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【日本共産党】浅川町議に給付金不正受給疑惑

条件不十分なのに100万円受け取り

(2021年6月号より)

 浅川町議が、条件を満たしていないのに持続化給付金100万円を受給していたことが判明し、物議を醸している。本人は「言われた通りに手続きしただけだ」と主張しているが、返納対象となるのは確実だ。

 「1週間で100万円が振り込みになったんですね。私もこれ、正直驚いたんですけれども」

 浅川町議会昨年12月定例会の一般質問でこう語ったのは、角田勝町議(80、13期、日本共産党)だ。農業を営んでおり、「持続化給付金」が農業者も受給対象になることに触れたうえで、制度の周知徹底と支援充実を町執行部に求めた。

 持続化給付金はコロナ禍で収入が大幅に減少した事業者を支援するために国が給付したもの。金額は法人が最大200万円、個人事業主が最大100万円。今年2月で申請受け付けが終了している。

 このとき、角田町議は冒頭の通り、議場で自らも同給付金を受給していたことを明かし、「農業者であれば誰もが無条件で100万円もらえる」というニュアンスの発言をしたため、議場が騒然となったのだ。

 同給付金の申請条件は、前年の収入が半減していること。農業者などのように毎⽉の収入額が税務書類で確認できない場合、任意に特定した月が前年の総収入の月平均額の半分を下回っていれば申請可能となる。

 例えば年収480万円の場合、月平均額40万円の半分(20万円)以下の月収となっていることが証明できれば認められる。つまり、農業者であれば無条件で100万円もらえるわけではない、ということだ。

 角田町議は質問中、「私もコメしか作っていなかったものですから」とも述べていた。昨年秋、2020年産米の県内JAの概算金(農業者から買い取る際の価格)が6年ぶりに下がったと報じられたが、これは「60㌔当たり1万2000円前後の概算金が数百円下がった」という話で、半減はしていない。すなわち角田町議は「収入半減」という申請条件に当てはまっていないのに、100万円を懐に入れたことになる。

 議会での答弁では、町農政商工課長が給付条件についてあらためて説明し、収入半減した人のみ対象となることを強調したが、角田町議は納得せず、「認識が違う。農林水産大臣は『農業者のほぼすべてが該当する』と発言している」、「私が不正をしたみたいな言い方に取れる」と聞き入れようとしなかった。

 農林水産大臣の発言というのは、昨年5月の衆議院農林水産委員会などで江藤拓農林水産大臣(当時)が「持続化給付金については、農林水産業に係る所得を申告しておられるすべての方々が対象になると理解しています」と答弁したことを指す。

 ただし、この発言は、同給付金事業が始まったばかりの昨年5月ごろ、農業者も対象であることが周知されていなかったのを受けた答弁だ。にもかかわらず、角田町議はこの発言を「すべての農業者が給付金をもらえる」と解釈してしまったようだ。

 町農政商工課に問い合わせたところ、同課長は「関連資料などを読む限り、『給付金はすべての農業者がもらえる』とは解釈できず、誤った内容を周知すれば町の責任にもなりかねない。そのため、あらためて議場で説明した」と述べた。

 申請や相談に応じていた町内の機関にも問い合わせたが、「『収入半減が条件』と説明している」(JA夢みなみ浅川町支店担当者)、「年間収入が明確になっており半減した方は申請をサポートしていたが、コメしか生産しておらず、減収した証拠も示せない方には、農業者の不正受給が問題になったことを伝え、最初からサポートをお断りしていた」(浅川町商工会の担当者)という。

 同給付金に関しては、基本的にオンラインで申請が行われたこともあって不正受給が横行。特に農業者は農閑期の売り上げを申請すれば「前年収入の平均月額の半分以下」という条件を容易に満たせるため、虚偽申請する事例が全国で相次いだ。その後、不正受給で逮捕された事例などが報じられると、今度は返還の相談が増加し、新聞でも大きく報じられた。県内でもそうした動きが各地であったようだ。同給付金のホームページによると、すでに全国で1万件以上が返還されている。

 ある町民は憤りながらこう話す。

 「町内にはコロナ禍で収入が落ち込んだが、持続化給付金の対象にはならなかった商工業者もいた。そうした中、『農業者は全員受給対象』と勝手に解釈し、自らも給付金を受給する神経を疑う。ただでさえ議員報酬をもらっている立場なのだから慎重に動くべきだったはずです」

「返納は検討していない」

 当の角田町議はこうした声をどのように受け止めているのか。5月下旬、自宅を訪ねた。

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 ――町をはじめ、関係機関も「持続化給付金の給付は収入半減が前提条件」と話していた。議場で述べていた「すべての農業者がもらえる」という認識は誤りではないか。

 「私は福島農民連に入っており、福島農民連産直農業協同組合に聞いた通り、申請して議会でお話ししただけです。詳しいことは分からないが、もらえるのであればやるべ、と。『ほとんどの農業者がもらえる』と農林水産大臣も話していましたし」

 ――自ら申請したのか。

 「必要なデータを記入した書類を農民連(同組合?)の担当者に渡し、オンラインで申請してもらった」

 ――議会で自ら同給付金をもらったことを明かしていたが、一方で「コメしか作っていない」とも話していた。本当に収入が半減したのか。

 「半分までは下がっていません。ただ、(最初に渡された)文書では『50%以下でなければならない』とは書かれていなかったはず。少しでも収入が減れば申請できると聞いたのでやりました。農民連(同組合?)の事務の人に来てもらって、対応してもらったので問題ないはずです」

 ――不正受給を疑う声が出ているが、自主返納は検討しているか。

 「そうしたルールは聞いていなかったし、特別検討はしていない」

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 持続化給付金の個人事業者等向け申請要領をあらためて確認したところ、給付条件として「宣誓・同意事項のチェック」という欄に、《2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(対象月)が存在すること》としっかり記されていた。

 福島農民連産直農業協同組合は角田町議に説明をしなかったのか。同組合に取材を申し込んだところ、事務局担当者が電話に出て、「忙しいので対応は難しいです。うちが応じなければならない理由があるんですか。お断りさせてください」と話した。取材の趣旨をあらためて説明したが、「いまお断りしたので。もういいですか」と話を打ち切られた。

 不正受給が発覚した場合、受給金と20%の加算金、年率3%の延滞金の返納が求められる(自主返納であれば加算金・延滞金は免除)。さらに中小企業庁から督促を受けるまでに返納に応じなかった場合は、ホームページで氏名・住所が公表される。

 「同組合に言われた通りやった」と話す角田町議と、説明を拒む同組合。その無責任な姿勢に呆れる。これまで警察が捜査に入ったのは複数人でだまし取る目的で申請するなど悪質な事例に限られており、国が今回の事例を受けてどう判断するかにかかっているが、角田町議は公人であり、議事録には議会での発言が証拠として残っている。議員としての資質が問われる疑惑であり、単なる〝高齢農業者の注意不足によるミス〟で済ませるわけにはいかないのではないか。


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