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【義母と娘のブルース】【桜沢鈴】なかなかのイナカ 奥会津移住日記⑨
5年で身に付いた「北から目線」
都会で雪が降るとたった5㌢でも交通網が大混乱する。その様子をニュースで見た北国の人は、「こっちでは30㌢雪が降っても全然なんともないのにな~」と発言する。この事象を巷では「上から目線」ならぬ、「北から目線」と言うようだ。
奥会津に移住して5回目の冬が来た。
関西出身で雪に対する知識が全く無かった私は最初、冬をなめていた。
大雪なのに「綺麗だな」と眺めるだけで雪かきせず、大量に積もり固まった雪を前に唖然とした。埋まった車をかき出してぎっくり腰になり一週間動けなくなった。雪の壁に車を突っ込ませ車体を歪ませた事もあった。
気温が低下する日に「まあ大丈夫だろう」と高をくくって、何度蛇口を壊したか。
冬の終わり、結露をよくわかっておらず多くの布団や衣服をカビだらけにした……。
失敗だらけの私も今ではなんとか形になってきたのではないかと思う。地元の人との交流によって色々な事を教えてもらったからだ。
こと雪の事に関しては、「自分でググれ!(インターネットで調べろ)」という人はおらず丁寧に教えてくれる。
「車の運転で気をつける事はありますか?」
車の駐車時にサイドブレーキは上げるな、ワイパーは立てておけ。
磐梯山が三回冠雪したら本格的な雪が来る、それまでにスタッドレスタイヤに交換するように。
カーブは減速してゆっくり曲がれ。
スタックしたときを想定してスコップといらない毛布を積んでおけ。
夜、地面が黒くて濡れているように見える時はブラックアイスバーンかもしれないから、特に気をつけろ。
「雪かきのコツは?」
スコップは二種類準備すると便利、尖ったやつで硬い雪を、四角いやつで柔らかい雪を除雪。広い場所ではママダンプを使うべし。雪かきは雪が柔らかいうちに。降雪時に屋根の下を雪かきするのはとても危ない。
そのほか、滑らない歩き方、薪ストーブの火を効率良くつける方法、効率のいい暖房方法などなど、本当にたくさんの事を教えてもらった。おかげで今無事に暮らせている。
先祖代々、豪雪地帯に住んできた方々の冬に対する準備は本当にすごい。今では重機やシステムが整ってだいぶ楽になったと思うが、それらが無い時代、この土地に人が住んでいたというのが信じられない気持ちになる。それほど冬は厳しい。
奥会津に暮らす人全てが冬のプロフェッショナル。もし北国に移住しようとする人がいたら地元の人に話をたくさん聞いてほしい。
大丈夫、みんな目をキラキラさせてご教示くださるでしょう。
私も最近、冬、都会から来たお客さんに言うことがある。
「そんなスニーカーで歩けると思っているのか、絶対に長靴を買ったほうがいい。これだから雪国を知らない都会もんは(冗談めかしですよ) 」
お客さんたちは渋々長靴を購入するが、安全に過ごす事ができ、買って良かったと笑顔で旅を終える。しかし、持って帰るのは無理だと長靴を置いて帰ってしまう。
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今私の家にはそんな長靴が10足くらいある。それを眺めるたび「私も随分『北から目線』になったものだ」と思う……そんな今日この頃です。
さくらざわ・りん 大阪府出身。漫画家。7年前に会津若松市に移住し、現在は奥会津で暮らす。代表作『義母と娘のブルース』はドラマ化されて大ヒットした。
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