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【横田一】中央から見たフクシマ80-「Go To」ゴリ押しの亡国政権
福島原発事故がまるでなかったかのように再稼働に邁進する安倍政権(首相)が、全国各地にコロナウイルス感染拡大を広げかねない「Go Toキャンペーン」をゴリ押し、「亡国の政権」と化している。
「全国的なキャンペーンは今はやるべきではない。感染の様子を見ながら全国的に広げていくのがいい」(吉村洋文・大阪府知事)をはじめ自治体トップから批判が噴出しても、安倍首相は7月14日に官邸で「現下の感染状況、高い緊張感を持って注視をしている」と述べるだけで、開始の延期をすぐには決定しなかった。
ようやく16日になって政権は東京発着を除外、都への旅行と都民の利用を対象外にしたが、昭和大学の二木芳人客員教授(感染症学)は「極めて中途半端。22日から始めるのなら、東京と一体の生活圏で感染者が急増している埼玉、千葉、神奈川各県なども最低限、対象外にすべきだ」(7月17日付東京新聞)とコメント。東京除外でも首都圏から各地に感染拡大させるリスクは残ったのだ。
それでも安倍政権が「Go Toキャンペーン」に固執するのは、国政選挙で誇らしげに語る定番メニューが「インバウンド(訪日外国人観光客)の増加」であったためだ。
「2020年に4000万人、2030年には6000万人」という掛け声のもとで「全国の観光地は外国人観光客で溢れ返るようになり、下落傾向だった地方の地価がホテル建設ラッシュなどで上昇に転じた。インバウンド4000万人は射程に入った」と菅官房長官は地方への波及効果を誇らしげに訴えていたのだ。
例えば、去年の参院選で菅官房長官は、秋田選挙区自公推薦候補への応援演説で次のように語っていた。
「秋田県でも外国人を路上で見ることが珍しくなくなっているのではないでしょうか。(安倍政権誕生前の)当時は秋田県に宿泊する外国人の数は2万8000人でした。今は11万4000人ぐらいになっているのです(中略)。地方の地価は25年間、ずっと下落でした。『人口減少で、もう上昇することはないだろう』と言われていましたが、今年(2019年)、27年ぶりに地価が上昇。やはりインバウンドの影響が大きかったと思います。どこに行ってもホテルが足りない状況です」
しかしコロナ禍でこの状況は一変した。訪日外国人観光客は前年比10分の1以下に激減し、各地の観光地は軒並み閑古鳥が鳴くようになった。安倍政権の掛け声に呼応して、ホテルの新規建設や規模拡大など先行投資をした観光関連業者も少なくなく、ハシゴを外された形となった観光関連業者の怒りの矛先が安倍政権に向かう可能性は十分にある。
秋口の解散総選挙を狙う安倍首相は選挙対策上、地方の反発を何としてでも沈静化する必要があった。「成果」と強調してきたアベノミクスなどの目玉政策が批判対象に転じるマイナス効果は計り知れない。だからこそ、コロナ第二波の兆しが現れても「Go Toキャンペーン」強行に踏み切ったと考えられるのだ。
福島県の会社社長はこう話す。「福島は感染者はまれにしか出ませんが、居酒屋の店員が感染したら周辺がゴーストタウンのようになり、近所のスーパーも売上が激減しました。私も感染したら多分会社がつぶれてしまうと思います」
感染者の多い首都圏など大都会から全国各地への人の移動を促す「Go Toキャンペーン」が、福島を含む地方にどれだけのリスクをもたらすのかを安倍政権はどこまで真剣に考えているのか極めて疑問だ。「選挙(自分)ファースト」の安倍政権は、いまや国民の生命を脅かす存在と化しているのだ。
フリージャーナリスト 横田一
1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた「漂流者たちの楽園」で1990年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。
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