【郡山市】品川萬里市長インタビュー
――新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、政府の対応に厳しい意見が相次いでいます。地方自治体のトップとして、政府の対応をどう評価しますか。
「政府には、引き続き迅速かつ的確な情報提供を行い、安心・安全の確保に努めていただくことを強く望みます。そのうえで政府への具体的な要望としては、①医療提供体制および検査体制の確保と充実、②医薬品および医療機器、衛生資材の確保を挙げたいと思います。
①は、直接対応に当たる地方公共団体や医療機関等への人的・物的支援や財政支援の拡充をはじめ、入院患者を受け入れる病床の確保やPCR検査が着実に対応できるよう、体制整備により一層取り組んでいただきたい。また、感染患者の受け入れに伴う病床調整や外来閉鎖などによる収益減少等に対応するため、医療機関への診療報酬のさらなる増額を希望します。
②は、新型コロナウイルス感染症の影響から医療崩壊が起こらないよう、必要な医薬品や医療機器の充足はもちろん、現場が物資不⾜に陥らないよう、医療用マスクや防護服などの生産・供給により一層取り組んでいただきたい。さらにワクチンや治療薬について、早期の審査・承認ならびに国内への提供に努めていただきたいと思います」
――郡山市内では5月6日現在、新型コロナウイルスの感染者が6名確認されています。
「県内59市町村の中で、46市町村では感染者が出ていません。それを踏まえると、本市で感染者が出たことは誠に残念ですが、人口比などから相対的に見れば(6名にとどまっているのは)評価に値すると思います。市民の皆様一人ひとりが主役となり『自分も感染しないようにするが、相手にも感染させないんだ』というお互いの生活を大事にしたことによる成果だと思っています。市民の皆様には心から敬意を表し、感謝申し上げます。
感染された6名の方は全員、5月10日までに無事退院されました。また、感染に伴う濃厚接触者は43名いましたが、14日間の健康観察を行い、全員が発症することなく健康観察を終了しました。患者と濃厚接触者の方々は、感染拡大防止のためとはいえ不自由な生活を余儀なくされたことをお見舞い申し上げます。
市民の皆様には咳エチケットや手洗い・うがいなど感染症予防の基本を徹底し、集団感染の発生を防ぐための『3密』(密閉、密集、密接)を避けることをあらためてお願い致します。もし『自分は感染しているかもしれない』と不安を感じている方は、帰国者・接触者相談センターに相談してください。
本市では5月7日、郡山医師会や市内医療機関のご協力のもと『郡山市新型コロナウイルス感染症に係る発熱外来診療所』を設置しました。専門の診療所設置でよりきめ細やかな対応が可能となったことから、市民の皆様には、市や医療機関の指示のもと適切な受診をお願いしたいと思います」
――飲食店等への休業補償や住民への支援策も焦点になる中、地方自治体独自の対策を打ち出すところも増えていますが、郡山市が取り組んでいる対策について。
「本市では5月1日、補正予算で必要な経費を計上しました。
具体的には、先述した発熱外来診療所の設置や感染症診療にかかる経費等の一部を助成します。また、小中学校、保育施設、福祉施設等の衛生環境向上を図るため、マスクや消毒液など衛生資材の購入・配布を実施しています。さらに子育て世帯の生活支援として、臨時特別給付金支給に加え、本市独自の緊急支援給付金をひとり親家庭に支給するとともに、就学援助事業対象家庭も加え『郡山産米あさか舞引換券』を配布します。
中小企業および小規模事業者への支援については、本市独自の『中小企業等応援プロジェクト』を創設し『資金調達等支援パッケージ』として、金融機関と連携した資金繰り支援や、宿泊・飲食業等を主な対象としたクラウドファンディングの活用支援、事業継続に向けた家賃補助などを実施します。また、『経営体質強化支援パッケージ』として収束後の力強い地域経済回復と経営基盤構築を見据え、企業のテレワーク導入促進に向けた補助制度の創設やテイクアウト・デリバリー参入に向けた経営改革支援を実施するほか、農商工連携推進に向けたマッチング緊急連絡会議等を開催します」
――昨年10月の台風19号では郡山市内も深刻な被害を受けましたが、とりわけ郡山中央工業団地では7カ月経った現在も完全な事業再開に至っていない事業所があり、加えて復旧のためのグループ補助金も手続きの煩雑さから未だに支出されていないという不満が聞かれています。
「財政面や経営面での困りごとに関しては、グループ補助金をはじめとする国・県の各種補助申請の取次や案内を行っているほか、災害対策資金融資による資金繰り支援や事業所税・上下水道料金の減免に加え、サプライチェーンの縮小・寸断等による間接被害にも対応した売上高等減少対策資金融資の新設等による財政支援も実施しています。
グループ補助金については、国および県による補助制度であることから、台風直後に要件緩和等を要望してきたところですが、申請の手続きについて事業者から様々な声が上がっていることは十分承知しています。ご不便等があるとは思いますが、国民の皆様から納めていただいている税金を原資に支給する以上、審査等に正確性が強く求められるのは致し方ないのが実情です。事業者の皆様には、そういった事情をご理解いただければ幸いです」
――最後に、市民に向けて一言。
「新型コロナウイルスに関して、公衆衛生学者の渋谷健司氏は『感染第2波は不可避』とおっしゃっており、長期戦は必至です。
この間、市民の皆様には『短距離走』のように目まぐるしい対策を矢継ぎ早に要請してきましたが、今後は『マラソン』のように長い道のりの中で多角的に実態を把握し、データを記録し、定期的にレビューしていくことが感染拡大を防ぐうえで欠かせなくなります。
もちろん、喫緊に解決しなければならない短期的な課題もまだまだあります。つまりは、短期的な応急措置と長期的な投資的措置を見極め、両面の体制を整え、市民の皆様と情報共有することが重要だと考えています。尽きるところは、市民一人ひとりの努力によって感染拡大防止の成果が出ていることに対し、市政としては一層後押しできるような施策を講じ、使命を果たしていけるよう頑張ってまいります」
しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在2期目。