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【福島県・新型コロナ特集】調査会社「アンケート」を読み解く

有効支援なければ倒産続出の懸念

 

 新型コロナウイルスの爆発的な流行を受け、感染防止のため、さまざまな部分で経済活動が制約・制限を受けている。そうした制約・制限は、県内企業にどれほどの影響を及ぼしているのか。民間信用調査会社2社が行ったアンケート調査結果を紹介しつつ、県内企業が置かれている状況を整理する。
 
 帝国データバンク発行の『帝国ニュース』(3月26日号)、東京商工リサーチ発行の『TSR情報』(3月30日号)に、新型コロナウイルスを受けての企業調査リポートが掲載されている。

 『帝国ニュース』は、東北6県の1516社を対象に調査を行い、717社から回答を得た。調査期間は2月13日〜29日。

 同調査によると、業績への影響は別表①の通り。「マイナスの影響がある」と答えたのは55・6%で、内訳は「すでに影響がある」が23・8%、「今後マイナス影響がある」が31・8%だった。

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 このうち、福島県内の企業にしぼって回答をまとめたものが別表②(有効回答数は138社)。全体版(東北6県版)とほぼ同様の回答比率になっている。

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 「マイナス影響がある」と回答したうち、業界別(東北6県)では、金融業が71・4%と最も高く、以下、卸売業が64・4%、製造業が61・9%、運輸・倉庫が58・1%などと続く。

 さらに細かい業種別に見ると、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」、「紙類・文具・書籍卸売」、「繊維・繊維製品・服飾品小売」、「放送」の4業種の100%が「マイナス影響がある」と回答した。そのほか、「各種商品小売」、「電気機械製造」などが80%超の高い割合で「マイナス影響がある」と回答している。

 回答企業からは「中国産原材料の仕入れ価格が上昇している」(飲食料品卸売)、「仕入先からマスク、各種衛生用品などの商品供給が途絶えている」(化学品卸売)、「大幅な宿泊予約キャンセルが発生している。しかも終息の見込みはない」(旅館・ホテル)といった声が寄せられているという。

 同リポートでは《アンケート調査は2月であったため、感染が拡大している3月以降はマイナスの影響がさらに高まっていると思われる》、《今後は小売を中心として、商品の未入荷の継続や消費マインドの低下などによる悪影響が見込まれている》、《政府は、東日本大震災とは異なる経済危機として捉え、正確な情報提供と企業の事業継続に資する具体的な支援策の実行が必要である》とまとめている。

 『TSR』の調査結果

 一方、『TSR情報』には、県内企業に対し、3月2日〜8日にインターネットでアンケート調査を行い、252社から回答を得たものを集計・分析したリポートが掲載されている。

 新型コロナウイルスの影響を問う質問の回答を整理したものが別表③。「影響が出ている」と「今後影響が出る可能性がある」を合わせると、93・3%に達する。

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 業界別では、「すでに影響が出ている」との回答が最も多かったのは、農・林・漁・鉱産業と運輸業で66・7%。そのほかでは、卸売業が51・5%、情報通信業が50・0%、小売業が46・7%、製造業が44・7%などとなっている。

 「すでに影響が出ている」と回答した企業(回答数105社)に、実際にどのような影響が出ているかを問う質問(複数回答)では、「売上(来店客)が減少」が54社で最も多く、以下、「マスクや消毒液など衛生用品が確保できない」が52社、「イベント・展示会の延期・中止」が43社、「商談の延期・中止」が29社、「現地(中国)サプライヤーからの仕入れが困難に」が24社などと続いた。

 「今後の懸念」に関する質問(回答数118社)では、「従業員が感染または濃厚接触者に」が74社で最も多かった。そのほかでは、「売上(来店客)が減少」が65社、「営業日数が減少」が42社、「商談の延期・中止」が29社、「現地(中国)サプライヤーからの仕入れが困難に」が23社など。

 「小中高校の臨時休校の影響」を尋ねる項目では、回答があった243社のうち、70社(28・8%)が「マイナスの影響を受けている」とのことだった。その内訳は、「子どもを抱える従業員の出社が困難に」が49社(70・0%)、「学校向けの商品・サービスの売上減少」が16社(22・8%)などだった。

 このほか、新型コロナウイルスの影響が出始めた今年2月の売上高が、前年同期と比べてどうだったかを問う質問では、60・2%が前年割れであったことが分かった。

 同リポートでは次のようにまとめている。

 《当初はサプライチェーンの混乱による部材の供給遅延・停止の影響を受けた製造業が目立ったが、一般消費者やインバウンドなどを対象とした「BtoC」のビジネス停滞が直撃した小売業、サービス業、その後は商品供給する卸売業、サプライチェーンを支える運輸業へと波及している》

 《3月10日、政府は新型コロナウイルス緊急対応策の第二弾を公表した。(中略)資金貸付が中心の支援だけでは、感染拡大の終息が見通せない状況で返済原資の確保が難しい中小企業は借入への抵抗もあり、抜本対策とはなり得ない。モラルハザードにも配慮しながら、擬似資本的位置づけの超長期の融資など、大胆な支援策も必要になってくるだろう》

 《今回のアンケートでは、法人税や固定資産税の減免・繰り延べを求める声も寄せられている》

 《新型コロナウイルスの終息メドが不透明で、これまで想定していない事態に向け、さらにもう一段の弾力的な中小企業支援策も必要になってくる》 

 情勢は日々、変化・悪化しており、両調査以降も、県内企業へのマイナス影響は加速しているものと思われる。奇しくも、両リポートとも、国によるさらなる支援策の必要性を指摘して結ばれているが、まさにその通りだろう。それがなければ、全国規模で次々と倒産が発生することになろう。



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