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【尾松亮】廃炉の流儀 連載7-原発立地自治体を救う座礁資産法案

原発立地自治体を救う座礁資産法案

 前回は、廃炉完了後も原発跡地に「使用済み燃料保管施設」を抱える米国メイン州ウィスカセット町の例を紹介した。メインヤンキー原発は2005年に「廃炉完了」が認められた。しかし使用済み燃料の搬出先がなく、ウィスカセット町での保管が続く。

 米国ではウィスカセット町のような立地地域を守る立法提案の動きがある。2019年6月26日、メイン州選出のスーザン・コリンズ上院議員(共和党)を共同提出者として新法案が出された。この法案の主旨は、使用済み燃料を保管し続ける自治体に対して、燃料保管リスクに応じた経済発展基金を創ることである。

 この法案は「座礁原発法案(STRA-NDED ACT)」と呼ばれ、米国全土の閉鎖原発立地地域を対象にする。法案の主提出者はイリノイ州選出のダックワース上院議員(民主党)である。イリノイ州には、やはり使用済み燃料保管施設を残したまま「廃炉完了」が近づくザイオン原発がある。使用済み燃料保管リスクを負う立地地域を代表する議員達が、超党派で提案したのがこの法案なのだ。

 「使用済み燃料を保管し続けている自治体は、不公平な直接的・間接的コストを負っています」とコリンズ議員は指摘する。

 「座礁資産法案」は保管施設の維持管理コスト、安全面でのリスクを押し付けられた自治体への支援策として提案された。同法案の規定によれば、政府は廃炉原発立地自治体のため放射性廃棄物保管コストを補てんするための国家基金を創らなければならない。エネルギー省はこれら自治体のために経済発展プロジェクトを推進する義務を負い、社会経済発展のためのタスクフォースを設立することも定められている。「使用済み燃料保管コスト」に対する補償策としては、使用済み燃料1㌔当たり15㌦のレートで経済影響緩和基金を創る規定となっている。「ウィスカセット町を含む立地自治体にとって経済発展と雇用創出の助けとなるでしょう」とコリンズ議員は言う。

 「座礁資産法案」に定められた立地自治体補償策は、あくまで移行期の措置として位置づけられていることも重要だ。「この新法案は最終処分地への使用済み燃料搬出が完了するまで、悪影響を受ける自治体を支援する移行期の支援策にすぎません。政府は法に基づいて使用済み燃料の最終処分政策を進めなければなりません」とコリンズ議員は強調する。

 「使用済み燃料」という原子力政策の負の遺産を回収する責任は、連邦政府にあるということが前提だ。そのうえで現状「使用済み燃料保管施設」を抱える立地自治体の経済・財政支援策を政府に義務づけるのが「座礁資産法案」の考え方である。「座礁資産法」が成立するなら、今後廃炉期を迎える立地自治体にとっても先手を打った救済策となりうる。

 立地自治体が使用済み燃料の地域外への搬出を求めることは当然だ。しかし広大な国土を持つ米国でも最終処分場が決まらないという現状がある。日本でも廃炉決定した原発敷地内に使用済み燃料保管施設をつくる動きがある。燃料保管施設が長期に残るという事態は生じうる。あくまで「移行期措置」としたうえで、立地自治体の安全性の保証と負担軽減を事業者と国に求めていく必要がある。


おまつ・りょう 1978年生まれ。東大大学院人文社会系研究科修士課程修了。文科省長期留学生派遣制度でモスクワ大大学院留学。その後は通信社、シンクタンクでロシア・CIS地域、北東アジアのエネルギー問題を中心に経済調査・政策提言に従事。震災後は子ども被災者支援法の政府WGに参加。現在、「廃炉制度研究会」主催。


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