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【奮闘する人、傍観する人】国の顔色ばかりうかがう内堀知事

本音語らない姿勢に落胆する県民

 新型コロナウイルスへの政府の対応に国民から厳しい批判が上がるのとは対照的に、都道府県知事への評価は高まっている。翻って、本県の内堀雅雄知事はどうだったのか。

 新型コロナウイルスへの政府の対応に国民から厳しい批判が上がるのとは対照的に、都道府県知事への評価は高まっている。翻って、本県の内堀雅雄知事はどうだったのか。

 内閣支持率が急落している。

 朝日新聞が5月23、24日に行った全国世論調査によると、安倍内閣の支持率は2012(平成24)年12月に第2次安倍政権が発足して以来最低の29%、不支持率は52%だった。

 他紙の世論調査も同じような結果で、支持率20%台はいわゆる〝危険水域〟とされる。もともと政府のコロナ対策に国民の不満は高まっていたが、そのタイミングで官邸が恣意的に定年延長した東京高検・黒川弘務検事長の「賭けマージャン」問題が発覚、辞任したことも支持率急落の要因となった。

 これとは対照的に、評価を高めているのが都道府県知事たちだ。

 強いリーダーシップと情報発信力を発揮しているのは、言うまでもなく大阪府の吉村洋文知事。東京都の小池百合子知事、北海道の鈴木直道知事への評価も高い。山梨県の長崎幸太郎知事は事業者に休業自粛を要請する中、自らも覚悟を示すとして月額125万円の給与を5月は1円にすると表明。給与の全額返上(5月分)は高知県の浜田省司知事や愛媛県の中村時広知事も続き、秋田県の佐竹敬久知事は夏のボーナス約288万円を受け取らない方針だ。

 これら知事たちに共通するのは、住民の窮状に寄り添いながら、都道府県としてできることを行う一方、国の対応に苦言を呈する姿勢だ。給与・ボーナス返上をパフォーマンスと見る向きもあるが、生活に困窮する住民を横目に満額を受け取るより全然マシだ。

 そうした姿勢が、住民に「知事は頑張ってくれている」と思わせ、内閣への失望に反発するように知事の高評価につながっている。

 翻って、本県の内堀雅雄知事への評価はどうなっているのか。

 福島民報が福島テレビと共同で行った県民世論調査の最新結果が同紙4月27日付に掲載されている。それによると、内堀知事を「支持する」は78・8%、「支持しない」は7・8%、「分からない」は13・4%。

 8割近い〝異様な高支持率〟は知事就任当初から変わっておらず、コロナ禍でも下がることはないようだ。しかし、個別に声を拾っていくと的を射た批判を多く耳にする。

 例えば「今まで県政には全く関心がなかった」と言う郡山市の自営業男性はこんな感想を口にしていた。

 「コロナの影響でウチも経営が苦しいが、感染拡大を防ぐには県の営業自粛要請に応じなければならないと考えている。そうした中で自営業者が気掛かりなのは、営業自粛に応じた場合、県がどんな補償をしてくれるのかということです」

 この自営業男性は「県が打ち出す支援策を早く知りたい」と考え、内堀知事の会見動画を初めて視聴したという。ところが、

 「丁寧な口調に一瞬騙されそうになるが(苦笑)、よくよく聞くと記者の質問に正面から答えず、中身の薄い回答に終始していた。私が期待した支援策も、国が打ち出した政策に追随し、県独自と言えるようなものは何も出てこなかった。人気のある知事とは聞いていたが、会見を見る限り、困っている自営業者を絶対に救うんだという気持ちは伝わってこなかった」(同)

 会津地方の某副首長も、落胆した様子でこう話す。

 「福島県などに出されていた国の緊急事態宣言は5月14日に解除されたが、国の言いなりではなく、県独自のモデルを構築できなかったのかという不満はありますね」

 背景には「福島県」という括りで見ると感染者数は81人(5月25日現在)だが、「会津地方」では感染者が1人も出ていないことがある。

 「感染者ゼロの会津地方も一括りにして県全体を緊急事態宣言下に置くのは、国がそうするというから従ったのだろうが、経済の視点で言うと正しかったとは思えない」(同)

 ならば、感染者が出ていない地域には緊急事態宣言を出さない、というやり方が良いかどうかは分からない。ただ、副首長が言いたかったのは「コロナ禍前の内堀知事の行動」が全く生かされていないことに強い疑問を覚えたからだ。

 「内堀知事は就任以来、県内59市町村を毎年回り、首長や地域住民と直接懇談しています。すなわち各地の事情を直接知り得ているはずなのに、その知見を生かさなかったのは解せない。県全体が緊急事態宣言下に置かれるのはやむを得なかったとしても、その解除については浜・中・会津一斉ではなく、感染者が一人も出ていない会津地方から段階的に行うことだってできたと思う。そうでなければ、今まで直接懇談を続けてきた意味がない」(同)

政権与党を批判しないワケ

 本誌はこれまで、官僚(総務省)出身の内堀知事が、国の方針を飛び越えて県独自の施策を行うことは決してない――と散々書いてきた。県政を取材する某記者も

 「昨年の台風19号被害もそうだったが、内堀知事は国が一定の支援策を示さないと県の取り組みや自身の考えを明かさない。今回のコロナ対策も全く同じで、記者たちも『手堅すぎて独自性が感じられない』と呆れています」
 と嘆いていたが、官僚として仕えた国に苦言を呈したり、ましてや批判することは絶対にないのだ。

 「そもそも、自身が知事選に立候補する際には菅義偉官房長官の了承を得ているし、今は自民党の二階俊博幹事長に世話になっているから、政権与党に盾突くことはまずあり得ない」(ある政治通)

 コロナ禍において従順すぎるほど国の要請に従う内堀知事には、主要経済人からも〝オフレコ〟でかなり厳しい批判が漏れている。経済人が経済第一に考えるのは当然なので、彼らが求める緊急事態宣言の早期解除や緩和が正しいかどうかは別にして「他の知事たちと比べて内堀知事は頼りなく、物足りなさを覚える」という意見は、この間の取材で複数耳にしている。

 そうした内堀知事の姿勢は、こんな場面にも見られる。例えば、共同通信が全国の知事に行ったアンケート調査で、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言発出時の知事の権限が十分か否か尋ねると、22知事が「不十分」と答えた中、内堀知事は「どちらとも言えない」と回答。全国知事会から浮上した学校の9月入学制についても、各知事が賛否を口にする中、内堀知事が言及することは一度もなかった。

 政治家が賛否を語ると余計な〝色〟が付くこともあるため、ニュートラルな立場を取りたい人ほど寡黙になりがちだ。しかし緊急事態の中、各知事が「こうすべきだ」「ああした方がいい」と自身の考えを述べているのに、曖昧な言動に終始する内堀知事は、県民からすると「一体何を考えているのか」「本音はどこにあるのか」と感じてならない。それこそ大阪府の吉村知事のような「良いものは良い、悪いものは悪い」という物言いの方が、聞く側の心にストンと落ちる。

 今まで誰も経験していない状況下においては「これが正解」という答えはない。だからこそ正解を見つけるため、互いの考えをぶつけ合い、そこで出た結論を試し、間違っていたら修正する、という繰り返しが必要なのではないか。自身の考えを語らないリーダーには失望しかない。

 突出したことをやれとか、大阪・東京の知事のように目立てなどと言うつもりは毛頭ない。ただ、少しでも住民に寄り添う気持ちがあれば、前出・某副首長が語るように地域の実情に沿った県独自の対策を行う、いわゆる〝福島モデル〟を打ち出すことだってできたはずだ。

 国の顔色をうかがうあまり、困っている県民の姿を見落とすようでは知事失格だ。


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