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『罪と罰と嘘』
ながい時間をかけて罪と罰と嘘がいれかわりたちかわっていた。また、罪と罰と嘘が陰のようにあの者らを包囲してはなれないでいる。
かわいそうとも思わない。あたりまえだとも思わない。
私は同せだい人としてあの者らを見てきた。応援もしなければ、脚をひっぱることもしない。誇ってもいない。むしろすこしばかり気恥ずかしい。ただ茫漠とあの者らを目の隅で見るともなく、けれどずっと見ていた。そんなかんじがしている。
あの者らとはスマップのことをさす。
私が二十歳くらいからこちら、日本中がスマップの匂いのついた空気に包み込まれていた。━━世紀の謝罪会見までは。そう、あの、例の、不気味な、ハラスメントでぶりぶりの、テレビ界の終わりの始まりのような、絶句するような、惨めを強いるような、さらしくび、残酷で、醜悪な、悪寒のはしる、むなしい、あの謝罪会見まではスマップの匂いに日本はすくわれていた。
スマップは罰を与えられた。日本中が見つめるなか、腰を折って『よくわからない謝罪』をしていた。フジテレビはあのときも『よくわからない罪と罰』を恣意的に乱れて悪用していた。日本列島からいっせいに『?』がもわりと立ち上るのを私は宙空で観測していた(嘘)。なぜ、それが罪になるのかふしぎだった。私はあのとき『宙空の観測人』という生業で暮らしていた(嘘)。
よくわからない謝罪なんていらない。日本中がそう思っていた。それは、宙空の観測人(嘘)たる私もどうようだった。『謝罪雲』が立ち上がるのはめずらしいことではない。大きな謝罪会見の後には、ぱらぱら立ち上がるのを観測している。1945年8月15日は凄かったとも聞く(嘘)。空いちめんの謝罪雲にパイセンの『宙空の観測人』も大慌てだったと聞いている。でも『?雲』はなかなかあがらない。それもあんなにいっぱい。
『?雲』の後処理は大変だった。放っておくと地球の回転軸機に『?』が目詰まりをおこす。すると『?』が回転軸に絡みついてぐいぐいと回転の邪魔をしてしまう。やがて摩擦係数が高まり熱がこもる。一刻もはやく熱を逃がさなくてはいけない。それをいち早く見つけて対処するのが『宙空の観測人』たる私の主な仕事で、その、放熱運動が地球温暖化の原因でもある(盛大な嘘)。世界中で起こりうる異常気象の発端は迷い子のようにふらつくそのような疑問形の祝祭でもあった。あるいは宙空へむかう『?』の葬送か。
謝罪会見の後、3人のメンバーは事務所を退所した。3人メンバーの番組は局をこえて次々に終わっていった。それはもうだれがみても一目瞭然で、全テレビ局をあげて干されていた。いちばんわかりやすいかたちの教科書のような『干す』という『罰』だった。これも、一般人には『よくわからない罰』として記憶された。テレビ局が総力をあげて3人メンバーをいじめていた。また、宙空の観測人たる私の仕事も増えた(嘘)。
はじまりのはじまりはあの者らではない。
みんな、待っていた。すべての関係者が、待っていた。罪があるのはみんなしっていた。でも、みんな罰を与えるのを『いい加減にして』待っていた。
その醜聞はかなり古い。私も電車の中刷り、SNSなどでチラホラ目にすることもあった。かなり深刻で、世界中の芸能史に比類ない悪事、悪い手本として載るような事案が、ずっと、見て見ないふりの世界でまん延していた。「しらないわけがない」、みんながそう思っていた。加害者はひとりで、被害者はじだいをこえてあふれていた。加害者には仲間がおおく、被害者はずっとたえしのんで待っていた。すべてがあかるみになったとき世論はじだいをこえて沸騰した。そのとき、加害者はもういなかった。みんなが手をつないで仕組んだ『待つ』というシステムだったのだろう。テレビ局はたった今気づいたふりをしていた。頭をかいて「てへぺろ」で済まそうとした。とっても下手だった。自局でつくった映画をあたかも傑作であるかのように喧伝してアナウンサーに語らせる手口のままに下手糞だった。なにもしない捜査線だった。見て見ないふりの捜査線だった。都合のいいだけの『操作作戦』といっていい。それがまかり通っていた。
そんなじだいのうねりのなかで、罪と罰と嘘の種がまかれてないまぜになっている。どこでどう芽吹くのかはだれにもわからない。ひょんなことから花が咲くことだってある。毒の花かもしれない。華奢で青白い顔の踊るように逃げる花かもしれない。個々人が暴走するじだいのなかでシステムが知らん顔して報道しない自由を謳歌しているのを目にするのはさみしい。おかしな事案、おかしな者を見つけたら、誰であっても報道しなくてはならない。「ん?」と思ったら走り出すのが報道だろうに。追い込まれて自ら命を絶つ者が多すぎる。傷ついた自らの社員に手を差し伸べることもできないテレビ局。止まない隠蔽体質。デマゴーキで踊る大衆。ぐるぐるに長い物に巻かれて身動きできなくなってでっぷり肥えた体躯のシステムが煮崩れていくさまを目に焼き付けたい。いち『宙空の観測人』として(嘘)。
宙空はそらと読む。そう、富野由悠季にならった。私せだいの者らは、皆そう読む。たぶんスマップメンバーも、そう読む。めぐりあい宙空。
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