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W-B とある清掃員の日記/14
カランコロンカラン。
僕は普段“メイドカフェ”なんかには縁はない生活をしている。
店内はピンク色。
メイド服に身を包んだ女性たちが
「おかえりなさいませ、ご主人様。」と愛想笑いを見せる。
僕はゾゾッと寒気を感じた。
メイドの一人が僕を個室に案内した。
個室の中もまたピンク。
部屋には丸テーブルが置かれており、僕と向かい合う形で依頼人の男が座っていた。
「二人だけにさせてくれ。」
依頼人はメイドを個室から追い出した。
「アンタは変な趣味を持っていますね。」
僕は苦笑しながら向かいの椅子に腰を下ろした。そして片手で机の下を触った。
盗聴器は無い。
「さて。君をここに呼んだのは、メールに書いてある通り緊急事態だからだ。」
「一旦何事ですか?」
「今朝社員の一人が昏睡状態で見つかった。知っているかね?」
「社内メールで聞きました。」
「君がやったわけでは無いのか?」
依頼人は探るような目つきで僕を見た。
「いいえ!決して僕はそんな手荒なことはしませんし、防音室がある事すら知りませんでした。」
僕は必死に訴えた。
「いや。別に確認の為にやっただけだ。
あの防音室は我々マッシュルームが設計した盗聴室なのだ。機密情報を探るためのね。」
「え..?つまり貴方がその社員を昏睡状態にしたんですか?」
「いや我々は何もやっていない。しかしその倒れた社員が防音室に入った所から録音がプッツリ途切れているのだ。」
彼は深刻そうな目をした。
「つまり可能性としては外部から何者かが録音機を操作して、録画を消したとしか考えられないのだ。」
「もしかして.....その外部からの者が社員を昏睡状態にさせたと思っているんですか?」
「そうとしか考えられん。第一にあの密閉された防音室に押し入る方法としたらドアを開けるか、壁を電鋸で切断するしかない。もしかしたら外部からの者は....。」
「ワープを使ったと?」
「まあその可能性が高い。しかし君をここに呼んだのはもっと悪い知らせがあるからだ。今のは序の口に過ぎない。」