトプットを間違えたチームがあったが、これはビジネスであればやり直しとなり、余計な時間がかかる。

この時間のロスこそが、コミュニケーションロスである。

聞く側の反応が重要

コミュニケーションロスを防ぐためには、説明力を鍛えるというアプローチが一般的であるが、日向講師はそれが十分ではないと指摘する。

「コミュニケーションロスは、どんなに説明力を鍛えても完全には防げない」たとえ完璧な指示書を作成しても、発信者の努力だけではロスは減らない。

なぜなら、コミュニケーションの結果は受信者の能力や認識に依存するからである。

コミュニケーションのプロセス
コミュニケーションの流れを整理すると、発信者から受信者へメッセージが伝わり、受信者がそれを認識し行動し、その結果が生じるというプロセスがある。

ビジネスにおいては、特に受信者がどのように理解したかが最終的な結果に大きく影響を与える。

つまり、受信者が正確に理解できないと、発信者の意図が正確に伝わらず、ミスややり直しが発生する。

発信者と受信者の問題点

日向講師は、正確に伝わらない原因を発信者側と受信者側に分けて考えることを提案する。

これにより、どの部分が問題となっているのかを具体的に把握でき、改善点を見つけやすくなる。

参加者には、A3の白紙を使って発信者側と受信者側に分け、伝わらない原因をリストアップするワークが指示され、時間が与えられた。

このようにして、コミュニケーションの課題が明確にされ、改善への具体的なステップを踏むことが重要である。

企業研修での実施例

日向講師が見かけた事例として、ある企業の研修で同じルールでゲームを実施したときのことを紹介している。

部下役が上司役に対して、反応をしてしまう状況があった。

反応は禁止されていたにもかかわらず、素直な参加者たちは、メモを取る姿勢を保ちつつも、自然に反応していた。

日向講師は、その場面を見て、「何が起きているのか?」と興味を持ち、そのチームに近づいてみた。

「かさばらせる」という言葉の誤解

そのチームの上司役は、「かさばらせる」という言葉を用いて説明をしていたが、部下役はその意味が理解できず、首をかしげていた。

「かさばらせる」という言葉自体が、曖昧で意味が伝わらないため、部下役たちは困惑しながらも反応ができなかった。

上司役は部下役が反応しないことに気づかず、一方通行の指示を続け、コミュニケーションロスが発生していた。

誤解が生じた状況

ゲームが始まった後、上司役の指示に従い、A君、B君、C君はそれぞれ割り当てられたカードを集めていた。

しかし、「かさばらせる」という言葉の解釈に違いが生じ、A君はカードを平面に並べ、B君はカードを積み重ねるという行動を取っていた。

この違いが原因で、B君がA君のカードを手伝おうとしたときに混乱が生じ、A君は自分の仕事が邪魔されたと思い、B君の腕を掴んでしまった。

二人は無言でやり取りを続けたが、上司役がようやく状況に気づき、問題が明らかになった。

コミュニケーションロスの教訓

この事例から、コミュニケーションロスは単に説明力だけで解決できるものではないことが示された。

上司役は「かさばらせる」という言葉を普通に使っていたが、その言葉が一般的ではなく、誤解を招いた。

このように、説明力に頼るだけでは不十分であり、聴く側が疑問を感じたときに質問できる環境が整っていないと、誤解が生じるリスクが高まる。

ゲームでは質問が禁止されていたため、コミュニケーションロスが発生しやすい状況が作られていた。

発言や反応が禁止されていない状況でも反応できないこと

ある上司役が「発言や反応が禁止されていなくても、聞く側が反応できないことがある」と指摘している。

この上司役は、日向講師に質問する機会があったものの、質問の必要性を感じていなかった。

結果として、紙に書かれていた「数字面を上にして」という重要な指示を見逃していた。

反応を引き出すことがコミュニケーションロス防止の鍵


講師は、「声を出せ、質問をしろ」と部下に言うだけでコミュニケーションロスが解決するわけではないと説明する。

コミュニケーションロスを防ぐためには、聞く側の反応を引き出すことが重要である。

反応を引き出すことで、部下がより積極的に情報を理解し、成果につながる行動が取れるようになる。

反応を引き出すためのテクニック

聞く側の反応を引き出すための具体的な方法は、この後のテクニック編で紹介されるが、反応を引き出すことが成果を生む組織の条件の一つである。

このポイントを理解することが、コミュニケーションロスを減らし、組織の成果を向上させるために必要なステップとなる。

②意見の採用

コミュニケーションロスの削減とメンタルへの効果

日向講師は、「口数が多いとなぜ組織の成果が高まるのか」という問いに対して、コミュニケーションロスの削減は論理的、物理的な効果があると説明する。

さらに、二つ目の要素として、メンタル面での効果も含まれている。

この効果は、マイナスを減らすのではなく、プラスを増やすパワーにつながると強調される。

意見の採用が動機付けになる理由

『意見の採用』という点が、成果を生み出す組織において重要であると示された。

人は、自分の考えや提案が他者に受け入れられると、それが動機付けにつながる。

心理学ではこれを「有能感」や「社会的受容感」と表現するが、要するに自分の行動が成果に結びつくことで、自分の役割が実感され、自信ややる気を高めることができる。

他者に受け入れられることで、さらに喜びや責任感が生まれ、主体性も芽生える。

1回目と2回目のゲームの違い

1回目のゲームでは、発言が禁止されており、意見の採用プロセスが存在しない。

これに対して、2回目のゲームでは発言が解禁され、多くの人が意見を言い合えるようになることで、盛り上がりが生まれる。

意見の採用が責任感を生むことで、個々のプレイヤーが主体的にゲームに参加するようになり、成果が出やすくなる。

自責と他責の違い

意見が採用されることで、責任感が芽生える。

1回目のゲームでは、部下役が上司役から一方的に指示を受けるため、成果が出なかった場合、他責にすることが多い。

しかし、自分の意見が採用されると、失敗があった場合に自責の念が生まれ、次にどう改善すべきかという主体的な考え方ができるようになる。

これが、組織における参画意識を高め、仕事へのコミットメントを強化する。

3年離職率に関する事例

日向講師は、ある大手企業での3年離職率が問題となっている事例を紹介する。

その企業は財務的に安定しており、報酬も大手企業らしい水準であるにもかかわらず、若手社員が「天職ではない」という理由で退職していた。

退職理由を調査した人事担当者が、ある質問を投げかけた。

「自分の考えで仕事のやり方や中身を変えたことはあるか?」という質問に対して、驚いたことに多くの若手が同じ反応を示した。

若手社員の反応

退職を考えている若手社員の多くは、「天職ではない」と感じていたが、実際には自分で仕事の改善を試みた経験がほとんどなかった。

これにより、講師は、若手社員が自らの意見を仕事に反映させる機会がなく、その結果として自己効力感や責任感を感じられずに離職してしまうことが多いと指摘している。

この事例からも、組織における意見の採用がいかに重要であり、成果や満足感、さらには離職防止に結びつくかがわかる。

新人の教育と自己工夫の難しさ

新入社員は最初のうちは「言われたことしかやらない」という状況にあり、それが癖となってしまう。

時間が経つにつれ、上司や先輩から「もっと自分で考えて工夫しなさい」と言われるが、新人は驚き、「そんなことしていいんですか?」と返すことが多い。

これが「指示されたことしかできない」という固定観念に繋がっている。

組織における自己工夫の欠如

新入社員が「自分で工夫することが許されていない」と思い込んでいることが問題である。

飲み会の場でも、部下ではない社員が愚痴を言う際、「自分で変えればいいじゃないか」と言われるが、彼らは「そんなことは許されない」と答える。

このような状況は、新入社員が指示された通りに行動することに慣れてしまい、自分の意見や工夫を取り入れるチャンスを見逃していることを示している。

意見の採用による動機付け

講師は、この状況を解消するためには「意見の採用」が重要であると説明する。

新人が「自分で考え、意見を反映する」というプロセスを経験しなければ、仕事は面白くならない。

天職というものは見つけるものではなく、作り出すものであり、自分の意見や工夫を取り入れることで、仕事へのやりがいが生まれる。

自己の関心と動機付けの違い

自己工夫に対する興味や思いの方向性が、仕事の満足度や天職に対する認識に影響することを述べる。

彼は、効率化や業務改善に関心が強く、それによってお客様から評価されることが多い。

一方、売上を増やすことや規模を拡大することにはあまり魅力を感じない。

このように、個々の関心やモチベーションの方向性が、天職を作り出す上で重要な要素となる。

実験としての仕事の延長

講師が紹介した事例では、人事担当者が若手社員に「辞めるのを延期してみないか?」と提案したことが、彼らの引き留めに成功した理由である。

転職先で同じような状況に陥る可能性があるため、まずは現職で自分の意見を反映させて、仕事のやり方を変えてみることを提案した。

もしそれで仕事が面白くなければ転職すればよいし、面白くなれば辞める必要はない。

成果と引き留めの成功

この提案を受け、半数の若手社員が退職を延期し、最終的に多くが「仕事が面白くなってきた」と感じ、退職をやめるに至った。

自分の提案が上司に評価されることで、やりがいが増し、仕事に対する意欲が高まったという結論である。

QC活動の効果と参画意欲

「うちはメーカーで、QC活動があるが、それも同じ効果を狙っているのか?」と尋ねたことに対して、講師は、QC活動がうまくいっている企業では、メンバーに多くの意見を出させ、それを取り入れて成果を上げていることが多いと説明した。

これにより、動機付けや参画意欲が高まり、組織全体へのコミットメントが育まれることが目的の一つであると考えられる。

意見が出ない原因と対策

QC活動のリーダーとして意見が出にくい状況に悩んでいると述べた。

講師は、意見を引き出すためには「小さなこと」を採用することが重要だと強調した。

「意見の採用」と聞くと、価値のある大きな提案を想像しがちだが、実際には小さな工夫の積み重ねが成果に繋がる

その際、提案された工夫が大きな効果を生まないとしても、否定せずに受け入れることで、提案者の主体性や参画意欲が向上するという。

物理的効果よりも意欲の効果

現場では物理的な効果にばかり注目しがちだが、実は人のやる気や取り組み姿勢が、成果に大きく影響を与える。

小さな改善を否定せずに受け入れることで、社員の意欲を引き出し、それが組織全体の成果に結びつく。

小さな改善の積み重ねによる大きな成果

講師は、QC活動における「30秒台のタイムを出すための工夫」についても触れ、根本的な改革よりも小さな工夫の積み重ねが成果に繋がると説明した。

例えば、机の上を片付ける、表示をつける、声を出すなど、細かい改善点がタイム短縮に寄与する。

これらの工夫は、物理的な作業効率だけでなく、作業者の集中力や意欲を高める効果がある。

五つのポイント

日向講師は、小さな工夫の具体例として、次の五つのポイントを挙げた。

  1. 机の上を片付けること
    余計な物があると集中力が削がれ、効率が落ちるため、整理整頓が重要である。

  2. 表示をつけること
    誰がどの役割を担当しているかや、作業手順を表示することで、迷いや混乱を防ぐ。

  3. 机を一つにすること
    大きな机を使うと手を伸ばす距離が長くなり、作業がしにくいため、机を一つにまとめる。

  4. 声を出すこと
    例えば、カードを出す際に「イチ!」と声を出すことで、他の人が次の作業にスムーズに移れる。

  5. ホワイトボードの前でスタンバイすること
    作業が終わる前にホワイトボードの前でスタンバイし、タイムを書き込むことで移動時間を削減できる。

小さな工夫の体感

最後に、小さな工夫の積み重ねがどれほど成果に影響するかを実感してもらうため、休憩中に実際にトランプで試してみることを提案した。

一つ一つの小さな工夫が、大きな成果を生むことを体感することが、QC活動の効果を理解する鍵となる。

細かい改善ポイントの洗い出し

企業の現場に入った際、最初に行うべきは「細かい改善ポイントの洗い出し」である。

業務改善において、現場の小さな意見をどのように引き出すかが、マネジメントの課題となる。

講師は「一方的に意見を押し付けるのではなく、意見の採用プロセスを導入するべきだ」と述べている。

そのため、若手社員を集めてグループインタビューを行う手法がよく取られる。

特に、3年目から5年目の社員は、普段発言する機会が少ないため、このような場で発言を促すことが重要である。

講師が用いる具体的な問いかけは、「今の担当業務を行う際、やりにくいと感じている点や、もっとこうした方が良いと考えていることがあれば教えてください」という内容である。

このような問いかけにより、社員から「本当に小さなことばかり」だが、数多くの意見が出てくることが多い。

気軽に意見を出せる雰囲気づくり

意見を出す場を設けても、社員が「素晴らしいことを言わなければならない」と気負うことで、発言が減ってしまうことがある。

これを防ぐためには、気軽に意見を言える雰囲気を作ることが重要である。

この課題に対して、講師は「小さな工夫を引き出すための問いかけ方」に関する2つのコツを紹介している。

『小さく問いかける』と『出して欲しい意見を例示する』

小さく問いかける重要性

講師は、意見を出してもらうためには「小さく問いかける」ことが大切だと述べている。

「この研修、何か改善すべきことはありますか?」というように、漠然と全体に対して質問すると、社員は大きな改善点を言わなければならないと感じてしまう。

その結果、意見を出すことに対してプレッシャーを感じ、発言が少なくなってしまう。

一方で、「この研修の最初の演習、特にゲームの解説部分で何か改善すべきことはありますか?」といった具合に、意見を求める対象を絞り込むことで、社員は具体的な場面を想像しやすくなる。

さらに具体的に、「上司役への指示書、この内容について改善すべきことはありますか?」と絞り込むと、意見を出しやすくなる。

このように、問いかけを細かくすることで、社員が考える範囲が限定され、具体性が増すため、意見が引き出しやすくなる。

出して欲しい意見を例示する効果

2つ目のポイントは「出して欲しい意見を例示する」という手法である。

講師は、意見を出す際にどのようなレベルのものを求めているかをあらかじめ例示することで、相手がそれに基づいた意見を出しやすくなると説明している。

「たいしたことを求めているわけではない。この程度で良いんだ」というメッセージを伝えることで、相手は気軽に意見を出せるようになる。

例を示すことで、相手の視点をこちらに合わせ、求められているレベルの意見を考えやすくなる。

この「小さく問いかける」と「意見の例を示す」という2つのアプローチを組み合わせることで、相手からの意見を効果的に引き出すことができる。

具体性と具体例を通じて、社員は安心して意見を述べられる環境が整うのである。

顧客との会話における意見採用の活用方法

営業は、顧客との会話で「意見の採用」というアプローチが活用できるのではないかと考え、具体的な活用方法や留意点について尋ねた。

講師は、営業のハイパフォーマーがよく口にする「完璧な提案書を作ってはいけない」という言葉を例に挙げた。

営業担当者の多くは、完璧な提案書を作成し、お客さんに「いいね!」と言わせたいと考える。そのため、残業を重ねてまで提案書を完成させることが多い。

しかし、講師は「それではダメだ」と指摘し、むしろ粗い、下書きのような状態で顧客に提案書を持ち込むべきだと述べている。

その際、顧客に対して「このように考えているのですが、ご意見をいただけませんか?」と素直に聞くことで、意見を引き出すことができる。

例えば、「この内容では社内で通らない」と言われた場合、その具体的な部分を尋ねることで、さらに意見を引き出していく。

小さく問いかけるアプローチの実践

顧客から大きな意見が出てこなければ、「小さく聞く」アプローチを実践する。

例えば「この条件のこの部分についてはどうですか?」と、細かく絞り込んで質問することで、顧客は答えやすくなる。

「完璧な提案書を頑張って作って持って行くタイプ」であり、営業に苦手意識があると告白する。
このアプローチは、顧客の懐に入っていく方法として非常に有効である。

提案書の改善と顧客の関与

講師は、顧客から引き出した意見を反映させながら提案書を完成させていくことの重要性を強調している。

この過程で、営業担当者は優先順位の高い条件や項目にこだわらず、顧客から受け取った些細な意見もきちんと受け入れ、反映する。

これを繰り返すことで、顧客の中でその提案書に対する意識が変わり、「自分も関わった、自分が当事者である提案書」という位置付けになる。

複数社が競合する商談であれば、顧客は無意識のうちにその提案書に対して思い入れを持つようになり、その差が結果的に大きな影響を与えることがある。

業務改善の現場における意見採用の効果

講師は、自身がコンサルティングの現場でこのアプローチの効果を実感していると述べた。

特に業務改善の際、こちらが一方的に考えた改善策では成果が出にくいことが多い。

不完全な改善策を提案し、現場の人々に「どうしたらうまくいくか?」や「現場ではどのような形だと受け入れやすいか?」と尋ねることで、意見を取り入れやすくなる。

このようにして取り入れた意見は、大きな部分ではなく、運用上のちょっとした工夫レベルのものが多い。

しかし、その小さな工夫が成果を左右する重要な要素となることがある。

提案書と現場での前向きな取り組み

顧客や現場の人々が提案や改善策に対して関与すると、導入や運用時に前向きに取り組んでもらいやすくなる。

その結果、短期間で成果が出ることが多い。
提案書の完成や業務改善において、意見を採用する過程が重要であり、それが成功の鍵となる。

③具体的な成果

成果を生み出す組織の条件:具体的な成果イメージ

講師は、成果を生み出す組織の条件として最後に「口数の多さ」と「具体的な成果イメージ」を挙げた。

この条件について、他の条件と比べてやや複雑な構成であることを最初に説明し、注意深く理解するよう促した。

講師はまず、資料の中で強調すべき項目として『具体的な成果イメージ』を挙げ、「成果を出す組織の共通点は、必ず具体的な成果が設定されている」と述べた。

一方、具体的な成果が設定されていない組織でも、偶然高い成果を上げることはあるが、それは「組織の力」で達成されたとは言えないケースが多い。

コンスタントに成果を出すためには、具体的な成果の設定が必要である。

具体的な成果設定と頭の働き

具体的な成果が設定されることで、組織のメンバーの頭が働きやすくなり、結果として口数が増える。

この口数の多さこそが、組織が成果を上げる理由である。

具体的な成果があることで、全員がその達成に向けて意見を出し合い、組織全体のプロセスや方法論が改善される。

講師は、この効果を実感するためのゲームとして「三回目のゲーム」を導入した。

意見の採用と具体的な成果の違い

三橋物産が、二つ目の条件である「意見の採用」と今回の「具体的な成果設定」の違いについて質問した。
「二つ目の条件では意見の採用によって、動機付けや参画意欲などのメンタル面の効果で成果が上がる。三つ目の条件では、具体的な成果が設定されることで、メンタルではなく、方法論が改善されて成果につながる」と確認した。

講師はこれを認め、「成果が具体的に設定されると、意見が出やすくなり、その結果、意見の採用の機会が増えるので、動機付けも高まる。しかし、具体的な成果設定は、物理的な効果も生む」と説明した。

このダブルの効果によって、組織は成果を出しやすくなるのである。

具体的な成果がある時に提案が出やすい

講師は、ゲームの結果を振り返るように促し、「2回目のゲームの終了後、多くのチームが自分たちの成果に満足していた」と述べた。

その時に、「もっと早くする方法を」と抽象的に言われても、具体的な提案は出てこない。

講師は、具体的な提案が出やすいのは「あるべき姿」が明確であり、その目標に向かって現状との差を埋めることができる時だと強調し、『あるべき姿』と『現状』をホワイトボードに書き、その二つを矢印でつないだ。

このように、具体的な成果イメージを明確にすることが、組織全体の意見を引き出し、成果を達成する鍵となるのである。

ギャップが頭を働かせるメカニズム

日向講師は、成果を生み出すためには「現状とあるべき姿のギャップ」に気づくことが重要だと述べた。

そのギャップが具体的にイメージできれば、対策もイメージしやすくなり、思考が活性化される。

特にゲームの演習で、1回目のゲームで1位になったチームは、その後の作戦タイムがあまり盛り上がらない。

一方、他のチームは1位との差をギャップとして捉え、その差を埋めるための議論が盛り上がる。

特に最下位のチームは、作戦タイムで活発な議論を行い、次のゲームで上位に食い込むことがよくある。

講師は、過去最高タイムや標準タイムを示し、それが現状とのギャップを意識させ、頭を活性化させるポイントだと説明した。

新しいやり方へのチャレンジ

講師は、ギャップが大きすぎる場合、頭が過度に活性化され、新しいやり方にチャレンジすることがあるが、それがタイムを落とす原因にもなると指摘した。

実際、3回目のゲームでは多くのチームが、2回目のタイムと31秒という目標のギャップを認識し、「無理だ」と諦め、標準タイムの50秒台を目指すようになる。

これは、今のやり方を少し改善して、50秒台なら達成できそうだという現実的な妥協である。

しかし、あるチームは違ったアプローチを取った。

そのチームは全力で31秒を目指し、一切妥協せずに挑戦した結果、現状とあるべき姿のギャップが大きすぎ、全く新しいやり方を取り入れるしかなくなった。

このように、ギャップが脳を刺激し、新しい方法を模索することにつながる。

チャレンジのリスクと成果

しかし、作戦タイムが5分しかないため、新しいやり方を考え出しても、その細部を煮詰める時間が足りず、結果的に混乱してタイムを落とすことが多い。

実際、3回目のゲームでは1チームか2チームがタイムを落としたが、講師はこれが決して悪いことではないと説明した。

あらゆる改善策を試しても目標を達成できない場合、新しいやり方にチャレンジし、たとえ成果を一時的に落としてでもイノベーションを起こすことが求められる。

しかし、多くの企業では成果を落とすことを嫌がり、現状維持に固執してしまう。

今回の班は、そのリスクを知らなかったために果敢にチャレンジしたかもしれないが、現実のビジネスではリスクを理解した上で挑戦しなければ、真の競争力を持つ組織は作り上げられない。

新しいやり方を取り入れる際の注意点

講師は、まったく新しいやり方を取り入れる際に、必ず成果が一度落ちることを指摘した。

これは、慣れていなかったり、細部でのミスが起こりやすいためである。

そのため、一発勝負や「これが最後」という状況で、新しいやり方にガラッと変えるのは効果が期待できない。

新しいやり方の評価には繰り返しが必要

また、比較的余裕がある場合でも、新しいやり方を試す際に注意すべき点がある。

1回目で成果が出ないからといって、すぐにその方法を捨てて別のやり方に変えるのは得策ではない。

新しいやり方が以前のやり方よりも効果的かどうかを判断するためには、何度か繰り返し、慣れや改善を経た後でないと、その真価を評価できないからである。

新しいやり方を1回だけ試した際には、慣れていないため非効率に感じることが多いが、その感覚に惑わされず、繰り返し実施することが大切である。

組織変更の効果と評価のタイミング

質問者が指摘したように、頻繁に組織変更が行われる会社において、その効果を判断する際は、新しい組織体制を一定期間運用し、改善を繰り返してから評価することが重要である。

講師は「組織変更は、役割分担や業務プロセスの切れ目が変わるため、業務に大きな影響を与える」と説明した。

そのため、組織を変更した直後は慣れていないため、違和感や不満が出やすく、現場からの批判も増える。

しかし、その場合でも新しい体制を2~3年回しながら改善点を見つけ、改善を重ねた上で、どちらの体制が効果的かを客観的に評価するべきだと述べている。

組織の形態と成果の関連性

講師は、組織の形態自体は成果に大きな影響を与えないことが多いと指摘する。

例として、カードゲームの担当制においても、どのやり方(マーク別、数字別、七並べ方式)でも30秒台の結果を出せることを挙げた。

組織も同様に、機能別、事業別、地域別のどの形態であっても、事業成果が劇的に変わることは少ないという。

重要なのは、組織の形そのものではなく、その運用過程でどれだけ細かい改善や工夫を積み重ねるかが、成果を左右する要因である。

組織論に対する講師の見解

講師は、自身の経験を踏まえて、「組織の形態そのものは成果に大きなインパクトを与えない」という見解を示した。

ただし、これは講師自身の経験に基づいた意見であり、絶対的な正解ではないことも強調している。

そのため、組織の形態に期待を寄せる参加者には、その期待を捨てる必要はないとしつつも、講師自身は特に決定的な「正解」を持ち合わせていないと述べ、理解を求めた。

『1・組織の形状よりも、組織間のコミュニケーションのデザイン(双方向・口数)』

講師は、成果を生み出す組織の条件として、「組織の形状よりも、組織間のコミュニケーションのデザイン」の方がインパクトが大きいと述べた。

組織をどのように分けても、必ず業務プロセスは組織の壁で分断される。

そのため、分かれた組織同士をどのようなコミュニケーションでつなぐかが、成果に大きく影響を与える。

特に、双方向のコミュニケーションを行い、意見を取り入れながら互いの参画意欲を高めることが重要である。

これは、仕組みの問題ではなく、人間の問題であり、特に組織の長や役職者がこうした考え方で動くかどうかが、成果を左右する。

『2・組織の形状よりも、役職者の視点レベルと適性(意見出しとその採用)』

組織を成功に導くためには、役職者が「自分の組織の利害」だけでなく、組織全体の視点で動くことが求められる。

役職者が一方的に通達を出し、相手が動かないと批判するのではなく、相手の声を引き出し、相手の理解を確認しながら参画意識を持たせる必要がある。

こうした動きができる役職者がいれば、どのような組織形態でもうまく機能する。

組織間コミュニケーションの改善事例

講師は、工事会社で組織間の連携がうまくいかないケースの解決策を紹介した。

この会社では、営業部が工事を受託し、工事業務部が工程調整を行い、その後、設計部、土木部、建設部がそれぞれの業務を行うという流れだったが、個別調整が多く、全体の優先順位が曖昧だったため、納期通りに仕上がらないことが多かった。

この問題に対して、講師は組織の形状を変えずに、毎週月曜日に全ての部長が集まり、全案件を共有してランク分けし、優先順位を決定するというコミュニケーションの仕組みを提案した。

この方法によって、部門間の全体像が共有され、リソースの適切な振り分けが行えるようになり、マネジメントが機能した。

『3・組織の形状よりも、成果の設定と測定(具体的な成果と現状とのギャップ)』

具体的な成果指標の設定による組織運営の改善

講師は、組織の運営を効果的に行うために「具体的な成果指標を設定すること」の重要性を強調した。

例えば、工事会社の事例では「顧客の希望納期3日前完了率」を指標として設定し、組織間の調整会議を定例化した。

この指標により、各部門がどのくらいその目標を達成しているかを常に測定し、部長たちは進捗を確認できるようにした。

また、進捗確認の担当者を一人設け、毎日の終了時に工事の進捗を一覧にまとめ、それを月曜朝の会議で使用した。

基準の不一致によるコミュニケーションロスの防止

会議や業務におけるコミュニケーションがもつれる原因の一つは「基準の不一致」である。

一人ひとりが異なる成果をイメージして会話をすれば、利害が衝突しやすくなる。

例えば、コスト重視の人と売上重視の人が会話をすると、それぞれの提案が互いに否定されがちになる。

そのため、組織内の口数を増やす際には、最初に「どの指標に向かって意見を出し合うか」を一致させることが重要である。

複数の指標がある場合は、その優先順位を明確にし、基準値をしっかり設定することが求められる。

この事例では、最優先の指標が「3日前完了率」、その次に「コストは月単位で予算内に収める」、そして「月間残業時間数は一人当たり15時間以内」という基準が決められた。

こうして、各部署がこれらの指標をもとにアイデアを出し合い、個別案件のスケジュールや段取りが決められていく。

会議の所要時間と目的の明確化

会議の所要時間について、講師は「割り切りが大切」であると述べた。

この事例では、工事の残工数と残日数の差がマイナスになった案件のみが議題に挙げられた。

初めは多くの案件がマイナスだったため、会議に時間がかかったが、徐々に改善され、1ヶ月後には会議の所要時間が30分程度に安定した。

時には議題が2件しかなく、10分で終わることもあった。

その際、会議を長引かせないためにも、「目的外の議題を話し合おうとする傾向」を排除することが重要である。

せっかく集まったからといって、ついでに他の案件も話し合おうとすると、会議の目的がぶれて無駄に長くなる。

この場合は、「それは別途会議を設定して行うべき」と割り切ることが大切である。

成果を生み出す組織の条件と今後の適用

講師は、組織の形状が成果に影響を与えるかもしれないが、それをコントロールする権限を持つ人は少ないと指摘した。

そのため、「成果を生み出す組織の条件」として、組織間のコミュニケーションを増やすアプローチを参考にすることで、どのような組織形態でも成果を上げられるようにすることが可能であると述べた。

このアプローチにより、今後どんな組織に変わっても、同様に成果を出せる状態を目指すことができる。


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