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【政経東北】「安泰」は「停滞」―巻頭言2021.11
10月31日投開票の衆院選(定数465)は、締め切りの関係で、この稿執筆時点で結果は分かっていないが、思うところを述べていきたい。
テレビ・新聞の分析によると、自民党は公示前の276議席から減り、単独で過半数(233議席)を確保できるかどうかという情勢。公明党は、公示前の29議席を維持しそうで、連立での過半数はほぼ確実とされている。各局・紙によって多少予想値に違いはあるが、衆院のすべての常任委員長ポストを取り、各常任委員会の過半数を確保することができる絶対安定多数(261議席)に届くかどうかが焦点になっている。
いまの野党に政権運営能力があるとは思えない。野党第一党である立憲民主党の枝野幸男代表をはじめ、2009年8月の衆院選後に誕生した民主党政権を担った面々への期待感は薄い。民主党政権の何が問題だったのか、そのうえで今後政権を取ったらどうするかを、明確に国民に示すことから始めなければならないが、それがない。
とすると、自公政権に委ねるしかない、といった選択になるのではないか。現状、それもやむを得ないように思う。
2012年12月の衆院選では民主党政権への失望から、自民党への揺り戻しが発生。改選前の118議席から294議席と大勝した。逆に民主党は230議席から57議席と大きく減らし、党そのものが解体された。
その後、安倍晋三氏が総理大臣に就いたが、政権が長期化する中で、森友・加計学園問題や桜を見る会問題など、「政治の私物化」としかいいようがない問題が起きた。
背景には「安泰」がある。「下手なことをすれば引きずり降ろされる」といった自覚があれば、そんなことは起きないが、野党のだらしなさ、民主党政権失敗の反動から「下手なことをしても引きずり降ろされない」状況だったことが、そうした問題を引き起こしたのだ。自民党内に安倍氏を脅かす存在がいなかったことも問題だった。
これは地方行政にも同じことが言える。首長を手放しで支持する議員が過半数を占めていると緊張感がなくなる。結果、政治・行政は何となくで回ってしまい、失政も出てきてしまう。
与野党が拮抗し、失敗したら取って代わられるといった状況こそが、緊張感を生み出し、最も政治・行政が力を発揮できる環境になる。今回は無理でも近くそうした環境になることを願う。
(末永)
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