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【政経東北】もう一度災害に備えよう|巻頭言2025.2
1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災から30年が経った。当時、筆者は中学生。大学生を経て全国各地に知人・友人がいる現在と違い、阪神地域は身近ではなかったが、大変な事態になっていることは感じていた。ただやはり、福島県に住む筆者には「遠いこと」だった。
それから16年後。東日本大震災に遭遇する。阪神・淡路大震災と違い、地震そのものより、津波の被害が大きく、福島県に限っては原発事故の影響がさらに大きかった。一方で、避難所設営や復旧などに当たっては、阪神・淡路大震災の教訓・知見などが生かされた部分もあった。
昨年、神戸市中央区にある「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」を見学する機会があった。同記念館は映像がメーンで、地震発生直後の再現映像や、実際の映像、さらにはそれから数年後の住民の声などを見聞きすることができた。そのうえでの感想は、「恐怖」ということに尽きる。そのくらいインパクトが強かった。
一通り館内を見学していると、ボランティアガイドの人に声をかけられた。「福島県から来た。東日本大震災を経験した」と言うと、共感する部分もあり、いろいろと話してくれた。その中で印象に残っているのは、「私は祖父母などから『神戸は地震が少ない街だから安心』と教えられていた」ということ。県内の津波被災地域の人からも似たような話を聞いていた。「子どものころ、亡くなった祖父母から『この辺は津波の心配はそんなにしなくていい』と教えられた」と。
似たような事例はほかにもある。熊本県は2016年4月に発生した熊本地震により大きな被害を受けたが、それまでは企業誘致などの際に大規模な地震が少ないことをアピールしていた。昨年1月に発生した能登半島地震では、県の防災計画の想定の甘さが指摘された。自然災害において「いままでなかったから、これからもない」ということは通用しない。それをあらためて認識する必要がある。
政府の地震調査委員会は1月15日、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率を、これまでの「70〜80%」から「80%程度」に引き上げた。発生確率は、冬の方が高いとされており、冬の深夜に地震が発生した場合、被害が拡大するとの知見も示されている。 思えば、阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震はいずれも寒い時期だった。被災者は寒い時期の災害の大変さを身をもって知ったことだろう。そういったことを踏まえて、もう一度災害に備える必要があることを啓発したい。(末永)
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