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「膝蓋骨下極骨折の症例報告」#書く習慣91
日々の診療お疲れ様です。TROT(トロット)です。
本日は春分の日のため病院はお休みでした。
そのため、朝からWBCの準決勝を家族全員で見ていました。
最後の村上選手に繋がるまでの全体の流れが本当に感動もので、最後のサヨナラの瞬間には家族全員でハイタッチしてしまいました。
自分の仕事においても、患者さんやクライアントを感動させるような仕事ぶりを求めていきたいものです。
それでは本日は昨日に引き続き、膝蓋骨下極骨折の症例報告についてまとめていきたいと思います。
「クビにされたくないの…」
清掃の仕事を行なっている70代女性が来院されました。
通勤中にホームで転落した際に左膝をつき同部に痛みが出現したとのことでした。
いざ、XPを撮影してみると、こんな状態でした。
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今回は直達外力による受傷のためSleeve骨折は除外して、膝蓋骨下極骨折という診断がつきました。
少し話をしてみると、
「20年続けている仕事なのに、70歳にもなってこんな怪我をして、
長期に休むことになってしまったらクビにされちゃう…」
「仕事が大好きで早く復帰がしたいの…!!」
ということで、非常に労働意欲の高い患者さんでした。
ですが、
・直達外力性の横骨折のため伸展位固定になること、や
・しゃがんでの清掃作業は1ヶ月程度はできないことと
についてお伝えするとすぐ理解をして頂けました。
また、骨折のタイプとしては骨癒合があまり良くないため手術を勧めましたが、「絶対に受けたくない」との一点張りで、患者さん了承のもと保存療法にて対応することとなりました。
整復と固定
改めてレントゲンを見てみると、
Carpenter分類では横骨折、及び転位骨折というタイプに属する骨折と判断いたしました。
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ただし、転位骨折に関してはわずかな転位になるとも判断できるので該当するかは判然としません。
ですが、骨片間はなるべくしまっていた方が良いだろうということで整復を行いました。
整復の手順としては、
① 下極の指を入れるため膝関節を軽度屈曲
② 膝蓋骨を下方に誘導し、大腿四頭筋の筋緊張を緩める
③ 遠位骨片側を近位骨片に密着させるように圧縮
④ 圧縮を緩めずに、膝関節を伸展し整復終了
そしてレントゲン画像がこちらです。
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初診時よりも膝蓋骨が一塊になっているのでこのまま固定を行います。
固定は膝関節伸展位にて行いました。
固定の方法としては、
① 膝蓋骨近位骨片をテープ+綿花にて下方に誘導
② 膝蓋骨遠位骨片をテープ+綿花にて上方に誘導
③ 下肢後面から大腿〜下腿にかけてオルソグラスにて固定
評価
今回の骨折は
直達外力による受傷で、骨片もそれほど離れていないので膝蓋支帯の損傷は少ないだろうと予測できます。
ただし、直接衝撃を受けた部分には膝蓋下脂肪体や膝蓋前滑液包が存在しますので今後、伸展機構の滑走不全によるエクステンションラグが発生する可能性が高いと思われます。
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ですので、
①固定期間中は、
上方支持組織(膝蓋上嚢、pre femoral fat pad、中間広筋)のストレッチングを行なうことで癒着を最小限にし、
②エコーで仮骨形成が確認できたら、
膝蓋骨下方に誘導した状態で軽いセッティング運動をする必要があるかもしれません。
まずは膝蓋骨を圧迫している綿花の圧をあげすぎることで膝蓋下脂肪体の硬さが強く出ないように、固定には注意を払って対応していきたいと思います。
また、経過を追ってご報告ができればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。