『退院七日目』
尻がピリッとした。ひょっとして割れたのか?割れた尻のさらに奥で割れた
のか。空気の乾燥はかなりひどい。けれど、私の肌は抗がん剤の副作用から立ち直りつつあり、ターンオーバーが順調に進んでいる、はず。
しかし、爪と尻が取り残されている。尻がピリついて、爪が柔い。爪はメンテナンスを繰り返していても、柔く、割れやすく、とげとげしい。
入院中。心療内科から処方されていた薬は休止していた。わが家でも休薬をつづけることができている。私はこのさい、休薬から断薬に歩を進めてみたい。帰宅当初、私の頭の中からひっきりなしに救急車のサイレン音が鳴っていた。入院中に私の頭のなかにこびりついてしまったピーポー音。その音も凪いできた。薬を飲めば、その音は止む。けれど、飲まなくとも、なんとかやっていけそう。すこし悩む。休薬と断薬の間に、ながいながい休~薬をもうけようとおもう。
爪の件もあり、私はマグネシウムが足りていないのではないか。との疑念もわいた。過去の血液検査のデータを見る限り基準を外れてはいない。数値は下限ぎりぎりに収まってはいる。すこし、足りないのかもしれない。マグネシウム不足と『不安感』の関係は、ある。そう、認められている。というわけで、マグネシウムのサプリメントを摂るようにした。
と、いま、まさに、私の頭のなかから、豆腐屋の、行商の、あの、まのぬけたような、ぴぃ~ふわぁ~んが鳴っている。やや、これはもしかして。窓を開けると豆腐屋の軽バンが交差点でじっとしていた。これはリアルだったかぁっ!。わが家の年老いた父が駆ける。たまに転ぶ者なので不安だ。私は走れない、それもリアル。食べたいのもリアル。
父は無事帰ってきた。
本日、夕食が豆腐三昧になることが確定した。