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立ち仕事へのいす設置に関する要請行動ー「座ってちゃだめですか」の声を厚労省にー

 「座る権利」の具体化を求めて
 学生ユニオンは5月24日に「#座ってちゃだめですか」プロジェクトとして厚労省に対して、立ち仕事へのいす設置を求める厚労省要請を行いました。
厚労省の定める労働安全衛生規則の第615条「立業のためのいす」では「事業者は、持続的立業に従事する労働者が就業中しばしばすわることのできる機会のあるときは、当該労働者が利用することのできるいすを備えなければならない」と定められています。
これは罰則を伴う規定であり、その意味では労働者の「座る権利」は既に法的には保障されていると言えます。しかしながら、これまでこの規定は広く周知されてきませんでした。また、具体的にどのような職種が対象範囲となるのかが明記されていないこともあり、「座る権利」は、実体としては十分に保障されていません。
 そこで、学生ユニオンは同規定の対象職種を明示する事例集を作成し、その実効性を高めるとともに、改めて同規定を周知徹底することを要請しました。
 
「座ってちゃだめですか」当事者からの訴え
 当日は日常的に立ち仕事をしている当事者3名が参加し、現場の声を届けました。当事者からは「実際に働いてみると想像していた以上につらい。立ち仕事を理由に仕事を辞める人も少なくない」、「忙しいときはほとんど座る間もなく一日立ちっぱなしになってしまう。夏場は脱水気味になることもある」と、立ち仕事の過酷さが訴えられました。
 学生ユニオンが行ったアンケート調査でも、長時間の立ち仕事を続けた結果、足腰を痛めてしまったという声が多く寄せられました。立ち仕事によって怪我をしてしまい仕事を辞めざるを得ず、またその怪我が後の職業選択にも大きく影響しているという回答もありました。立ち仕事の過酷さは決して軽視できないことを痛感させられます。
「過酷な立ち仕事によって帰ってから何もできなくなってしまうことが多い。人生は仕事だけではない。大切なのは生活するための『余力』を家まで持って帰ることではないか。」と、労働者のウェルビーイングの観点からの訴えもありました。「座ってちゃだめですか」と訴えることは、労働者の全てを労働につぎ込ませる使用者への抵抗でもあるのです。使用者に生活の余力を奪わせないための運動です。
安全に仕事をするため、人間らしい生活を送るため、いすの設置は切実な要求です。
 
厚労省がヒアリングの実施へ
 厚労省の担当者は立ち仕事の過酷さや労働者への身体的負担について「重く受け止めている」として、事例集の作成はかえって規定の対象範囲を限定することになると慎重な姿勢を示したものの、まずは立ち仕事へのいす設置に関して、関係する団体へのヒアリングなどの調査を行うと回答しました。
今後、調査をふまえて厚労省が「座る権利」をどのように保障していくのか、動向を注視していく必要がありますが、調査を行うという言葉を引き出すことができたのは大きな成果です。
 後日、宮本徹衆議院議員が厚生労働委員会でこの問題を取り上げた際には、厚生労働大臣からも、関係団体へのヒアリングを実施し、事例集の作成も検討するということが述べられました。また、大臣は、労働安全衛生規則第615条「立業のためのいす」は業務中に座って休むことができるよういすの設置を義務づけるという趣旨であるとしつつも、座りながら働くことができるようにすることも視野に入れ、調査をしていくと述べました。

可視化されてきた社会的合意
 学生ユニオンは、個別企業での交渉事項だった立ち仕事の問題を社会問題、制度問題として発信してきました。活発な報道も追い風となって、立ち仕事へのいす設置に対する世論の関心が非常に高まっており、企業の側にも明確な動きが出てきました。
 改めて可視化されてきたのは、客側も店員が座って接客することに抵抗がなく、むしろ必要もないのに労働者を立たせておくことに疑問を抱く人が多いということです。クレームにつながるということが、使用者がいす設置を拒否する大きな理由のひとつであることをふまえれば、社会的にもいす設置実現への大きな流れが生まれていると言えます。
 世論も味方につけながら、労働者の「座ってちゃだめですか」の声に使用者や国が応えるよう働きかけを行っていきます。


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