【政経東北】トカゲの尾っぽ切り|巻頭言2024.04
自民党派閥の裏金問題は昨年11月に世間の注目を集めてから4カ月以上経つのに、関係者の処分は一切行われていない(3月20日現在)。岸田文雄首相は指導力不足を非難され、内閣支持率は20%台前半と危険水域に入っている。
言いたいことはいろいろあるが、ここで指摘したいのは秘書に責任を押し付け、議員自身は知らなかったで済まそうとする姿勢だ。会見で謝罪した議員や政倫審で野党の追及を受けた議員は、軒並み「秘書のせい」とシラを切っている。
国会議員とは、自分の事務所に入ってくるお金にそんなに無頓着なのか。所帯の大きさで言えば、国会議員の事務所は零細企業と変わらない。零細企業の社長は、手持ち資金や出入金等を逐一把握する。社員にお金の管理を任せていたら、経営上のリスクを見逃す恐れがある。その結果、破綻したら、それは社員のせいではなく社長自身の責任だ。「全て社員に任せていた」と言い訳したところで納得する取引先はいないだろう。「信じられない」と呆れられるのがオチだ。
安倍派の世耕弘成氏も秘書のせいにしている議員の一人だが、自民党若手議員が主催した懇親会での〝過激ダンスショー〟に自身の秘書が参加していたことが判明すると自宅謹慎を命じ「私の代理で出席したわけではない」と釈明。自分に優しく部下に厳しいだけでなく、トカゲの尾っぽを切るような発言をするのだから、民間企業に置き換えると、こういう社長のもとでは働けないと一斉に社員が離れ、経営が成り立たなくなるのは間違いない。
秘書のせいにする姿勢は、こんな発言にも表れている。自民党県連会長の亀岡偉民衆院議員は政治資金をめぐる改革案として連座制導入が議論されていることについて「一般の会社でも会計を社長がやっているわけではない」と否定的な考えを示した(朝日新聞県版3月5日付)。社長が何でもやる零細企業と違い、規模が大きくなれば確かに社長が会計をやることはない。しかし民間企業は、社員が問題を起こせば社長が辞任に追い込まれることもあり得る。社長は問題に直接関与していなくても、厳しく責任を問われる。法律で「辞めなければならない」と規定されているわけでもないのに、だ。連座制に否定的なのは、どこまで行ってもトカゲの尾っぽ切りの余地を残しておきたいからだろう。
さまざまな責任を背負いながら必死に経営する民間企業の社長と違い、国会議員が甘い考えで仕事をしているのがよく分かる。(佐藤仁)
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