ジャン=バティスト=アントワーヌ・フォルクレの「クラヴサン曲集 5つの組曲」
本稿は2020年1月26日に神戸LA FLUTE ENCHANTEEにて開催した中田聖子チェンバロリサイタル「ジャン=バティスト=アントワーヌ・フォルクレ『クラヴサン曲集 5つの組曲』」のためのプログラムノートである。
・プログラム
ジャン=バティスト=アントワーヌ ・フォルクレ (1699-1782)
「クラヴサン曲集 5つの組曲」
Jean-Baptiste-Antoine Forqueray (1699 Paris - 1782 Paris)
“Pièces de Clavecin” 5 Suites
Pièces de viole, Composèes par Mr. Forqueray ‘Le Pere’, Mises en Pièces de Clavecin par Mr. Forqueray ‘Le Fils’, Paris, 1747
組曲 第1番 Suite 1
ラボルド ( アルマンド ) / フォルクレ / コタン / ベルモン / ポルトガルの女 / クープラン
La Laborde (Allemande) / La Forqueray / La Cottin / La Bellmont / La Portugaise / La Couperin
組曲 第2番 Suite 2
ブロン / マンドリン / デュ・ブリュイル (ルーレ) / ルクレール / ビュイソン (シャコンヌ)
La Bouron / La Mandoline / La du Breüil (Loure) / La Leclair / La Buisson (Chaconne)
組曲 第3番 Suite 3
フェラン / 摂政 / トロンシャン / アングラーヴェ / ヴォセル / エイノー / モランジあるいはプリゼー (シャコンヌ)
La Ferrand / La Regente / La Tronchin / La Angrave / La du Vaucel / La Eynaud / La Morangis ou Plissay (Chaconne)
組曲 第4番 Suite 4
マレッラ / クレマン / ドーボンヌ / ブノンヴィル / サンシー / パッシーの鐘〜ラトゥール
La Marella / La Clément / La D’aubonne / La Bournonville / La Sainscy / Le Carillon de Passy ~ La Latour
組曲 第5番 Suite 5
ラモー / ギニョン / レオン (サラバンド) / ボワゾン / モンティニ / シルヴァ / ジュピター
La Rameau / La Guignon / La Léon (Sarabande ) / La Boisson / La Montigni / La Sylva / Jupiter
「フォルクレのクラヴサン組曲の成立について」 中田 聖子
本日はご来場くださりありがとうございます。第16回目となる本公演ではJ.B.A.フォルクレの5つのクラヴサン組曲を演奏することにいたしました。
フォルクレは、ヴィオル(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手を輩出したフランスの音楽家一族の名前として知られています。史実に残る最初のフォルクレ氏、アントワーヌ・フォルクレ Antoine Forqueray [父le père] (1671あるいは72パリ - 1745マント)と、彼とクラヴサン(チェンバロ)奏者でもあった妻アンリエットとの間に出来た息子のジャン=バティスト = アントワーヌ・フォルクレ Jean-Baptist-Antoine Forqueray [息子le fils] (1699パリ - 1782パリ)、このフォルクレ親子の才能の結実したものが、本日演奏する作品です。
父のアントワーヌは、幼い頃にルイ14世が愛した楽器ヴィオルを御前演奏する栄誉を得、のちに国王のシャンブル付き楽団の常任奏者に任命された人でした。息子のジャン=バティストも並外れた才能の持ち主で、その才能に嫉妬した父によって20歳の頃には牢獄に閉じ込められ、フランスから追放される危機に陥った話はよく知られています。残酷な少年時代を過ごしたにも関わらず、息子のジャン=バティストは1747年に出版権を得て、父アントワーヌの作とする29曲のヴィオル作品に基づく5つの組曲を出版しました。即ち、アントワーヌ・フォルクレ「通奏低音付きヴィオル曲集 Pièces de viole avec la basse continue」です。この曲集の序文を読みますと、
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関西を拠点に演奏活動を行なっているチェンバリストhttps://www.klavi.com