【横田一】小池百合子氏に選挙中の戸別訪問疑惑|政界ウォッチ32
次期総選挙の前哨戦とも位置付けられた「東京都知事選(7月7日投開票)」で小池百合子知事が3選を果たしたものの、失職の可能性が取りざたされている。元東京地検特捜部検事で小池氏の“盟友”でもあった若狭勝弁護士が7月21日、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」で「公務員の地位利用に伴う選挙活動」で小池氏が刑事告発されていることを紹介。知事の立場を利用して都内の首長に出馬要請文を書かせた疑惑が浮上、特捜部の捜査で起訴・失職の可能性があると指摘したのだ。
これに加えて、選挙中に戸別訪問疑惑も浮上していた。6月22日に八丈島で初街宣を行った際、公明党山口那津男代表のポスターが貼られている民家を小池氏は訪問、約30分も滞在したのだ。
この時、追いかけ取材をしていた私は民家の前で待機、自らの政策ビラを手に出てきた小池氏に声掛け質問をした。
――知事、公明党、学会関係者との面談だったのですか。選挙中の戸別訪問、禁止ではないか。どういうお話をしたのか。公明党関係者の家ですよね、これ。(公明党の)ポスターが貼ってあるが。選挙対策、作戦を練ったのか。選挙中の戸別訪問、禁止ではないか。
小池氏 よいしょ(と言って質問に答えないまま車に乗り込む)
無回答だったので、小池氏の都知事選広報担当である尾島紘平都議(都民ファ幹事長)に同じ質問をぶつけると、「トイレ休憩」という反論が返ってきた。7月3日に小池氏が三軒茶屋での街宣を終えた後のことだが、「戸別訪問ではないのか」との問いかけに以下のように答えた。
「違います。僕だって、遊説していてトイレ借りることはありますよ。八丈島はそのへん、公衆トイレもないし」
しかし民家は定期船が行き交う底土港の近くで、周辺には宿泊施設やガソリンスタンドもある。このことを指摘しても尾島氏は「緊急だったかも知れない」「横田さんだってトイレを借りることはあるでしょう」と逆質問をしてきた。見え透いた嘘をついているとしか思えなかったので「30分もトイレ休憩は長いのではないか」と突っ込んだが、それでも「それは人それぞれだと思います。トイレの長さなんて」と反論、選挙違反を認めようとしなかったのだ。
そこで私は、再び民家を訪ねた時のやりとりを紹介。「旦那さんが出てきて『(小池知事は)家内と会っていた』と(答えた)。『トイレ休憩』と言っていない」と指摘したが、それでも尾島氏は「トイレ借りたのでしょう」と言い張った。
私の目には「小池氏は白昼堂々と選挙違反をして開き直っている」「小池氏陣営は平然と噓をつく」としか見えなかった。そこで、6月24日配信のネット番組「横田一の現場直撃」で八丈島初街宣ルポを紹介。戸別訪問の様子についてはショート動画の形でも発信すると、140万人を超える視聴数を記録したが、それでも小池氏は圧勝をした。
しかし、この戸別訪問疑惑が再燃する可能性が出てきた。投開票から9日後の7月16日、重松佳幸江東区議が辞職。去年12月の江東区長選で、戸別訪問で投票を呼びかけたとして公職選挙法違反の疑いで書類送検されたことが理由だったが、翌17日に上田令子都議はX(旧ツイッター)で以下のように発信、先の八丈島戸別訪問動画も添付したのだ。
「小池知事の元部下大久保ともか江東区長選挙期間中、戸別訪問投票依頼疑いで書類送検されたことから自民江東区議が昨日辞職表明 親分の悪しき慣習を見習い、区議にやらせたのか? 今一度小池百合子戸別訪問事案も再検証すべきです」
江東区長選だけに止まらず、小池氏の戸別訪問疑惑にまで捜査が進展していくのか否かが注目される。
よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。
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