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【政経東北】検証・監視を続ける意味―巻頭言2021.12

 広告代理店の電通に原発事故関連の予算がどれぐらい降り、どんな役割を担ってきたのか、調査・解析することを目的とする「東京電力福島第一原発事故に関わる電通の世論操作を研究する会」(電通研)という団体がある。東電刑事裁判や子ども脱被ばく裁判の原告などで組織されており、今年、活動の一環として、山下俊一氏、高村昇氏、神谷研二氏の3人がなぜ県の放射線健康リスク管理アドバイザーに委嘱されたのか、県に公文書の開示請求を行った。

 ところが、県は3氏の報酬について、「個人情報」を理由に非開示にした。伊達市では、市政アドバイザーだった田中俊一氏の報酬は月額10万円だったと公開している。県の非常勤職員に当たるアドバイザーの報酬を個人情報と言い張るのは不可解だ。そのため、電通研はこれを不服として情報公開審査会に審査請求を提起し、開示を求めていく方針だ。

 開示文書によると、県は2011年3月16日の時点でアドバイザー委嘱に向けた承諾書を作成していたという。3月16日と言えば、大熊町の双葉病院に取り残された患者などの救出がようやく完了したころであり、川内村民が郡山市に向けて全村避難を始めたころ。放射線量が上がり続け、県外避難を始める人も多かった。そんな中、県は〝この放射線線量ならば安全〟とする専門家への委嘱の準備を着々と進めていたことになる。

 震災・原発事故から10年経過し、県内では事故対応や放射線被曝、原発被災地の復興等への関心が薄まりつつある。しかし、客観的に検証を続けることで見えてくることもある。

 継続の重要性という意味では、東電による原発事故収束作業をウオッチングしていくことも同様だ。東電は自社にとって都合の悪い情報は、目立たないように情報を公開する傾向がある。

 例えば、福島第一原発で発生する汚染水の根本解決のために設置された陸側遮水壁(凍土壁)が温度上昇し、漏洩していた問題。記者会見で東電は現在の取り組みを淡々と説明し、壁の内外で地下水の水位差が保たれていることを理由に「遮水機能は維持できている」と強調した。だが、実はその個所、過去に凍結しづらいため水ガラスで地盤改良された「問題ありエリア」の周辺だった。ジャーナリスト・おしどりマコ氏の指摘で初めて明らかになった。

 本誌では春橋哲史氏や尾松亮氏が原発事故関係のコラムを連載しているが、独自の視点で調べ続けたからこそ初めて分かる事実もある。当事者公表の情報を追うだけでは真実にたどり着けない。  

(志賀)


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