見出し画像

【横田一】兵庫県知事選のインチキ戦略|政界ウォッチ36

 兵庫県知事選投開票日から4日後の11月21日、朝日新聞に「立花氏 当選を目指さず兵庫知事選に立候補」「『2馬力』の選挙戦 フェアと言えぬ 専門家指摘」と銘打った記事が出た。

 斎藤元彦・前知事が再選された今回の兵庫県知事選は、明らかな公職選挙法違反の不公平選挙だった。「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志候補が当選を目指さずに斎藤前知事(当時)を応援。これに対して敗れた稲村和美候補の陣営関係者は「こちらが1馬力、あちらは2馬力で走った」とコメント。続いて選挙プランナーの三浦博史氏が「フェアと言えない」として、こう問題視した。

 「これが許されれば、誰かを当選、落選させる狙いで複数人で立候補し、ポスターや選挙カーを増やした運動が可能となる」「本人の当選を目的としない立候補は認めない旨を公選法に明記すべきだ」

 私も三浦氏と同じ問題意識を持っていた。だからこそ兵庫県知事選投開票日の11月17日22時半、当確後の挨拶やテレビ取材などを終えた斎藤元彦氏に向かって、大声を張り上げた。

 「斎藤さん、インチキ選挙ではないか。立花さんが応援して2倍の選挙運動ができたでしょう。インチキ選挙をやって恥ずかしくないか。立花さんの応援で他の候補の2倍の応援(選挙活動)をしたでしょう。公選法違反ではないか。ペテン選挙をやって恥ずかしくないのか」

 しかし斎藤氏は一言も答えないまま、「斎藤! 斎藤!」と叫ぶ群衆の中に分け入り、去って行った。

 声かけ質問のきっかけは「『当選目指さない候補』は公選法でアリなのか?」と銘打った11月16日の日刊ゲンダイ。有権者の判断材料にならない選挙後に報じた朝日新聞と違って、日刊ゲンダイは投開票前に不公平な選挙戦を以下のように紹介していたのだ。

 「(当選を目指さない立花候補が斎藤候補を支援する)こうした動きに、(県内29市長でつくる市長会の)有志の会のある市長はこう疑問を呈した。『知事選にあたっては300万円の供託金が必要。候補者1人あたりの選挙カーや配布ビラの数なども、公選法で定められている。他候補の当選を後押しするための立候補がOKなら、カネと人を用意できる陣営が有利になる。選挙が歪められてしまうのではないか』」

 公選法が候補者一人あたりの選挙カーや配布ビラの数などを定めているのは、資金力に勝る陣営がビラを大量配布するなどの不公平な選挙戦になることを防ぐためだ。

 しかし今回の兵庫県知事選では“斎藤・立花連合軍”が「2馬力」選挙を展開、民意が歪められたのだ。

 こんなインチキ選挙が許されるのか。この疑問に答えるような発信をしたのが、小西洋之参院議員(立憲民主党)。11月19日のX(旧ツイッター)で以下のような発信をした。

 「【総務省への確認】一般論として候補者Bが候補者Aの当選のために街宣車、拡声器、選挙ビラ、政見放送などを使用することは数量制限等に違反し公選法の犯罪となる。当選者AがBと共犯関係にあればAは失職し公民権停止となる。例えばAとBが同じ場所で演説会を連続開催する場合も犯罪は成立し得る」

 立花氏は政見放送やポスターでも斎藤氏擁護の内容を発信していた。他陣営の倍の選挙活動ができたのだから斎藤氏の再選は当たり前。立花氏に公選法違反をしてもらって当選したと言える。今回の結果は歪められた民意の反映で、斎藤氏は知事としての正当性を欠くのは明らかだ。

 不信任案を再び出すことが可能な県議会はもちろん、国会でも「こんな不公平な選挙が許されていいのか」といった激論が交わされるのか否かが注目される。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

月刊『政経東北』のホームページです↓


Youtube「【畠山理仁の選挙男がいく】日本初の選挙漫遊誌『政経東北』の勇姿を見よ!」に出演しました!!

いいなと思ったら応援しよう!

月刊 政経東北
よろしければサポートお願いします!!