【上杉謙太郎】国政インタビュー
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、政府の対応に様々な意見が挙がっている。福島3区を地盤とする上杉謙太郎衆院議員(45、1期、自民党)のもとにも、地元から切実な声が寄せられているという。行き詰まりを懸念する事業所や生活苦に陥る住民も少なくない中、与党の国会議員として現状をどう捉えるのか、上杉氏に聞いた。
――地元からはどのような声が寄せられていますか。
「観光業については緊急事態宣言が発出される前から厳しいとの声が上がっていました。クローズアップされがちなのは旅館やホテルですが、例えばバス会社なども深刻な状況にありました。宣言発出前後から飲食業はじめ各種様々な業種の方から要望等をいただいています」
――寄せられた声を法律や政策にどう生かすかが問われます。
「私に直接連絡してくださった方はもちろん、事務所スタッフや後援会等に寄せられた要望もすべてまとめています。地元の声を国会に届けるのは国会議員の重要な任務です。この間、頻繁に開かれているコロナ関連の会議でも、いただいた要望を全て詳細に伝えるなど、実効性のある法律や政策の策定につながるよう努めています」
――政府の対応に意見があればお聞かせください。
「与党議員という立場を差し置いても、安倍(晋三)総理をはじめ西村(康稔経済再生担当)大臣や官僚の方々は本当に一生懸命、任務に当たっていると思います。傍から見ても日に日に疲れの色が濃くなっているのが分かります。1期生の私が総理や大臣を評価するのはおこがましいですが、それでも政治家に一番重要な責任感と誠意が強く感じられ、そこは誇れると断言できます。
一方、政治はいくら一生懸命やっても、中身が評価されなければ意味がありません。私たち議員は地元選挙区の皆さんと普段から接し、様々な意見をうかがっています。そういった『生の声』を知る私たち議員からの提言に重きをおき、官邸・霞が関は政策にしっかり組み込まなければならないと思います。
官邸・霞が関は行政府として実行する立場です。そして私たち議員は立法府として地元の要望を吸い上げ、全体像を決める立場にあります。その議員からの提言を官邸・霞が関にはもっと早い段階から聞いていただきたかったと感じています。国民に一律10万円が給付される特別定額給付金は5月中旬現在、申請受付が本格化していますが、実は私たち議員は、2月の段階で4月給付を目標に議論していました。確かに本予算の審議等テクニカルな問題もありましたが、それでも議員からの提言をもっと真摯に受け止め、スピード感のある対応に努めていただきたかったですね」
――今後、どのような対策が必要になると考えていますか。
「事業者向けに前例のない持続化給付金や雇用調整助成金などが打ち出されていますが、それでも不十分という声が多く聞かれます。実質無利子・無担保の融資制度もありますが、しかし借金には違いなく、いずれ返済しなければなりませんから、事業者にとっては経済が上向いたとしても、返済額が増える分、利益は減ることになります。国は持続化給付の第2弾として、賃料給付金や雇用調整助成金の増額を行うなど、なお一層の支援で事業所を支えるべきで、私たち議員も官邸・霞が関にそのように提言しているところです」
――企業ではテレワークの導入が進みつつありますが、半面、業種や通信環境によっては導入の進み具合に差も出ているようです。
「新型コロナウイルスが収束したとしても、テレワークは浸透していくと思われます。今後、テレワークを推進していただくためには、新たにパソコンやタブレットを確保するなど企業自体の体力が必要になります。国ではテレワーク導入支援金を創設しましたが、そういった支援制度をさらに大幅拡充して導入の加速化を図るべきです。これは、以前から国が取り組んでいる働き方改革にもつながると考えます。
私は文部科学委員を務めていますが、文部科学省では子ども一人ひとりにタブレットが行き渡るよう、今年度補正予算に約2292億円という大胆な金額を計上しました。事業者にも類似の支援を行えば導入のさらなる加速化が図れると思います」
――5月14日に開かれた衆院本会議で、復興庁の設置期限を10年間延長することなどを定めた復興関連法案に関する審議が始まりましたが、そこで上杉議員が質問に立たれました(写真)。1期生が登壇するのは極めて異例と思われますが。
「そのようですね。与党議員の本会議登壇は基本的に3期生以上です。今回、1期生の私が登壇できたのは異例でしたが、復興庁の設置期限延長は福島県にとって極めて重要な法案であり、根本匠先生の強力な後押しもあって国対で抜擢され、大役を務めさせていただきました。復興庁継続は自民・公明の与党において、特に自民党福島県連においては、県議会議員の先生方を中心に市町村議員、私たち衆参議員が皆で一丸となって議論し、党本部、そして政府に要望した結果実現した経緯もあり、質問ではその点にも強く言及しました。福島県民を代表して、などというと少々おこがましいですが、限られた質問時間の中で、私の思いを私の言葉で伝えることができたのは非常に良かったと思っています」
――復興・創生期間は今年度で区切りの10年となりますが、その後の復興に国はどうかかわるべきか。
「11年目以降も、これまでと変わらずしっかりと予算措置していただくのは言うまでもありません。政策立案についても県や市町村の意見をきちんと組み入れていただきたい。
私は、風評が払拭され、そして廃炉作業が完了してはじめて復興の一つの区切りになると考えています。廃炉は40年以上かかるとされますが、その間、政府が様々な問題に責任を負うのは当然です。県選出の国会議員は今後も、福島の復興と風評払拭に注力していきます」
――県民に向けてメッセージを。
「新型コロナウイルスの影響で大変な状況にある中、県民の皆さんはそれぞれの立場で本当に一生懸命やっていらっしゃると思います。その姿勢に強く感謝するとともに、敬意を表したいと思います。今後、感染の第2波、第3波が来ると言われていますが、それぞれができることに努めてこの苦境を乗り切っていきましょう。
私たち福島県民は震災・原発事故を経験し、それを乗り越えて未来に希望を抱いて生きていく強さを持っています。昨年の台風被害に続いてコロナが押し寄せ、ある意味三重苦四重苦でありますが、それを乗り越えていける強さを私たちは持っているはずです。社会が急速な変化を余儀なくされ、戸惑う部分も多いですが、テレワークなどデジタル技術の普及や働き方の変革、首都圏よりも地方での豊かな暮らしを求める価値の変革等、アフターコロナは地方にとって追い風となるはずです。素晴らしい福島を創ることを目指し、私も国会議員としてでき得る最大限の取り組みに力を尽くしていきます」
うえすぎ・けんたろう 1975年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。荒井広幸参院議員秘書、IT会社役員などを経て2017年の衆院選(比例東北)で初当選。白河市で妻、子ども3人と暮らす。
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