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「もんじゅ」—フクイチ以外のリスク・その2―【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中㉙

 当連載では、本年6月に「東海再処理施設」を取り上げました(注1)。
 
今回は高速増殖原型炉「もんじゅ」を取り上げます。

 「もんじゅ」の概要と経緯は「まとめ」の通りです(注2)。


 「もんじゅ」は2017年に廃止措置に移行しており、今年7月末現在、核燃料を燃料池(燃料プール)へ移送する「廃止措置第一段階」です。
「もんじゅ」の歴史は、「不適合管理・不安全の歴史」と言えます。特に「経緯②」の2012年11月から16年までの出来事は酷過ぎます。「夢の原子炉」ではなく「悪夢の原子炉」ですね。

 私は2013年の秋には原子力規制委員会の傍聴を始めていたので、「もんじゅ」について、文科省の担当者や原研機構(日本原子力研究開発機構)の理事長が原子力規制委員会に説明する様子も直に見ています。「施設の管理が好い加減・出来ていない」ことに対する危機感が希薄であること、フクイチ核災害で核のリスクが顕在化したにも関わらず、そのような姿勢でいることに驚き呆れました。

 特に私が愕然としたのは、2017年1月の原子力規制委員会臨時会の際、機構の児玉理事長の説明で「(もんじゅの)燃料取り出し設備は健全性確認の点検が必要で、原子炉から核燃料が取り出せる状態でない」ことが明らかにされた時です。フクイチ核災害から約6年も経っているのに、その状態を解消しようともしていなかったのです。私は「核燃料が取り出せない原子炉なんて有り得るのか」と思いました。

 ナトリウムは空気に触れると爆発的に燃焼する性質が有ります。万一、「もんじゅ」を巨大地震・巨大津波が襲い、原子炉や重要な設備・配管が破損し、核燃料棒が浸かった状態でナトリウムが漏洩して炎上・爆発したらどうなるでしょう? 最悪の場合、ナトリウムが核燃料棒を巻き込んで爆発的に炎上し、放射性物質が周辺環境に一斉に放出されるのではないか。私はその可能性を考えた時、潜在的リスクの大きさ・恐ろしさにゾッとしました。

 「核燃料を燃料池に移し、ナトリウム冷却から水による冷却に切り替え」なければ、このリスクは解消できません。

 私は「もんじゅ」のリスク低減の行方を自ら確認したかったので、原子力規制委員会の「もんじゅ廃止措置安全監視チーム」会合は可能な限り傍聴し、原研機構のリリースも追ってきました。

 紙幅の関係で途中経過は省きますが、「もんじゅ」の燃料取り出し設備は点検・補修され、核燃料の取り出しは2018年8月に開始されました。当初、原子炉・炉外燃料貯蔵槽で合わせて530体の核燃料がナトリウムに浸かっていましたが、ほぼ4年間で、炉外燃料貯蔵槽の124体を残すところまで進みました。その燃料も今年8月に燃料池への移送を開始予定で、年内には完了見込みです。

 一時は核燃料の取り出しすら危ぶまれる状態だったのを、原研機構はよく立て直しました。「もんじゅ」の歴史では、皮肉なことに、廃止措置こそが最も順調かも知れません。
 
 とは言え、ナトリウム型冷却炉の廃止措置は日本初です。放射化したナトリウムの扱い・管理等、前例の無い課題への取り組みは今後も続きます。

 原研機構は併せて、世界初の再処理施設の廃止措置も抱えています(東海再処理施設)。

 それに加えて、日本では世界最大の核災害の収束作業もやめられません(東京電力・福島第一原子力発電所)。 

 日本は核の地獄のようです。

 「日本初のナトリウム冷却炉の廃止措置」「世界初の再処理施設の廃止措置」「世界最大の核災害の収束」の3つに同時並行で取り組まなければいけないのです。

 原発再稼働をしている場合では有りません。政府が前面に立ち、国内の核関係のリソースの総力を核施設の廃止措置・核災害の収束に振り向けるべきでしょう。

注1 第25回「見過ごせない、フクイチ以外のリスク」/

注2 原子力規制委員会・原研機構等のWebサイトを元に春橋作成

春橋哲史 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。

*福島第一原発等の情報は春橋さんのブログ

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