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遺体をキムチ鍋にした男|【高橋ユキ】のこちら傍聴席11

 相馬市の住宅に弟の遺体を遺棄したとして、相馬署は10月24日、仙台市に住む無職・岩崎祐二容疑者(53)を死体遺棄容疑で逮捕した。岩崎容疑者は、1972年生まれの弟を、2021年10月から2023年4月までの間、その死亡を知りながら相馬市の住宅に遺体を放置したという疑いが持たれている。

 住宅は競売にかけられ、岩崎容疑者は弟の遺体を放置したまま今年4月ごろ引っ越していた。新しい所有者から掃除依頼を受けた業者が、室内に散乱したごみの中から弟の遺体を発見し、同署に届け出ていた。

 数年前まで、この住宅には岩崎容疑者とその母、そして今回遺体で見つかった弟の3人で暮らしていたが、母の姿が見えなくなって以降、住宅や敷地内にごみが増えていったようだ。当時、岩崎容疑者は母について「施設、病院に入った」と近隣住民に話していたそうだ。住宅が競売にかけられたのは経済的な事情によるというが、遺体を放置したことについても同様の事情が背景にあったのか調べているという。

 家族の遺体を長期間放置した末、死体遺棄で逮捕されるという事案の背景には、経済的な問題が存在することがままある。生きていることにして死亡者の年金を受け取り続けるといった例もある。かつてさいたま地裁で傍聴したこの事件は、遺体を放置したわけではなかったが、私利私欲からの犯行とみられている。

 埼玉県川越市の浄化槽点検管理業のTさん(59=当時)が突然姿を消したのは2011年6月。家族が捜索願を出したが、行方はわからないまま時は過ぎた。そして1年後、Tさんは自宅から遠い長野県の住宅敷地内で遺体となって発見された。ここはTさんの元娘婿・A(逮捕当時46)の実家だった。「元妻の父親をバラバラにして埋めた。犯行を隠そうと思った」というAの供述を受け、警察が敷地内の花壇を掘り起こすと、シートにくるまった状態のTさんの胴体が見つかった。他の部位は側溝や山林などに遺棄したという。

 裁判員裁判で明らかになったのは、AがTさんの会社を思い通りに動かしたかったという動機だった。Aの暴力などが原因で妻とは離婚していたが、その後もAはTさんの会社で働いていた。

 離婚後も世話になっていたはずだが、Aは法廷で、Tさんへの不満を爆発させる。

 「Tさんの会社が不法投棄をしていた。内部告発したが対応がないに等しい。あとTさんが昔、暴力を振るってたと聞いて……正そうと……私自身の、正義じゃないんですが、それに対して暴力で対抗してきた。殺意を抱きました」

 Aは、嘘をついて呼び出したTさんを撲殺し、遺体をバラバラにしたのだという。そのうえ、見つかっていない遺体の一部については「食べた」と衝撃的な証言をした。

 「腕と足はフリーザーに2〜3日入れて、その後は足の肉……赤みの部分を……キムチの素、寄せ鍋の素を入れて、食べることにしました。征服感です! とにかく、社会悪の人間、食ってやろうと一心不乱でした」

 まるで自分がTさんを殺害することで悪を成敗したかのような証言が続いた。Tさんが不法投棄していたことは確認できていない。裁判所は「AにはTさんの会社を思い通りに動かしたいという意図があった」と私利私欲を認定し、懲役22年を言い渡した。


たかはし・ゆき 1974年生まれ。福岡県出身。2005年、女性4人で裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。以後、刑事事件を中心にウェブや雑誌に執筆。近著に『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』。

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