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【横田一】兵庫県知事問題で危機的状況の維新|政界ウォッチ34

 9月19日に不信任決議案が全会一致で可決された斎藤元彦・兵庫県知事問題が日本維新の会を直撃、迫り来る解散・総選挙を前に危機的状況に陥っている。昨年春の統一地方選後に立憲民主党を抜いた支持率は5%前後で野党第2位に転落。地盤とする関西圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)でも「6月の22%から7月に13%に急落し、9月は12%だった」(9月20日付の日本経済新聞)と激減したのだ。

 選挙でも連敗が続いている。7月の大阪府河内長野市の府議補選で敗北、8月の大阪府箕面市長選でも維新公認の現職市長が初めて敗れてしまった。かつてないほどの維新への逆風が吹き荒れ始めたのだ。

 建設費が二度も上振れをした万博批判が昨年秋から続いていることだけが維新のマイナス要因になっているわけではない。いまや「自民党総裁選」候補と同等以上の頻度でメディアに登場する斎藤元彦・兵庫県知事の問題がダブルパンチとなって、維新のさらなる支持率低下を招いているという見方が有力なのだ。

 維新と自民党は2021年の県知事選で斎藤知事を支援、初当選に貢献した“製造物責任”を有するが、亡くなった元西播磨県民局長の文書問題では両党の対応が割れた。強い権限を有する百条委員会の設置に自民党が賛成したのに対し、維新は反対に回り、辞職要求のタイミングも遅れたことから、「斎藤知事を擁護している維新」というマイナスイメージが定着してしまったのだ。

 百条委での追及などが連日のように報道される中、ようやく維新共同代表の吉村洋文・大阪府知事は不信任決議案提出を示唆し始め、辞職要求へと方針変更したが、遅すぎた感が否めない。

 しかも維新の国会議員が亡くなった元県民局長の個人情報を漏洩していたことも発覚。9月6日の百条委で丸尾牧県議(無所属)が取り上げて問題視すると、すぐに集英社オンラインとアエラドットが、維新の堀井健智衆院議員(兵庫10区で落選して比例復活)が駅前で辻立ちをしている時に一般人に個人情報を漏らしたことを報道したのだ。

 この時、維新県議も個人情報漏洩に関与していたこともすでに明らかになっていた。9月19日の集英社オンラインは次のように報じた。

 「県は、(告発をした元西播磨県民局長の)Aさんに懲戒処分をかけたうえ、片山副知事らがAさんの公用パソコンから抜き出した個人情報を幹部間で共有もしていた。幹部のひとり・井ノ本知明前総務部長(8月に更迭)は個人情報を県議らに見せて回っていた。さらに維新の増山誠県議は文書の全面公開を議会内で求めたりし、Aさんは『一死をもって抗議する』との言葉を残して、7月に自死している」。

 結局、維新の県議も衆院議員も個人情報漏洩に関わっていたことになるのだが、維新の藤田文武幹事長は厳重注意の処分で済ませた。そこで9月12日、維新共同代表の吉村知事に囲み取材で「軽すぎる処分ではないか」「徹底調査をするべきだと思わないのか」と聞いてみた。

 しかし吉村氏は「藤田幹事長の判断に任せたいと思う」と答えるだけ。「非常に重大な問題だと思わないのか。厳重に保管するべき情報が外部に漏洩されて未だに広まっていることは重く受け止めないのか」「普通に考えれば、維新の県議から堀井議員に漏れたと疑わざるを得ないが、そのへんは調査しないのか」とも聞いたが、吉村氏は「兵庫県が調査していると思う」とかわした。

 途中まで斎藤知事を擁護していた維新が自死した元局長の個人情報漏洩に関わり、告発者つぶしに加担していたのではないかという疑惑も浮上していたのだ。斎藤知事問題がどこまで維新にダメージを与えるのか注目される。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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