フクイチへの22年度までの入域人数と、廃棄物関係の情報|【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中㊵
今回は、当連載でお伝えした事のフォローアップも兼ねて、東京電力・福島第一原子力発電所(「フクイチ」と略)に関する情報を複数取り上げます。
1、フクイチへの入域人数
フクイチへの放射線業務従事者の入域人数や発災以来の死傷者数を前回取り上げたのは、連載28回でした(注1)。2022年度までの入域人数・被曝人数内訳や、23年6月までの死傷者は「まとめ1・2」の通りです。
入域人数は14年度がピークで、以後は減少傾向でしたが、22年度に8年振りに増加に転じました。現場で働く人の9割弱が協力企業(元請・下請)従業員であることも変わっていません。東電が立派な計画を立案しても、万一、人手が確保できなくなれば、収束作業は頓挫します。入域人数の傾向は今後も特に注目していきます。
改めて、フクイチで働き、亡くなった方達のご冥福をお祈り致します。
2、減容処理設備の竣工遅延
減容処理設備を当連載で前回取り上げたのは、連載36回でした(注2)。その際は、インバーターの確保の関係で、竣工が23年3月から5月に延期されたことをお伝えしました。5月下旬に東電が新たに公表したところによると(注3)、設備を設置する建屋内の一部で、設計通りに気圧を負圧(外側よりも気圧が低い状態)に保つことができず、原因究明と対策に時間を要するとのことです。この結果、竣工時期は未定となりました。
瓦礫類の屋外保管解消時期に影響を及ぼさないのか、気になるところです。
3、焼却設備が既設・増設とも停止
雑固体廃棄物焼却設備は、A・Bの両系統とも、今年1月末前後に開始した点検で系統の一部に腐食が見付かり、その対応を行う関係で、運転再開は今年7月予定です(注4)。再開されるまで、使用済み保護衣は減容処理(焼却)できません。
連載33回(注5)で取り上げた増設雑固体廃棄物焼却設備は、今年2月6日に運転を再開後、同20日に簡易点検で停止しました。この点検の最中、「クレーン等安全規則 23条」(過負荷の制限)に違反していたことが判明しました。東電は是正措置を済ませて今年6月中の運転再開を目指しています(注6)。この間の運転停止期間が4カ月以上に及ぶのは確実です。
昨年5月11日の運用開始以降、増設雑固体廃棄物焼却設備の実質的な運転日数は、13カ月間で90日程度です(東電の公表資料を基に春橋が計算。数日程度のずれが生じている可能性あり)。稼働率は2割程度に過ぎません。このようなことで、伐採木の屋外保管が解消できるのでしょうか?
4、HIC保管容量の増設
ALPS(多核種除去設備)で生じる廃棄物を収納しているHIC(ヒック)の保管容量とスラリーの安定化処理については、連載34回で取り上げました(注7)。
東電の公表資料で、今年4月6日時点(注8)と5月4日時点(注9)のHICの保管容量を比較したところ、6308基から6500基に増えていました(192基分増容量)。HICの保管容量が尽きてALPSが稼働させられなくなる事態は取り敢えず回避されました。
朗報ですが、一時凌ぎに過ぎません。HICの保管量が現状のまま増え続ければ、同じ問題が来年春頃に繰り返されるでしょう。
スラリーの安定化処理は26年度開始目標で設備設計が進められていますが、目標が達成できるかどうかは未知数です。
注1/21年度までの入域人数・死傷人数等(22年7月号)
注2/分析すら追い付いていない固体廃棄物(23年3月号)
注3/減容処理設備空調バランスの不具合に伴う竣工遅延について(23年5月25日)
注4/雑固体廃棄物焼却設備排ガスフィルタケーシング腐食事象の対応状況について(23年4月27日)
注5/増設焼却炉から見る東電のマネジメント(22年12月号)
注6/増設雑固体廃棄物焼却設備運転再開について(23年5月25日)
注7/見通しの立たない「ALPSスラリー」の安定化処理(23年1月号)
注8/
(2頁目「使用済吸着塔保管施設」の保管容量)
注9/
(注8と同)