10年間の入域人数・死傷者・被曝線量―【春橋哲史】フクイチ事故は継続中⑰
東京電力・福島第一原子力発電所(以後、「フクイチ」と略)の、放射線業務従事者の入域人数・被曝線量・死傷者数を当連載で取り上げるのは2回目です。
(前回は2020年7月号/注1)
詳細は、参考とまとめ1~4をご覧下さい(注2)。
全体の特徴や、私が気になった主な点を、昨年の記事と重複しない範囲で列挙します。
①入域人数が減少傾向にある一方で、5㍉シ ーベルト超被曝人数と、協力企業従業員の平均被曝線量が2019年度から上昇に転じている。高線量作業が、特定の協力企業従業員に偏りつつあるのではないか。
②東電が公表・認めているだけで発災以降の死亡者は21人、2021年6月までの負傷者は300人を突破した。「退勤後に病院に行く」等、東電が把握していない人数を合わせると、更に多くの負傷者(もしかしたら死者も)が発生している可能性が高い。
③未払い賃金訴訟・フクイチ過労死訴訟で、雇用元である「いわきオール㈱」の責任が明確に認められ、残業代と賠償支払いが命じられたことは、フクイチへの往復も労働時間と見做される判例となった(過労死訴訟については、本誌5月号で牧内昇平氏が詳報)
④全国の実用発電用原発への入域人数・5㍉シ ーベルト超の被曝人数は、フクイチ事故を境に明らかに減少している。原発を稼働させなければ、被曝人数・被曝線量の低減に繋がる。
東電が「共に働く人」を軽視している体質は相変わらずのようです。直近の21人目の死者に関する、本年1月19日の日報(注3)がそれをよく表しています。人命に関することであるにも関わらず、日報の末尾に【その他】扱いで記載し、年齢・性別・作業内容等の具体的な情報は一切書かれていません。個人情報保護が理由としても、余りにぞんざいです。ご遺族へのお悔やみの言葉も、「本気度」が疑われます。
そもそもフクイチで働く人の死亡人数を、東電ではなく、一市民である私が、過去のリリースを追って集計していることがおかしいのです。
フクイチで働く人がいなくなれば、構内の放射性廃棄物が管理できなくなり、長い目で見ればこの国の滅亡にも繋がりかねません。その止められない作業を続けているのは、生身の人間です。フクイチで働く方々へは、東電だけでなく、社会全体として関心と敬意を払うべきでしょう。
改めて、これまで亡くなられた方達のご冥福をお祈りし、フクイチ事故を防げなかった主権者の一人として、お詫び申し上げます。
最後に宣伝・告知です。
8月10~15日に、横浜市内で、「福島原発事故10年企画」と題した市民有志の実行委員会による展示・講演会が行われます(注4)。僭越ながら、私は、この企画の一環である学習会で講師を務めました(注5)。
期間中は、渡辺一枝さん司会の座談会、樋口英明さんの講演会等が予定されています。(※この企画は、本稿の締切間際に、パンデミックの状況を踏まえ、実行委員会で開催中止が決定されました)
注1
https://note.com/seikeitohoku/n/n81275a1026cf
注2
東電・原子力規制委員会の資料に基づいて春橋作成。
注3
注4
10年企画・公式サイト
注5
2月の学習会の動画と資料
春橋哲史 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。
*福島第一原発等の情報は春橋さんのブログ
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