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ただいまって言ってフレキシブルに学びを体感できる場所、それが私たちのクラスルーム。〜森美術館「ワールド・クラスルーム展」の内覧会に行ってきて再確認したこと


ほんまここに育ててもらいました。


気がついたら桜の季節が終わっていた。9年間の東南アジア生活を終えたので思う存分味わいたかったが、その時にマレーシアとシンガポールに行く用事があったのでどピークは思い切り外してしまった。でも結構味わえたので、嬉しかった。

それにしても帰国して9ヶ月目だけど、なんか帰ってきた感がない。新しい場所に馴染んだなって感じしかない。かつて住んでいた家も賃貸に出しているのでまだ帰れない。(そして現在住んでる家が居心地いいので帰りたい気持ちがない)。そう、日本を離れて9年も経ってしまうと、帰ってきた感を感じられる場所は本当に限られてしまうものだ。


私たちにとって数少ない「帰ってきた感を感じられる場所」。それは美術館である。私たちの場合は「森美術館」は帰ってきた感を深く感じることができる美術館の1つだ。


私がまだ1歳にも満たない息子を連れて森美術館の展示を見たのはもう16年以上前になる。当時行っていた展覧会は「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」。なぜ行こうとしたか覚えていない。当時、「1歳以下の赤子を連れて美術館に行くなんて非常識だ!」と言われていたような時代。人が少ない時間帯を選んで出かけた記憶は残っている。そしてなぜか、ちゃんと観れた。大きな映像作品も多かったのに、当時の息子は私に抱っこ紐で抱かれた状態でじっと一緒に「見ていた」。私自身もとても不思議だった。この子。こういうの平気なんだ。

当時まだ学生さんだった森美術館のエディケーション担当の方がその姿があまりに印象的だったらしく、私たちのことを覚えていた。そのくらい、美術館に赤子がいることが珍しい時代だった。

赤子連れて行けるんだ。私は味をしめて森美術館に通うようになった。なぜ森美術館だったのかというと、当時住んでいた大田区の「家から行きやすかった」から。そして「外国人観光客が多かったので子供連れでも嫌な顔をされることが少なかった」から。当時、日本の美術館では「美術館に子供を連れて行く」は美術館側も想定してなったと思う。ものすごく目立ったし、注意されることもあった。声や仕草を注意されたこともあったけど、正直そこにいるそのものを注意されたこともあった。当時の風潮からしたら「(Barのような)大人の場所に赤子を連れてきたような感じ」だったから。私は注意されないように工夫を重ねた。だって観たかったし、子供は成長してしまうから。

森美術館は私立美術館だったから国立、公立自由も多かった気がする。そして立地上、外国の方が訪れることが多かった。そして「展望台と合同チケットがあった」。このような条件が合わさって結果的に「「展覧会もやってるから来たよ」的な人が多かった」。そういう場では子供は受け入れてもらいやすかったのだ。そして森美術館は「おやこでアート」というベビーカーや抱っこ紐の子供と一緒に鑑賞するイベントも早くから実施されていて、子供連れでも行きやすい空気があった。

幼子を連れてママ友と公園で遊ぶということが全くもってできなかった私にとって美術館は本当に逃げ場だった。(その他にはサッカースクールに救われていた。なので美術館に出向く際にサッカーの格好をよくしてたので余計に目立っていた😅)。
赤子の際は平日の午後の美術館で歩いたり、知らない人と一緒に過ごしたり、チラシを見ながら展示を見たり。
幼子の際は展示を見て話し合ったり、出口横のカフェで美味しいものを食べることを楽しみにしたり。

どんな格好で行っても、(営業時間内だけど)どんな時間帯に行っても「知りたい」を受け入れてくれる場所だった。

そして東南アジアへの転居。その間にも何度も森美術館には足を運んだ。その度にいつも暖かく迎えて頂いた。息子にとって、そして保護者である私にとって森美術館はまさに「人生のクラスルーム」だった。


そんな森美術館の20周年記念記念展覧会「ワールドクラスルーム」が4月19日から開催される。本日は内覧会に参加してきた。


実はこの展覧会には息子がいくつか関わらせて頂いている。ラーニングプログラムに参加したメンバーがインタビューを受けるという企画だ。今回、森美術館の「ワールドクラスルーム」に関わってほしいとラーニングチームからメッセージを受け取った時、とても嬉しかった。ぜひ恩返しをしてほしいと私からも息子にお願いした。ここでぜひ明記しておきたいのは、息子が快諾してくれたのは親の私からの申し出に応じただけでなく、16年間の年月においてずっと息子の成長を見守ってくれた森美術館のラーニング担当、白木さんの思いに応えたいと息子自身が感じていたからだ。

私自身もこの「森美術館」という場所そのものにどれだけ救って頂いたかっか。そこを語り始めたら5時間くらい時間が欲しい。ただ、今ここで声を大にしていいたいのは「美術館はあなたが自由に出入りしていいクラスルームになれる」ということ。これは博物館、図書館にも言えることだけど、この○○館がもっとあなたに開かれている場所であることを知ってほしい。
遠慮することはない。チケットを買えば入っていいのだから。


今回この「ワールドクラスルーム」は森美術館開館20周年記念展覧会だそうだ。息子は現在17歳なので、3歳お兄さんである。
1時間ほどのインタビューを素敵に編集して頂いた。編集した映像を見た時思わずつかみの写真に本人のけぞってました。そうです、この人は作品のモノマネを昔も今もずーっとやってます😅。村上隆さんとのワークショップ参加の写真が導入されてる。



このワークショップには実は泣けるエピソードがある。


この村上隆さんのワークショップは森美術館から直々にお誘いを頂いた。当時シンガポールに住んでいた私たちだったけど、とても素敵なお誘いだったので一時帰国日程を変えて参加した。実はその数ヶ月前から私の父が入院していた。帰国時にお見舞いが出来て話もできた。しかし次月父は容態が急変して亡くなった。そう、この時にお誘いしてもらえなければ、私は父ときちんと時間を持てなかった。
そして父の葬儀が終わった翌日に行った横浜美術館の内覧会。ここで森美術館の白木さんにお会いして思わず抱擁。あの時お誘いしてもらえなければ、私は父を、息子は祖父を穏やかな気持ち見送れなかった。そしてこの時に横浜美術館に呼んで頂いたことで本当に元気を頂けた。
本当に、本当にありがとうございます。


私たちにとっての森美術館は「親も子もここで学びを体感した場所である「クラスルーム」」という想いが伝わったら嬉しい。


でも、そんな何回も美術館行けないっていう人もいらっしゃると思う。その場合はぜひその美術館や博物館の会員制度を利用してほしい。美術館や博物館にはメンバーシップというものがある。これは「会員になれば何回でも展覧会を見ることができる」というもの。
森美術館も「MAMCフレンド」というメンバーシップがある。(5月7日までキャンペーン中だそうです)。


このように自由に出入りできる環境が近づけば美術館に行くという行為がフレキシブルになる。今、フレキシブルに出入りするという行為が本当に難しくなっている。それはコロナ禍も大きな影響が及ぼしていると思う。そしてフレキシブルに人が出入りして、人をどう感じるか、という感覚の重要性が軽視されていることに危機感が著しく欠落している状況に強い危機感を感じる。

そして美術館や博物館側もすごくそのようなフレキシブルな学びの場を考えている。なので、ぜひ近くの美術館や博物館、コンサートホールなどの施設の掲示板などを見てほしい。規模は様々だけど学びの場があるはずだから。


今回、同時に私からラーニングチームにお願いしたことがあった。それは「英語でのやり取りでお手伝いできることがあったらぜひ参加させてほしい」。なぜなら私達自身はシンガポールとマレーシアに滞在中、美術館やギャラリーで沢山のローカルの方にお声掛けを頂いた。彼らは私たちがわかる言葉を使い、私たちと多くのコミュニケーショをとってくれた。そしてその情報からたくさんの素晴らしい体験を頂いた。

なので私も日本の美術に関してアートラバー目線での英語での発信をもっと増やしたい。息子も自分ができることをしたいと考えてる。頑張ります。英語は基本イスタグラムです。