【町村長に聞く】磐梯町・佐藤淳一町長
――町長就任から1年が経過しました。
「6月25日で町長就任から丸一年が経過しましたが、あっという間の1年間だったと感じています。この間、町のビジョンである『自分たちの子や孫たちが暮らし続けたい魅力あるまちづくり―共創・協働のまちづくり―』、町のミッションである『町民全員を幸せにする―共生社会の実現―』、町のバリューである『町民起点(価値観)の共有』を設定し、まちづくりの大きな柱に据えています。現在、それらに基づいた総合計画を策定し、KPI(重要業績評価指標)を踏まえた具体的な取り組みを展開しています。
一方、町の総合計画を効率的に実行していく観点から、4月1日から大きく2つの組織変更を実施しました。1つは、DX(デジタル変革)戦略室の設置です。デジタル化を進めることで、これまで弊害が指摘されてきた『縦割り組織』からフレキシブルに対応できる『横断的組織』に転換を図ることが大きな狙いです。今後は、行政サービスの各種手続きなどの利便性はもちろん、サービスも一層向上することが期待されます。
2つ目は、『こども課』の組織改編とそれに伴う教育委員会への移行です。本町では、これまで幼・小・中一貫教育をはじめ、前町長による『磐梯町版ネオボラ』を展開するなど、教育に熱心に取り組んできた経緯があり、今般、幼児教育のさらなる充実化を図るため、『こども課』の組織改編に踏み切りました。この改革によって、保育所も教育委員会の管轄となり、保・幼・小・中一貫教育が実現するなど、幼児期から中学までの教育と子育ての両面において、きめ細かい支援を提供できる環境が整ったと考えます。町では、これを契機に『子どもカルテ』を発行し、保健師によるさまざまなサポートをはじめ、子どもに関する情報共有、子育てに関する意思疎通の促進、教育支援など、子どもと保護者に対して町が責任を持ちながらフォローしていく体制を構築していきます。この1年間で本町の将来ビジョンを確立させながら、まちづくりの基盤を整えることができたと認識しています。
町の使命・将来像・行動規範・戦略・戦術を踏まえた行政を展開するうえで、『町民起点』に立ったまちづくりが何より重要であると考えます。行政主体の視点や都合にとらわれることなく、町民が何を考え、何を求めているかについて、職員の皆さんとともに常に意識しながら柔軟性のある町政運営に努めてまいります」
――新型コロナウイルスの感染拡大による町内の現況と地域経済の影響についてうかがいます。
「世界規模でのパンデミックが広がる中、本町においても深刻な影響が出ています。特に緊急事態宣言の発出以降は、日常生活も含めてさまざまな自粛を要請されるなど、移動や行動も制限せざるを得ず、地域経済に大きな影を落としています。周知の通り、宿泊業や飲食業は特にダメージが深刻で、製造業でも、今後の需要動向にもよりますが、時間差で影響が及ぶとの声も聞かれます。この間、政府、県による経済対策に加え、町独自の経済対策も講じています。第一弾としては町内の宿泊施設と飲食施設に対して20万円の給付金支給をはじめ、将来的な集客を見据えたうえでの経済支援の一環として、各施設が発行するクーポン券や商品券を対象に、原価の20%分、総額で30万円を補助しました。一例を挙げますと、1万円の商品券であれば2000円分を町が補填する仕組みです。現在、第二弾として町内勤務者を対象に町内のペンションを利用する際の宿泊補助制度を検討しています。
当面は、地元をはじめ、本町と関連性の高い方々への需要喚起が基本戦略になると考えます。一方、新型コロナウイルス感染拡大の収束のタイミングで、今後は県全体による観光キャンペーン、その後は政府による全国規模の観光キャンペーンと段階的に観光振興事業が展開されると想定されます。こうした動向を見極めながら、宿泊業者や飲食業者が次のステップに前向きに踏み出せるよう支援体制の強化を図っていく考えです」
農業振興は至上命題
――この問題で政府、県に求めることについてうかがいます。
「政府、県ではこれまで矢継ぎ早に経済対策を講じており、町としては町民に寄り添いながら制度紹介をはじめ、各種申請や相談等のサポートをすることが基本と考えます。しかし、地域経済を取り巻く環境が依然として厳しい状況ですので、町内事業所の現状や行政ニーズを的確に把握し、支援の必要に応じて適時政府や県に陳情していく所存です」
――選挙公約である「町民との対話による政治」の進捗についてうかがいます。
「町長を志した時から『町民の声に対し真摯に耳を傾ける町政運営』を政治理念の中核に位置付け、選挙戦でも説明させていただきました。実は、4月から町内三十数カ所に及ぶ行政区に直接足を運び、町民の方々と忌憚のない意見交換をする予定だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大により延期を余儀なくされています。できる限り早い時期に各行政区に赴き、選挙公約が盛り込まれた総合計画や、これまでに着手した事業について説明を申し上げ、町民の率直なご意見・ご感想を賜りながら町政に反映できるものは積極的に採用したいと強く考えます」
――そのほかの重点事業についてうかがいます。
「これまで進めてきた役場機能や行政サービスの見直し・改善については引き続き重要施策として推進してまいります。今後は職員の方々の負担を軽減しながら、少しでも働き易い体制を構築することで行政サービスの向上につなげる必要があります。具体的には、ペーパーレス化、デジタル化を推し進め、職員の業務量削減を図っていきたいと考えています。合わせて、ICT技術を積極的に導入し、町民への情報発信の迅速化・効率化に努めながら、情報の伝達・共有をできる仕組みづくりに尽力してまいります。
一方、農業従事者の高齢化や担い手不足が年々深刻となる中、農業を成長産業に転換させることは町の維持・発展を考えるうえで至上命題と言っても過言ではありません。現在注目を集めているスマート農業による生産性の向上をはじめ、農地の集約化による営農効率化が進むことで、農業に可能性を見いだす方々の参入が大いに期待できると考えます。本年度は農業基盤再構築の観点から、約20年間未着手となっていた農業振興地域整備計画の見直しを行います」
さとう・じゅんいち 1961年9月生まれ。日本大学工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。昨年6月の同町長選で初当選を果たす。現在1期目。
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