屋外保管が続く固体廃棄物―【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中㉑

 東京電力・福島第一原子力発電所(以後、「フクイチ」と略)では、収束作業に伴う放射性廃棄物が発生し続けています。今回は久し振りに固体廃棄物を取り上げます(前回取り上げたのは2020年6月号/注1)。

 フクイチの固体廃棄物の保管量推移と、発生から保管までのフローは、別掲のまとめの通りです。

 現在、固体廃棄物の大半は、屋外にて「一時保管」の扱いですが、本来、放射性廃棄物は屋外保管してはいけないものです。環境中へ飛散・漏洩するリスクが大きくなります。

 東京電力は、固体廃棄物の屋外保管の解消(=屋内保管へ切り替え)時期について、①使用済み保護衣は2023年度を目途に、②伐採木は25年度を目途に、③除去土壌と瓦礫類は28年度内に、という大きな目標を立て、固体廃棄物貯蔵庫第10棟・増設雑固体廃棄物焼却設備・減容処理設備(金属やコンクリートを破砕・裁断)等の設計・建設を進めています(注2)。

 方向性としては正しいのですが、これは言い換えるなら、減容減量や保管に必要な設備が竣工するまでは、屋外保管の解消の目途が立たないことを意味します。

 私が懸念するのは、こうした設備の竣工を待たずに、屋外保管によるリスクが顕在化し、収束作業が、より困難なものとなる可能性です。現に、発災から10年以上が経過し、固体廃棄物の屋外保管が継続することによる漏洩リスクが顕在化し、発生量に管理が追い付いていない深刻な実態が明らかになりつつあります。

 切っ掛けとなったのは、今年3月2日、フクイチ構内の排水路に設置されていた放射線モニターが高警報を発したことです。その後の調査で、排水路の近くの一時保管エリアに置かれていた廃棄物保管用コンテナの底部が腐食し、コンテナの内容物の一部がコンテナの底部に溜まっていた水や雨水に混ざって排水路に流出したものと判断されました(注3)。

 この漏洩を受けて、東電が屋外に保管されている廃棄物収納容器・約5300基を点検したところ(4月半ば~7月末)、腐食や凹みが約640基に確認され、内容物不明のコンテナは約4000基にも上りました(注4)。

 東電は、内容物の確認(8月3日から開始/注5)と、内容物を健全なコンテナへ移し替える方針を公表しましたが、これとは別に、7月12日に開催された原子力規制委員会の検討会で、福島第一原子力規制事務所の小林隆輔所長から、重要な指摘がなされました(注6/小林所長の指摘は議事録の54~57頁)。それが「仮設集積」です(フロー図の点線)。小林所長の指摘は「仮設集積の量が多くなり、管理が行き届かない状態になるのを危惧する」という主旨でした。

 この指摘を受けた東電は、その次の検討会で、仮設集積が増加している事情と、2022年度中に仮設集積の量を最小化させる方針を説明しました(注7)。仮設集積の量が増加している理由は、簡潔にまとめると、固体廃棄物の発生量・保管量に、管理のリソースが追い付いていないということです。

 3月以降の経緯を追うと、リスクが顕在化したり、外部から指摘されるまで、敷地内の管理の実態や課題を調べない・公表しないという東電の姿勢が、改めて浮き彫りになったと言えます。

 コンテナの点検と実態把握は、漏洩が判明した後に実施され、仮設集積の保管量と課題は、公開会合で小林所長が指摘したことで明らかにされました。特に、仮設集積の保管量や管理の実態を公表資料から省いていたことは重大です。これでは、外部の人間がフクイチのリスクを正しく把握できません。

 「サイト内の現状を社会と共有しない」東電の姿勢も、社会にとってリスクと言えます。又、このような後手の対応が繰り返されれば、現場の仕事が増え、働く人達のリスクにも繋がりかねません。

 フクイチの敷地内では、これからも工事や解体に伴う廃棄物の量が増え続けるでしょう。総量も見えず、廃棄物の種類も多種多様で、処理・処分の前例も無く、管理は容易でないと思います。だからこそ、東電には「現状をありのままに公開し」「廃棄物の管理や関連設備の設置にリソースを惜しまず」「廃棄物の減容減量と屋内保管への切り替えを一刻も早く進めるよう」、パブリックプレッシャーをかけ続けなければいけません。

 注1

 注2

 固体廃棄物の保管管理計画・2021年7月改訂版

 注3

 注4

 注5

 注6

 第92回特定原子力施設監視・評価検討会

 注7

 9月13日付資料


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