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「処理水」放出設備認可案へのパブコメ提出は6/17まで―【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中㉗

『政経東北』2022年6月号より

 今回の記事は、連載24回(注1)の続きに相当するものです。




 東京電力・福島第一原子力発電所(以後、「フクイチ」と略)で増え続けている、「ALPS処理水」(放射性核種の濃度低減処理を一度でも行った上で貯留している放射性液体廃棄物)の処分に関して、5月18日・水曜日に大きな動きが有りました。


 この日に開催された「第10回・原子力規制委員会」の最初の議題で、東電が提出していた実施計画(注2)を認可する案(注3)が規制庁から説明され、5人の委員は全員一致でこれを了承しました。合わせて、認可案に関する30日間(5月19日~6月17日24時)の科学的・技術的な意見募集の実施も決定されました。所謂「パブリックコメント」(以後、「パブコメ」と略)です(注4)。

 パブコメの募集要領・関連資料・提出フォームは「e-gov(イー・ガブ)」にアップされています(注5)。

 郵送・FAXでも提出可能です。

 原子力規制委員会が東電の実施計画を認可する際、法的にはパブコメの実施義務はありません。にも関わらず、規制委員会は今回、任意のパブコメ実施を決定しました。この一点においてのみ、私は、規制委員会の決定を高く評価します。

 今回のパブコメは、「処理水」放出に関して、公的チャネルで意見を表明できる最後の機会となる可能性が高いです。これを活かせるか否かは、主権者・国民の対応次第でしょう。

 寄せられた意見の数が多いほど、結果とりまとめに時間がかかり、その分、計画の認可がずれ込みます。認可がずれ込めば、フクイチ構内での着工もずれ込みます。着工がずれ込めば、政府・東電が想定している海洋放出の開始時期を遅らせられるかも知れないのです。

 更に「(設備の)認可反対」の意見が数百万件に上ったら、どうなるでしょう? 2012年には首相官邸前に最大20万人が集まったことで「原発ゼロ」の民意が可視化され、政治と政策決定に影響を及ぼす契機となりました。18年8月のALPS小委員会の公聴会では、僅か44人の意見表明者がフルオープンの場で経産省を論破し、処理水の処分方法の検討は仕切り直しとなりました。「民意の可視化」こそ、東電・経産省を止める確実な方法と言えます。

 パブコメの結果次第では「民意の可視化」の公的チャネル版になり得ます。

 パブコメは、実施期間が選挙より長く、個人情報の提示も不要で、年齢要件もありません。外出の必要すら無く、自宅から、スマホから、何度でも提出できます。選挙での投票より遥かにハードルが低いです。SNSに書き込む気力・体力・時間が有るなら、先ずパブコメ提出に向けられるべきでしょう。

 私は、今回のパブコメには「海洋放出の方針に反対。認可すべきではない」という主旨で提出予定です。過去に提出したものと基本的には変わりません(ALPS小委の公聴会に合わせた意見募集、閣僚会議の決定前の経産省の意見募集/注6・注7)。

 「科学的・技術的な意見募集」ですから、設計や運用以外の意見は「その他」扱いされると思われますが、私は構わずに「方針」を問います。

 原子力規制委員会が認可しようとしている東電の設備は、核災害で生じている放射性廃棄物を、意図的且つ大量に環境中に放出して処分することを目的としたものです。核施設の管理に失敗した結果を、自然環境に「押し付ける」という責任逃れです。核のモラルハザード(倫理欠如)を容認してはいけません。

 本誌読者の皆様にも、今回のパブコメ提出を広く呼び掛けます。

注1 22年3月号「急ピッチで進む希釈放出の準備」

注2 フクイチ構内の「処理水」を海洋へ希釈放出する為の設備・モニタリング等の設置・運用等に関する具体的な設計・計画

注3 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る審査書案の取りまとめ 

https://www.nsr.go.jp/data/000390170.pdf

注4 パブリックコメント(意見公募手続き)は行政手続法・第6章で定められているもの

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405AC0000000088

注5

注6 筆者ブログ記事/ALPS処理水に関する「説明・公聴会」に、私の意見を送付(18年8月31日)

注7 筆者ブログ記事/「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する意見募集」に、意見を提出(20年7月30日)


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